軍用カメラ、という存在。 民生向けに販売されたモデルとは異なる、特殊な刻印や塗装・・・更には機構の変更に至るまで、スペシャルなモディファイが施されたカメラたち。 今回ご紹介するのは、『Leica M3 Model “Bundeseigentum”』 ダイヤルやレバー等、操作部こそクロームメッキのままであるが、深いオリーブグリーンのペイントが施された独特なその姿は、本機が特殊なカメラである事を明示している。
旧西ドイツ軍向けに製造された、M3のオリーブペイントモデル。 記録によると、本機は1957年12月にライカから出荷された一台である。
トップカバー背面にはドイツ連邦政府の官有品である事をを示す『Bundeseigentum』の文字と、軍用モデルのM3に割り振られたNATOコード『12-121-5418』が刻印されている。
ボディシェルには通常モデルのM3とは異なる、シボの目が粗いオリーブ染めのグッタペルカが貼られている。手袋等を装着した状態でも滑りにくいように考慮したものと想像出来るが、ゴツゴツとしたその手触りは、持つ者に一定の緊張感を与える。銃器類がそうであるように、軍事用途で使用されていた『道具』が持つ特異な雰囲気にも起因しているのだろうか。
ブラックペイントモデルのM3と同様に、ペイントが剥がれた箇所からは、鈍い輝きを放つ真鍮地が顔を覗かせる。 ブラックペイントとはまた違ったそのコントラストは、独特の魅力を放っている。 時代を経たペイントの美しさを、じっくりとご覧頂きたい。(※各画像をクリックすると拡大が可能です)
『軍隊』という特殊な環境で、どんな人々と共に時間を過ごしたのか。そしてこのファインダーはどんな光景を見つめてきたのか・・・そんな事を考えてみると、なんともロマンにあふれた一台ではないだろうか。