闇を制するレンズ、ノクティルクス。その驚愕の大口径レンズが生まれたのは1966年、フォトキナでその全貌が発表された時には大きなニュースとして取り上げられた。今に続く歴史を持つ超大口径レンズファミリーであるが、その初代が今回レポートした1本。非球面レンズを初めて採用したライカレンズであり、その生産には多くの苦難があったと言われる。実際にコストも高く、生産本数も少なかった事から今ではプレミアレンズとして取引されており、見かける事すら少なくなってしまったが、その伝説から一度は手にしてみたいレンズである。その希少な描写をぜひご覧頂きたい。
描写のフレアレベルは極めて高い。柔らかいというか、ここまで来ると想像を絶する光のにじみの世界だ。ピントも極めて薄く、フレアの中に極めて薄いピント面を持つ。このレンズ以外では見る事も無い描写だろう。
『闇を制する』と言われるほどだが、こういった光量の少ないシチュエーションはまさに独壇場だ。
マッチョな外観とは裏腹に軽金属を多用した外装は想像以上に軽く、後の世代よりコンパクトな事から取り回しも非常に良い。
大きなボケと滲みの中に、繊細な解像線があるのがお分かり頂けるだろうか?
遠景の描写もこの通りである。ぐるぐると回り込む様な光と滲む様な光、様々な光線が独自の世界を作り上げる。
光がもはや爆発している様にも見える。確かにこのレンズにしかない個性的な描写だ。
このNoctilux 50mm/f1.2は生産時期により非球面レンズの研磨方法が異なり、また個体差もかなり大きいレンズとして有名である。筆者がこれまでに見たレンズでも比較的しっかりと映るレンズからピントがどこに有るか分からないレンズまで様々に存在し、まさに工芸品的な生産だった事が伺える。ライカ大口径レンズの1つのメルクマールとして存在している1本、ぜひ手にしてみたい魅力にあふれたレンズである。
Photo by MAP CAMERA Staff