レンジファインダー機ではブライトフレームでのピント確認になるため、望遠レンズであればあるほどフレーミング枠は小さくなる。最長焦点135mmのフレームは最も小さいものだが、その風景を切り取る様な感覚はこの焦点距離ならではのもの。より大口径の『Elmarit 135mm/f2.8』という選択肢もあるが、軽量コンパクトさと切り立つ様なピントのシャープさを選ぶならこの『APO-Telyt 135mm/f3.4』をオススメする。
アポクロマート補正のお陰か、開放から驚く程シャープなその結像には恐れ入るものがある。ただしカリカリというよりはどこか柔らかさ、滑らかさをともなった描写なのが面白い。前後のボケも素直で、こうして前景を入れて遠近感を圧縮しても安心して撮影する事が可能だ。
最短距離付近では大きなボケを楽しめる。ピントのシャープさとボケの素直さが好対照だ。
ただし、ブレには大いに注意したい所。このカットは僅かにブレてしまっているが…このレンズの解像力を引き出したいならホールディングは重要だ。しっかりと構えて撮影すれば、このレンズはその描写で答えてくれる。使いこなすのは難しいが、使いこなせばこのレンズでしか描けない世界がある1本だ。
ガラス等の繊細にきらめく様な被写体はこのレンズの得意とする所。やはりどこか艶っぽさを感じさせる描写である。滑らかなガラスの質感や、艶やかなガラスの反射も実に美しい。
逆光にも驚くほど強い。シャープネスもしっかりとあるが、それでいて暗部にもディティールが欠損せずに残っているのはさすがだ。
スリムでシンプルな意匠をまとったとり回しやすいレンズである。135mmレンズ1本で撮影に赴くシチュエーションは多くないだろうから、他の機材と鑑賞しにくいこの軽量コンパクトさは大いに魅力的。長焦点域でのLEICAの楽しみを、しっかり味わえる1本だ。
Photo by MAP CAMERA Staff