1929年の登場以来、長い歴史を持つ『Elmar50mm』の最新モデルとして登場したのが本レンズ。M6等にもマッチする様ブラッククローム仕上げが初めてラインナップされ、沈胴式のクラシックでコンパクトなギミックはそのままによりモダンに生まれ変わった新生エルマー50mmレンズ。絞り位置の変更等、様々にリファインが加わったその描写は、『ズミクロン』『ズミルックス』等のレンズとはまた違った魅力を持っている。
その描写は”端正”、そして”静謐”なもの。コントラストや大きなボケが持つ華美さは少ないが、対象を細いラインで描き出していくその解像感と、彩度の抑えられた瑞々しい色再現は改めて見ても個性的な描写。じっくりと被写体を見つめて撮影するのに良い、滋味のあるレンズと言えるだろう。
素性の良いレンズは少しのブレ、ボケでもその描写の美しさを減じない。光の捉え方の美しさがしっかりと現れるものだ。
何という事の無い被写体だが、このレンズの柔らかさとトーンの美しさが観て頂けるかと思う。かつてのエルマーにもあった静謐さが、現代的なヌケの良さと相まっているのがこのレンズの個性だろう。
もちろん現代的なレンズでもあるので、細かい建築物のルーバーも非常に美しく描写している。旧いエルマーでは遠景描写に心もとない事もあったが、このレンズは実に優秀だ。
沈胴式というクラシックなギミックも操作していて楽しいもの。実用面でもレンズ部分がコンパクトに収納できるメリットは鞄への収納時などに大きいものだ。重量も適度で、着けっぱなしにしても便利な1本だろう。暗い=廉価ではない、このレンズならではの価値を存分に味わって頂きたい。
※M9等の一部Mボディでは沈胴式レンズの沈胴を制限しています。 ボディを損傷する恐れがありますので、必ず伸張させた状態で使用して下さい。
Photo by MAP CAMERA Staff
Leicalens-Report.