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LEICA趣味人 – 神楽坂編 –

2013年05月28日

LEICA趣味人 - 神楽坂編 -

 ライカM9Pにますます熱が入って来ている。出かける時はいつでも一緒。コンパクトカメラより大きくて重いが、そんなことはどうでも良い。とにかく持ち歩いて、写真を撮ることがこんなに楽しいカメラは今までない。銀塩のライカは今でももちろん好きなのだが、やはりフィルムだと身構えてシャッターが切れない時が多い。その点デジタルのM9Pはライカで撮る快感と感触、そしてお作法は完璧に残しつつ、気軽にスナップが出来る。ただし、自分なりの流儀として、「オートレビュー」はオフにすること。シャッターを切った後にすぐにモニターで確認はせずに、被写体に集中して対峙すること。やはりライカは時間と空間を切り撮る瞬間に意識を集中して、決定的瞬間を狙うべきである。

「M」が登場した。もちろん気になるのは当然だが、私はやはりM9Pの方が好きだ。なぜなら例えノーファインダーで撮るにしてもライカでの撮影でモニターに映し出された映像を見ながら写したくない。ライカにライブビューは不要。ライブビューを使うなら、数多ある日本製の優秀なデジカメを使えばいいというのが私の心境である。今回もM9Pにお気に入りのズミクロン5センチを装着して、神楽坂を散策した。ライカにぴったり。町の匂いが心地よい!

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

今回の神楽坂のお供は「Summicron 5cm f2」である。ライカは35ミリフィルムの始祖。24ミリ×36ミリのフォーマットにおける標準レンズが5cm。そしてその標準レンズのスタンダードといわれているのが、Summicron 5cmなのである。つまり35ミリ判カメラの基準レンズといってもいい。

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

35ミリ判の標準レンズとは、対角線46度、水平40度の画角。「注視していない時に肉眼で視認できる視野に一番近い」画角と言われているが、パースもごく自然で、広角レンズのようにいかにもレンズが写しているという画にはならない。

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

神楽坂には路地が多い。もちろん飲み屋が連なる路地もある。昼間訪れると夜のねっとりとした怪しげな雰囲気とは違い、サバサバとした空間が広がり意外な店の発見もある。

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

神楽坂は新旧の人、建物などが混在して、良い意味で調和している町である。また地元の人間と町を訪れた人が交差点で行き交う。交差点での出会いをズミクロンの自然な眼差しで観察する面白さは一度はまるとやめられない。

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

神楽坂は和と洋が混在する町。日仏会館があることから、フランス人も多く、不思議な町である。ズミクロンの描写力はやはり標準レンズのスタンダードというに相応しい素直さを感じる。

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

神楽坂を象徴する石畳の路地。かつては黒塀がたくさんあり、芸者の姿や三味線の音色が聞こえてきたのだろう。ここでもクセや収差のない自然の描写で空間を写し込んでいる。

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

神楽坂といえば、毘沙門天。寅の年、寅の月、寅の日、寅の刻にこの世にお出ましになったことから、寅毘沙とも呼ばれる。開放でのボケ味と立体感。質感の描写も申し分ない。

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

時代劇に登場するような昔ながらの風情のある縄のれんの居酒屋。江戸にタイムスリップしたような不思議な感覚になる。チョンマゲを結った若い衆が出てきそう。今日の散策の反省会はここに決まり。

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

町を散歩していて、いつも気になるのは銭湯。昔から散歩を続けていると銭湯の作りの変化に気づく。今ではほとんどがカウンター式だが、ここ「熱海湯」は今でも番台式。やはり銭湯はこれでなくちゃ!プロレスのポスターも泣けてくる!

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

神楽坂は飲み屋がひしめき合っている。新旧の飲み屋がしのぎを削り。店毎にさまざまな色を出している。看板へのこだわりもさまざま。光が傾いた頃に町を散策すると看板がアートになる。

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

ライカのレンズの楽しみは同じ名称のレンズでも年代によって、レンズ構成もガラスも異なる。この沈胴式のLマウントの「Summicron 5cm f2」は実は、最初期のタイプで、放射線ガラスといわれるトリウムガラスを使ったレンズである。空気までも写すといわれた伝説のレンズだ。

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

神楽坂はびっしりと建物が密集していると思いきや、以外と緑が多い。路地のそこかしこに植え込みや坪庭のような緑があり、ハッとする。このズミクロンはズミクロンの中でも希少な1本。色と空間描写が独特な珍種である。

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

トリウムガラスは変色する。経年変化で少し黄色になるのだ。そのため色にも少し影響があるのだが、それ以上に解像度とその場の空気を写す描写力は高いようだ。奥行きのあるスナップこそ、ズミクロンの真骨頂が伺える。

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

独特の色あいと立体感は秀逸である。神楽坂にはカフェが多い。フランス風のオープンカフェや和の雰囲気の喫茶店。山小屋のような雰囲気など、気分や雰囲気で選り取り見取り。飲み屋も良いが、カフェも似合う町である。

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

神楽坂には料亭だけではなく、包丁処も路地を歩くとどこでも見かける。板前さんが腕によりをかけて、和食の神髄を味合わせてくれる。酒を飲むというよりも、料理を楽しむという大人の場所である。

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

神楽坂の坂の上には観世九皐会 矢来能楽堂もある。散歩ついでに和の神髄である能楽を楽しむのも一興だ。神楽坂の町の中でも特に独特の雰囲気を醸し出している空間である。ズミクロンのオールドレンズで撮るに相応しい場所である。

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

路地で見つけたリアカー。赤のほうきも良い雰囲気。大八車の流れをくむ生活に必須の道具。昔はこれでほとんどの荷物を運んでいた。オールドズミクロンを装着して気負わずに自然体で歩いていると、古くて味のある懐かしいものになぜか引っ張られる。

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

賑やかな花街だったころは、町を歩くとどこからともなく、三味線と長唄などが聞こえてきたのだろう。温故知新。古きものの良さをもう一度見直したくなった。ズミクロンは改良されながら、デジタルになった今でも標準レンズとして君臨しているが、最新のものが良いかというと必ずしもそうではない。これは好みや味と言われる曖昧な部分だが、私はこのトリウムレンズはクセはあるが、M9Pとの相性は抜群だと思う。

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

ズミクロンというのも、いわば暖簾のようなもの。この暖簾を守るためには、涙ぐましい努力と向上心、そしてセンスが必要だ。このオールドズミクロンはまさに老舗の暖簾の原点のような味わい。沈胴を引いてセットする儀式に始まり、金属のずっしとした鏡胴に触れて絞りやフォーカスする喜び。そしてもちろん数字にはあらわれない見事な描写力。古きものからいろいろなことを発見する。

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

LEICA M9-P + Summicron 5cm / f2

過去から現在、そして未来へと、坂を上るようにズミクロンはこれからも進化して行くのだろうが、このオールドズミクロンの価値は決して変わらない。大事にメンテナンスしながら使い続けるつもりだ。これからも散歩のお供としていつも新たな発見をさせてくれるに違いない。

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