カメラ好きは機械好きである。そして金属好きでもある。機械にして、金属の塊であるのは鉄道。これは間近で見るとたまらない。今回は鉄分補給と鉄道への郷愁を求めて大宮にある鉄道博物館へと向かった。鉄道博物館へは何度も足を運んでいるのだが、行くと決める度に、子供の時の遠足のように、前日からわくわく、そわそわして盛り上がる。いくつになっても男は子供なのだと実感する。
今回ライカM9Pに装着して、鉄道博物館のお伴をしたのは、MSオプティカル(宮崎光学)の『Sonnetar50mm/f1.1』。何と開放f値が1.1である。ライカの純正レンズにもf0.95のノクチルクスという銘レンズがあるのだが、まるでレンズの塊のように巨大であり、いかんせん値段が高くてなかなか手が出せない。ところがこの『Sonnetar50mm/f1.1』は、なんと190gと超軽量。大きさもズミクロン並で、f1.1をいつでも気軽に持ち歩ける。これぞ究極の標準レンズと言ってもいい。f1.1の開放での写りが気になるところ。さて『Sonnetar50mm/f1.1』は鉄道の金属感と情緒をどう切り取ってくれるのか?興奮を抑えながら鉄道博物館のゲートに向かった!
LEICA M9-P + Sonnetar50mm / f1.1
10時の開館30分前には、ゲート前の広場はすでに長蛇の列。広場には蒸気機関車の先頭の部分や大きな車輪が置かれている。早速『Sonnetar50mm/f1.1』で撮影開始。絞りを4での撮影だが、金属の質感と存在感。そして後ろのボケもなかなかのもの。
LEICA M9-P + Sonnetar50mm/f1.1
ゲート前広場には、車両の台車や実車を輪切りにした展示がある。おじいちゃんと孫が旧式の座席に座って鉄道の絵本を見ている横を、子供がはしゃいで駆け回る。『Sonnetar50mm/f1.1』は小型軽量で、ヘリコイドにはレバーがあり、慣れると咄嗟のピント合わせも快適だ。
LEICA M9-P + Sonnetar50mm/f1.1
いよいよ館内に入り、まずは2階に上がって、鉄道車両が並ぶ1階のメイン広場を俯瞰する。ターンテーブルに乗ったC57を中心に昭和の憧れの鉄道車両達が集結する。暗い館内なので、ISO感度を上げつつ、絞り2.8で撮影。シャープな写りと色の乗りは感動ものだ。
LEICA M9-P + Sonnetar50mm/f1.1
開放1.1のボケ味は美しい。最短距離での撮影では前後に大きくとろーんとボケる。この味わいこそ、このレンズの真骨頂である。さすがに被写界深度は浅く、モニターでチェックしながら、体を前後に動かして、ピントを追い込む。
LEICA M9-P + Sonnetar50mm/f1.1
昭和30年代生まれの私には、新幹線といえば、この「0型」に止めを刺す。この先端の曲線と速さに憧れて、将来の夢は?と問われて「新幹線の運転手」と答える子供が多かった。
LEICA M9-P + Sonnetar50mm/f1.1
『Sonnetar50mm/f1.1』は設計者の宮崎さんのこだわりのゾナータイプ。レンズの構成枚数は少なく4群5枚。6面マルチコート+2面単層コーティングのお陰で発色と光の表現が美しい。レトロな雰囲気も良く出ている。
LEICA M9-P + Sonnetar50mm/f1.1
鉄道博物館の中で出会うシーンにもそれぞれドラマがある。電車に乗り込もうとしている老夫婦と横を歩く若い親子。そして電車の中でも子供の視線が見える。それぞれどんな鉄道への思いがあるのか?考えるだけでもわくわくする。
LEICA M9-P + Sonnetar50mm/f1.1
開放1.1は光に対する撮影者の感度も高めてくれる。場所や角度によって、美しい光を見つけることができる。金属に写し出される光がまるで、一つ一つ粒のように感じる。
LEICA M9-P + Sonnetar50mm/f1.1
懐かしの昔のつり革。まだ届かないのに、背伸びしてつり革にぶら下がった記憶が蘇る。開放での撮影は過去への一瞬のタイムトリップをさせてくれる。