希望的なものも含め、ライカがモノクローム専用のカメラを企画しているという噂を聴いた時は、そんな素晴らしいカメラが出来るならぜひ使ってみたいと思ったものでしたが、それがこんなも早く実現するとは夢にも思いませんでした。 『ライカ Mモノクローム』、モノクロームに最適化され輝度情報のみを着実に捉える35mmフルサイズセンサーと、数多くの名作写真を生み出してきたライカM型とのマッチング。
モノクロームを愛する皆様、お待たせ致しました。ライカから「正真正銘の」モノクロームの贈り物です。
RAWデータを展開した時に、まず感じるのはその途方も無いデータ量です。高輝度部ももちろんですが、暗部のデータ量は驚くべきもので明度を持ち上げていくと隠れていたディテールが様々に浮かび上がってきます。『APO-Summicron』の実力はシャンデリアの金属部の重厚な輝きに見取って頂けると思います。
RAWデータを展開した情報を見ていると、どの部分を残すかで写真の印象が大きく変わる事が分かります。全てを残す事が出来る反面、どの部分のデータを飛ばしてしまうかが作者に委ねられていると言えるでしょう。まさにモノクロームネガの持つ情報量の多さに似て、どのコントラストで、どこを焼き込むか。大いなる可能性を保持してくれるカメラです。
立体感と、存在感のある画です。カーテンの肌理まで解像するその描写力にはただただ圧倒されます。色を捨てた事によるアドバンテージの大きさを感じずにはいられません。これで手のひらサイズ、高機動なM型ライカのパッケージングなのですから素晴らしい。
アポクロマート仕様のズミクロンも更に尖鋭度が増し、シャープネスが上がった様です。これだけピントの立ちが良いのはアポクロマート仕様の恩恵でしょう。開放でこの描写、そして立体感なのですから、「Mレンズの中でも卓越したレンズ」というライカ社の談も納得の性能です。
もちろんオールドレンズとの相性も気になるところ。ライカLマウントの『ヘクトール 50mm/f2.5』。80年近く前のレンズもまだまだ現役で活躍するのがライカのすごい所です。描写も『APO-Summicron』とはうってかわってソフト。収差の多いながらピントは精緻なオールドレンズならではの写りも、『ライカ Mモノクローム』はしっかり受け止めてくれました。
金属質な文字の、エッジの鋭い感覚。手触りを感じさせる質感描写と、そこにあるような立体感。圧倒されてしまいます。
暗い中にひらめく一条の光。周りのトーンを残しつつ、柔らかく暗部の中に被写体を沈めていくこういった描写が出来るのも、『ライカ Mモノクローム』の実力があってこそ。 このポテンシャルの高さは、撮り手の世界観にしっかりついてきてくれる事でしょう。
デザインは極力シンプルに。素っ気ないほどのその佇まいは、逆にその実力の高さを伺わせます。外装で新しくなったレザーはかなりグリップが良く、取り回しの良い仕上がりでした。
このサイズであの実力。まさに唯一無二のカメラと言って良いでしょう。
ライカモノクロームの結晶。あなたは何を描きますか?
>>同時発表のAPO-Summicronの試写レポートはこちら
Photo by MAP CAMERA Staff