木々の葉は白く、水面や青空は黒く。一般的なモノクロ写真では表現し得ない世界を描く。人間の目では捉えることの出来ない780nmより長い波長を持つ非可視光線を利用した写真は”赤外線写真”として、写真表現の1ジャンルとして愛されてきた。
デジタルプロセスで赤外線写真を得る為には、撮像センサーの前に配置されている赤外線カットフィルターの効果が弱い機種が望ましい。近年、注目を集めたのが『Leica M8』と『Leica M8.2』だ。 通常撮影時に影響が出てしまう程に赤外線感度が高く、それを逆手に取って赤外線写真の撮影を楽しむ愛用者も多かった。
今回、モノクローム専用設計の『Leica M Monochrom』を用い、”純粋な”モノクローム赤外線写真の撮影を試みた。
撮影には、赤外線および近赤外線領域のみを通過させる専用設計の『Kenko PRO1D R72フィルター』を使用した。
『Leica M Monochrom』は被写体の明暗のみを記録するモノクロ撮影専用機。しかし上述のLeica M8やM8.2に比べセンサーの前に配置された赤外線カットフィルターの効果は強く、”赤外線写真らしい”結果が得られない事を危惧していたが、それは完全な杞憂に終わった。
可視光によって引き起こされる様々な光の乱反射の影響を受け難く、遠景まで非常にクリアな風景写真を得る事が出来る。『Leica M Monochrom』が有する絶大な解像力とも相まって、独特な世界観を持った赤外線写真は、なかなかに迫力がある。
赤外線写真の祖である、偉大な物理学者”Robert Williams Wood”博士の名にちなんで “ウッド効果” と呼ばれる草木の白い輝き。 分光学の権威であったウッド博士が1910年に発表してから100年以上の間、様々な形で撮影されてきた赤外線写真は『Leica M Monochrom』との出会いで新たな可能性を手にした。
雲の合間から差し込む光が幻想的な光景を生み出す。背面の液晶画面で一枚一枚露出の具合を確認する度に、思わず感嘆の声が漏れそうになった。
このカメラだからこそ成し得る、情報量豊富なRAWデータによる純粋なモノクローム赤外線写真。”目に見えない光”によって描かれる風景がこれ程に美しいものだとは。
今回のレポートでは画質を優先し、ベース感度であるISO320に限定した撮影を行ったが、高感度特性に優れた機種ならではの高感度・赤外線撮影も可能性の一つとして提案することが出来る。可視光撮影とは異なるピント位置に戸惑いそうではあるが、開放F値の明るい大口径レンズを用いた手持ち撮影もまた一興であろう。
Photo by MAP CAMERA Staff