ライカカメラ カスタマーケア 修理センター レポート
2021年08月27日
Leica M(240)Leica M10Leica M10 MonochromLeica M10-PLeica M10-RREPORT
中古のライカ製品に安心と信頼を。 マップカメラではライカカメラ カスタマーケアにて点検・修理を行った商品に「点検証明書」を付けて販売をしています。
今回は実際にどのような点検や作業をしているのか。都内にあるライカ カスタマーケア 修理センターにお邪魔させていただき、その様子を取材させていただきました。なかなか見ることのできないライカの修理現場をぜひご覧いただけたらと思います。
今回私たちの案内をしてくださったのはセンター長である猪股氏。ドイツにあるライカカメラ社のドイツ本社にて修理を学び、現在は修理センター長と技術者を兼務していらっしゃいます。
― カスタマーケアを知らない方向けに、カスタマーケアはどのような業務を行っているか概略をいただけますでしょうか。
猪股 氏:
ライカカメラジャパンのカスタマーケアは、修理トレーニングを受けた専門技術者がライカカメラ社のドイツ本社製の専用測定器と純正部品を使用してライカカメラ製品のメンテナンスを提供できる国内唯一のライカ純正サービス拠点です。
イメージセンサー表面清掃など日常的なお手入れをはじめとしたライカカメラ製品のメンテナンスや修理のご依頼、使用方法などのご相談をしていただける窓口となります。
修理センター内には見たことのない様々な計測機がずらりと並びます。そしてその計器にもライカのロゴが。
この写真ではレーザーを照射してシャッタースピードの精度を計測しているところ。
計測機はM型フィルム機〜M9系、M(TYP240)系、M10系でそれぞれ違うものも多く、新しい機種が増えるとそれに合わせて計測機も増えていくと話す猪股氏。
各点検機器に関してはドイツ本社の技師からメンテナンスチェックを受けて設置・使用しているとのこと。
― お客様等から修理機材をお預かりした後、どのような流れで点検・修理を行っているのでしょうか?
猪股 氏:
ご指定の不具合箇所を技術者が専用測定器を用いて点検し、状態に応じて推奨作業をお客様へご案内させていただきます。
これはレンズカタログで目にするMTF値の計測機になります。猪股氏いわく「様々なレンズと比べても、やはりライカレンズの性能はすごいです」とのこと。そして計測機には見慣れないレンズが装着されています。
そのレンズをお借りして写真を撮らせてもらいました。レンズ名には「ズミクロン 50mm F2 インフィニット」の文字。
猪股 氏:
MTFを計測する上で“0”の基準を測るためのレンズになります。このレンズの基準があって、初めて他のレンズの性能を測れるのです。
― 何か特別な性能を持つズミクロンなのですか?
猪股 氏:
あくまでも“0”の基準を示すだけのレンズですので、特別な性能というわけではありません。撮影用レンズではないので絞りもピントリングも無いのが特徴です。
レンズ側面には何やら数字の書かれたシールが貼ってあります。
猪股 氏:
このレンズだけではなく、すべての計測機はドイツ本社の定期的な点検・調整が義務付けられています。このシールはその時期を示すもので、例えるなら車検のようなものです。
― シールに書かれた時期が来たらどうするのですか?
猪股 氏:
このレンズの場合は空輸でドイツ本社に送り返して検査に出します。大きな機器に関しては、ドイツから専門技師が来日して点検と調整が行われ、ドイツ本社の計器と同じ水準に合わせられます。
― つまり国内のカスタマーケアにて修理を行うカメラは、ドイツ本社と同じ計器を使用して、同じ基準で点検が行われるということですね。
猪股 氏:
その通りです。ここだけでなく世界中にあるライカカメラ カスタマーケアのサービスは、すべてドイツ本社の厳しい基準に沿って行われています。
ライカ カスタマーケア 修理センターではレンズ交換式のデジタル機をメインに行なっているとのことでしたが、中にはフィルムカメラ用の計測機も。
「フィルムカメラの修理は専門技師の多いドイツに送られることも多いのですが、こちらでも検査ができる体制は整えてあります」とのことです。
一方、こちらは最新のデジタル機に搭載されているWi-Fiを調べる計器。
カメラ姿勢を測定する様子を動画撮影して見ました。宇宙飛行士の訓練のように3次元にぐるぐると回して調べていきます。
「同じデジタルM型ライカでも世代によって使われている部品が全然違うんですよ」と見せてくれたのが、ライカM9のシャッター(上)とライカM10のシャッター(下)。
「ライカM9はシャッターとシャッターチャージが別体なのですが、ライカM10はすべて一つのユニットで作られています。修理する上でも、ライカM10の方が作業効率がいいですね」
「少しでも愛用のライカを長く使っていただけるように」と、すでに販売完了した機種の修理部品もストックは多めに持っているとか。
最後はライカM(TYP240)の修理を見学させていただきました。ピント合わせに必要な距離計やコロなどはフィルムカメラと同じアナログな手法を使いながら、その他は基盤で囲まれたデジタルの塊といった感じです。
「デジタルM型ライカの凄いところは、アナログな技術と最新のデジタル技術が調和し、道具として完成しているところ」と猪股氏もおっしゃっていました。基盤にはカメラの心臓部とも言える画像処理エンジン「LEICA MAESTRO」の文字が見て取れます。
― 最後にライカ製品を使われている方、これからライカ製品の購入を考えられている方にカスタマーケアの視点からのメッセージをいただけますでしょうか。
猪股 氏:
ライカカメラジャパンのカスタマーケアは、日本国内で安心してライカ製品をご購入いただけるように設置されたライカカメラ社のドイツ本社のカスタマーケアと同等レベルのメンテナンスや修理の提供が可能な世界でも数少ないサービス拠点の一つです。
ライカカメラ製品の性能を最大限に活かすことができるよう、お客様のご期待に添えるサービスを引き続き提供してまいります。
この度は貴重な修理現場、工程を見学させていただきまして、ありがとうございました。
マップカメラでは、ご覧いただいたようにカスタマーケアにてしっかり点検修理を行った中古商品を多数取り扱っております。今回の記事が少しでもお客様の安心・信頼に繋がっていただけたら幸いです。
「Kasyapa for Leica」では今後もライカ関連の情報を発信してまいりますので、よろしくお願いいたします。