写真家:廣田比呂子 『ライカを愉しむ』
2022年02月11日
35mmAPO SUMMICRONL-MountLeica Boutique 9周年記念Leica SL2-SLeica Special ContentsVARIO-ELMARIT写真家
コロナ禍という新しい時代がはじまってまもなく3年目。私たちの暮らしは様々な場面において変わってしまった。いいことも悪いことも含めてすべて受け入れて生きていかなくてはいけないという課題が全世界の人類に同時に与えられた。
いちばん残念なことは人と人のフィジカルな距離を取らなくてはいけなくなってしまったこと。久しぶりに会ったら、きゃあー元気?とハグしたい想いを抑えて、グータッチになってしまった。心の距離は離さないで!と言われても人に気軽に近づかないようにすることに慣れるにはかなり時間がかかった。それでも誰かに会うのは嬉しい。
『Leica (ライカ) SL2-S』は二通りに愉しむことのできるカメラだ。
M型ライカでフォーカスも露出もすべてマニュアルで撮影すると、ときに失敗もある。逃したくない瞬間、動きの早い子供や動物を撮るときはSLレンズ、じっくりと被写体向き合いたい時はマウントアダプターを使用してMレンズで撮影することもできる。気分によって使い分けたり用途によって使い分けたり、いろいろな楽しみ方ができるのはありがたい。
この2年の月日で変わってしまったこともたくさんあるけど、ずっと変わらないものもたくさんあった。出来なくなってしまったことを上げたらキリがないけれど、かけがえのない大切なものに気付かされた時間でもあった。大勢の友達と集まったり、お酒を飲んだり食事をしたりと今まで日常にあったことができなくなってしまった。その分家族で過ごす時間が増えたという声をよく聞く。みんなで集まって騒いだ日々は遠い昔になってしまった。
両親の営むハンコ屋さんの一角で中華料理店を営む店主とその家族。中国から来た奥さんはもう2年以上実家に帰れていない。日中はおじいちゃんとおばあちゃんと過ごしている2歳の男の子は春にはお兄ちゃんになる。家族が増えてますます賑やかになるでしょう。
この2年の間に新しい家族をたくさん迎えた。小さな動物が家の中にいるだけで家族の雰囲気が明るくなったそうだ。
オンライン授業の合間に一緒にお散歩に行ける、学校があったらこんなにも長い時間一緒に過ごすことはできなかった。かけがえのない時間増えた。
ワンちゃん同士が走り回る姿はオートフォーカスが使えるSLレンズで。本気を出すともの凄いスピードで、とても追いつくことはできない。コロナ禍とか関係なく生きるエネルギーに溢れている。
子供たちは学校に行って勉強するのではなく自宅からオンラインで学ぶようになり、振り回されている大人よりも子供達のほうが案外溶け込んでいたりしている。学校に行けなくてかわいそうだねと思うのは大人だけで、子供は子供で「オンライン授業も楽しいもんだよ」と教えてくれた。兄弟で過ごす時間もいいけれど、久しぶりに会う友達との時間は日が暮れてもずっと遊んでいたいくらい楽しかった。
土曜日の夕方、両親と公園で遊ぶ男の子、ブランコの楽しさを覚えたばかりだ。
生まれて半年でコロナ禍になり、マスクをつけた大人は彼にとっての日常になってしまったけれど、外で元気に遊ぶ彼には関係ない、ブランコをもっと高く高く押してもらいたくて仕方ない。
野球をはじめたのは1年前、レギュラーになりたくて練習も頑張ってきた。試合に出るようになって、毎週末の野球が楽しみで仕方ない。コロナで試合がなくならないことを願いつつ、コロナでなくなってしまった合宿も行ける日がくるのを楽しみにしている。
ライカで写す瞬間には一番大切にしておきたい、戻らない時間がたくさん写っている。何十年か後振り返ったときに「あの時って、みんなマスクしていたよねー」って思い出になることを願っている。
コロナがいつ終わるのか誰にもわからない。コロナ禍だろうとそうでなかろうと時間は同じに流れている。終わる日のことを考えてばかりいると今の大切な瞬間を見過ごしてしまうような気がする。
今日はどんなレンズをつけて撮ろうか。服を着替えるように季節や気分によってレンズを使い分けることができる『Leica (ライカ) SL2-S』 、撮影スタイルにあわせていろんなレンズを自由自在に取り替えて遊ぶことができる。単焦点のSL35mm、M型のアポズミクロン、ちょっと遠い距離から撮りたいときは、SL90-280mmをつけて。
海外へ自由に写真を撮りに行けなくなってしまったことはかなり残念だけど、ライカはより身近な出来事に目を向けるように教えてくれた。
旅の途中、知らない街をうろうろ歩いて、人に声をかけて写真を撮らせてもらい、仲良くなって家にまで招かれお茶をいただいた。そんな経験を何度もした。今は昔話のようなことだけど、人と人の絆はいろんな形で存在している。
いつになったら自由に旅ができるんだろう、そんなイライラと焦りもいつからか「まぁ、いいや。いつかまた行けるだろう」という想いに変わった。
遠くに行かなくてもずっと残しておきたい景色や、いつまでも忘れたくないことがたくさんあることが分かった。小さな幸せはそこら中にあふれている。ずっと覚えておくことは難しいけれど、記憶を記録するためにはライカがなくては困ってしまう。できればお気に入りの写真はプリントしていつでも見えるところに飾っておきたい。