ズマリット50mm/f1.5、ライツ社初の大口径ハイスピードレンズとして発売された本レンズはテイラー&ホブソン社の”Xenon”レンズの技術供与をもって実現した、当時としては驚くほど明るいレンズでした。様々なバリエーションがある中で今回使用したのはMマウント仕様になった比較的後期のレンズ。マットとシャイニーのクロームメッキを組み合わせたボディデザインも、絞り羽根の驚くべき枚数の多さも、当時いかに高級なレンズであったかを感じさせてくれる質感の良さです。現行ラインナップの”ズマリットF2.5″シリーズの前に存在していたのがこのレンズになります。
描写に関しては往年の大口径レンズだけあってクセが強く、シャープネスに乏しいという風評が一般ですが、状態の良い個体であればかなりの解像力を発揮します。個性をいかに生かすかがポイントとなるレンズでしょう。フードも着けずに西日、逆光では当然こういったフレアが出ますが、雰囲気としては意図通り。美しい描写です。
レンズに厳しい条件ばかりですが、でもこんな描写も素敵ではありませんか?そんな中でも拡大して、フレアの奥の葉を見るとしっかり解像しているのが分かります。ただぼやけた破綻した画になっていないのは、こうした下支えがあるからこそでしょう。
開放でもボケは収差につつまれ、柔らかく再現されていますが、ピントのあった路面の石の表面はしっかりと描写しています。フィルムでもデジタルでも、モノクロームで、若干コントラストを強めに再現すると素晴らしく良い調子が得られるレンズです。
また、絞ると個性は激変します。下の写真を見て頂ければと思いますが、全域にわたってしっかりとした描写で解像力もかなりのもの。こうした変化がオールドレンズを使う上での楽しみなのですから、シーンと好みに合わせて描写をチョイスしたい所です。
ビル壁面の細かなライン、雲まで本当に細かく描写しています。逆光、F4の絞り値でこの描写ですからボケ玉とは失礼に当たるかもしれません。古いレンズなので個体差は避けられませんが、状態が良ければここまで描写ポテンシャルを持つレンズです。
西日のあたたかな光は、柔らかい描写のこのレンズには合っている様ですね。
どちらかというとコントラストで描いていくようなレンズですが、こうした大きくトーンの変化が多い被写体は合っているようです。神経質さを感じさせない心地よい描写は、撮影していても楽しいものです。
前部のレンズがとても柔らかく、コンディションの悪いレンズが多いのもズマリットの特徴。ヌケの悪さやフレアレベルを抑えたい場合には、なるべく状態の良いレンズを選びたい所です。
ヤマユリの妖しさが際立つような、独特の描写です。こうした描写が「面白い」と思える様になってくると…。ライカレンズの深みにズブズブと沈んでいきかねない、とても危険な状態です。
どっしりとした鏡筒の作り込みの良さは、「往年の銘レンズ」にふさわしい風格を備えています。絞りは15枚もあり、どんな絞り値でもほぼ円形。ライツ黄金期を象徴する1本ですが、”クラシック”だけでくくってしまってはもったいない魅力的な個性の持ち主です。使い込むと、無くてはならない1本になるのではないでしょうか。
Photo by MAP CAMERA Staff
Leicalens-Report.