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Summicron 35mm F2 1st (8elements) Black Chrome

Summicron 35mm F2 1st (8elements) Black Chrome

2015年09月01日

1954年に登場したライカの伝説的なレンズ・ズミクロン50mm F2。そこから約4年後の1958年にカナダライツでもう一つの伝説的なレンズが生み出された。6群8枚からなるレンズ構成から通称『8枚玉』と呼ばれるズミクロン35mm F2 ファーストモデルの登場である。数多くの銘玉が揃うライカレンズの中でも、この8枚玉の人気は取り分け高い。それは多くの写真家やライカユーザーから「最高の描写をする1本」と称賛されると共に、中世の甲冑を思わせるような美しいデザインと職人のこだわりを感じる高い完成度を合わせ持つレンズである為だ。通常は梨地のシルバークロームの外装なのだが、ごく少数ブラッククローム・ブラックペイントのモデルも存在する。今回のKasyapa for Leicaでは、その希少なブラッククロームモデルの中でもさらに数の少ないウエッツラー製レッドスケールモデルの写りをご紹介しよう。

一般的な8枚玉ズミクロンの評価は「柔らかめ」と言われる事が多く、言い方を悪くすると「ヌケが悪い」とも例えられたりする。しかし1枚目の写真を見て欲しい。少し絞っているもののレンガの細い線まで写し出し、そしてこの階調の豊かさと深い色彩表現はまるで一つの絵画を見ているようである。まさしく銘玉と呼ばれるのにふさわしい描写力を持った一本だ。


絞り:F2/ シャッタースピード:1/350秒 / ISO:100/ 使用機材:Leica (ライカ) LEICA M-P (Typ240) + Leica (ライカ) Summicron 35mm F2 1st (8elements) Black

絞り開放の描写はフォーカス部の解像力は高いものの、周辺を柔らかなフレアが包み込む。バラの花びらのふっくらとした厚みを感じる色彩表現も見事だ。


絞り:F2.8/ シャッタースピード:1/1500秒 / ISO:100/ 使用機材:Leica (ライカ) M-P (Typ240) + Leica (ライカ) Summicron 35mm F2 1st (8elements) Black

階調豊かな8枚玉は是非モノクロームでも使用していただきたいレンズだ。撮影時は日差しが強い時間帯ではあったが、被写体である女性のシャドウ部は潰れる事なく生地の質感まで感じとれる描写である。


絞り:F2/ シャッタースピード:1/60秒 / ISO:100/ 使用機材:Leica (ライカ) M-P (Typ240) + Leica (ライカ) Summicron 35mm F2 1st (8elements) Black

当時F2の明るさ持つ広角レンズは室内など薄暗い状況でも撮影ができる貴重な1本だったに違いない。開放の撮影ながら背景ボケが渦を巻く様なこともなく、歪曲収差も非常によく補正されているのが分かる。


絞り:F2/ シャッタースピード:1/180秒 / ISO:100/ 使用機材:Leica (ライカ) M-P (Typ240) + Leica (ライカ) Summicron 35mm F2 1st (8elements) Black

50mmの1stズミクロン同様、本レンズもガラスや水など透明な被写体との相性がいい。しっかりと線を出しながらもオールドレンズらしい柔らかな描写が被写体をより魅力的なものに変えてくれる。


絞り:F2/ シャッタースピード:1/350秒 / ISO:100/ 使用機材:Leica (ライカ) M-P (Typ240) + Leica (ライカ) Summicron 35mm F2 1st (8elements) Black

ビルの隙間から太陽の光がスポットライトのように草木を照らしていた。この写真も開放で撮影をしたのだが、拡大してみて驚いてしまった。中央より少し左側にある先端が茶色くなった葉にピントを合わせたのだが、葉脈の筋を細密なまでに写し出しているのが分かる。約60年前に設計された本レンズは柔らかな光を捉え美しいボケ味を表現する一方、現代の最新設計レンズに引けを取らない高解像力も見せてくれる一本である。


絞り:F2/ シャッタースピード:1/125秒 / ISO:200/ 使用機材:Leica (ライカ) M-P (Typ240) + Leica (ライカ) Summicron 35mm F2 1st (8elements) Black

この写真の階調も流石だ。紫色の帽子のシャドウは黒く潰れる事なく、濃い紫色のままトーンが落ちているのが分かる。


絞り:F2/ シャッタースピード:1/90秒 / ISO:100/ 使用機材:Leica (ライカ) M-P (Typ240) + Leica (ライカ) Summicron 35mm F2 1st (8elements) Black

なだらかなグレートーンの美しさ。ハイライトが強く当たっている部分は白く飛んでいるものの、葉のシルエットだけがクッキリと浮かび上がっているのが面白い。


絞り:F2/ シャッタースピード:1/1000秒 / ISO:100/ 使用機材:Leica (ライカ) M-P (Typ240) + Leica (ライカ) Summicron 35mm F2 1st (8elements) Black

しっかりと影は影として暗く写しながらも、その中にある物や人の質感、色の表現が素晴らしい。光の拾い方が絶妙で被写体を忠実に再現しながらも印象的な一枚に仕上げてくれる。


Leica (ライカ) Summicron 35mm F2 1st (8elements)Black Chrome

冒頭で紹介した“レッドスケール”という呼び名は、この赤く塗られたフィート表示が所以だ。ブラッククローム・ブラックペイントにおけるレッドスケールは前期の8枚玉に見られる物で、後に黄色字の“イエロースケール”へと変更される。


Leica (ライカ) Summicron 35mm F2 1st (8elements)Black Chrome

無限遠ストッパーの塗装がはがれ落ち、中から真鍮地が見えているのが分かる。この個体はブラッククロームの塗装なのだが、ストッパーのみブラックペイントが施されている。元々はライツカナダが製造していたが、後にドイツ・ウェッツラーでも生産される事になり、同じ8枚玉ながら刻印が『Lens Made in Canada』と『Germany』のものに分けられる。1958年から1968年までの10年間製造され、通常のMマウント仕様が約11,000本生産された。他にもM3での使用にあわせたメガネ付きと少量ながらLマウント仕様のレンズも作られている。


Leica (ライカ) Summicron 35mm F2 1st (8elements)Black Chrome

8枚玉ズミクロンはデジタル機との相性も非常によく、階調豊かな写りを見せてくれた。その描写は高い解像力を持ちながらもしっとりと柔らかく、密度の高い色彩を表現してくれる。今回は希少なブラッククローム仕様での試写をさせてもらったが、その写りに筆者も魅せられ、レアレンズというのを忘れて撮影に夢中になってしまうほどだった。繊細な描写の中に「流石ライカは違う」と撮る者を納得させてしまう魅力がこの8枚玉にはあると言っていいだろう。なかなか手に入れるのが難しいレンズではあるがコレクターズアイテムというだけに納まらない素晴らしい描写を持ったレンズだった。

Photo by MAP CAMERA Staff


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