ズミルックス35mmと言えば、初代そして第2世代の開放で独特の柔らかい写りで人気のあるレンズですが、そのズミルックス35mmの後継モデルとして満を持して1990年に登場したのがこの第3世代モデルです。ノクチルックス50mmで初めて採用された非球面レンズを、なんと惜しげも無く2枚も採用し、描写性能を向上させた本レンズ。球面タイプのズミルックスから飛躍的に向上したその描写力をご覧頂ければと思います。
まずは開放、夜間ですが光の照り返しも強いながらこの描写。ピント面が薄い印象ですがわずかに滲みを残しながら精緻に描写しています。
f3.5まで絞り込むとこの描写。第4世代と比べるとコントラストが弱く、その分繊細な描写が際立っている様です。前面にわたって安定した描写はさすがのものでしょう。
精緻な描写は球面タイプと同じながら、フレアが少ないせいかよりその特徴が顕著に出ている様です。後ろボケも柔らかく、すくいあげるような優しい描写がこのレンズの個性なのでしょう。非球面レンズを使って第4世代に近づいたレンズかと思いきや、どの世代とも異なる独自の個性を持つレンズという印象です。どうも開放付近での使用では遠距離、中距離、近距離で描写の雰囲気が異なるようで、繊細ながらフレアをまとう近接域と、シャープネスの際立つ遠景の違いがこのレンズらしさなのでしょう。
こういったウエットな被写体の柔らかい滲みと、その中にある繊細な描写のラインは大きな魅力です。非球面レンズによって収差が抑えられているせいか、浮かび上がるような立体感を感じる事が出来ました。
陶器のつややかな肌目と、滲みつつ繊細なライン。良い雰囲気です。
後ろボケの、水に溶けていくような描写も美しいものです。逆光にもなかなか強く、しっかりコントラストを保っています。
夜間の撮影でも、開放ながら十分な描写力を持つこのレンズは大いに活躍してくれます。立体感も、存在感も、夜の光のつややかな雰囲気までしっかり描き出してくれました。
個人的には、少しアンダーめに振った時のピントの立ち上がりと、涙ぐんだように滲んでいくボケがしみじみと良いと思います。僅かに滲みが有っても、元データでは葉の葉脈まで見える解像力の高さ。この描写はこのレンズならではのものです。
遠景描写は現代的な性能の高さが発揮されます。大変なコストをかけた初期の非球面レンズながら、その恩恵は大いにあったと見るべきなのでしょう。
鏡筒デザインはかなり現代的なフィニッシュに。さっと見ると第4世代に似ていますが、「ASPHERICAL」と表記が有るのが外見上の大きな特徴でしょう。またピントノブの周りにも強くローレットが刻んであり、鏡筒を持ってもピントをあわせられる様になっています。非球面レンズを2枚も使い、更に1枚ずつ削り出しを行っていたため生産コストも高く、生産は1990年から1994までと短い間しか行われませんでした。発売当初からその性能の評判が高く、生産が追いつかなかった事も一因としてあるようです。そんな事情から本数も極端に少ない本レンズですが、その前評判に違わないこの個性。ぜひともじっくりと使ってみたい1本です。
“M Monochrom”での撮影も行いました。モノクロでも実に良い表現です>>
Photo by MAP CAMERA Staff
Leicalens-Report.