ズームレンズは一眼レフではありふれた物となっていますが、LEICA M型はレンジファインダー機。視野枠で撮影範囲を示すため長くズームレンズは存在していませんでした。そこへ3焦点の切り替え式という形で登場したのがこの『Tri-Elmar』です。28mm、35mm、50mmというレンジファインダーで最も需要のある3つの焦点を切り替え式にし、視野枠の切り替えや距離計の連動カムもリングを回す事で物理的に変更をかける凝った仕様。レンズの後ろから見ても切り替え機構は実にメカニカルで、カチッと変更がかかる所はさすがLEICA。非常に精密感のある造りは信頼出来るものです。
ズームレンズと聞くとその描写を気にされる方も居ますが、このレンズでは特に心配はいらないものと思います。逆光の強い日差しを照り返すビルを撮影しても、フレアが出る事も無くしっかりとしたコントラストを保って描写。壁面の細かな凹凸、陰影までしっかりと捉えてくれています。解像感もしっかりしたものですね。
また開放F値がF4通しになっているなど、そのサイズからすれば使いやすいレンズに仕上がっているのも嬉しい点です。室内での撮影でもレンズ交換無く撮影できるのは大変便利で、デジタル機であれば映像素子へのゴミの付着の心配も無く、ISO感度の制約も少ない事から実に使いやすいレンズとして活躍してくれる事でしょう!
この28mmでの開放感もクリック一つで選択できてしまうのですから、その使いやすさは想像以上です。
実際、レンジファインダー機の利点の1つは機動力の高さ。コンパクトなシステムで動きやすい点があるのですから、とっさのシチュエーションで最適な画角を選び出せるというのはこれは大きなアドバンテージです。街頭スナップ等でもこのレンズがあれば大半の撮影が可能でしょうから、悩んでみる価値は大いにある1本です。
雲の表情も実に細かく描いてくれます。下のカットでも思いましたが、ズームレンズにして繊細なこの描写は嬉しいものです。
街頭でのスナップ、旅行先での撮影、様々なシチュエーションでこのレンズは大いに活躍してくれると思います。レンジファインダー機の軽快さを更に一歩のばしてくれる様なこのレンズ。当初は私も『3焦点切り替え式』というそのスペックから”特殊なレンズなんだろう”という思い込みがありましたが、実際に使用してみると驚くほど使いやすい。現行品ではより広角にシフトした16mm、18mm、21mmの『Tri-Elmar』が販売されていますが、28mm、35mm、50mmという常用スペックを持ったこのモデルもぜひ検討して頂きたい、良いレンズです。
今回使用したのは距離計レバーの無い初期モデルの『Tri-Elmar28-35-50mm/f4 ASPH』。他のライカレンズと比べると望遠レンズの様な押し出しはありますが、3本分の焦点距離で活躍してくれるのであれば許せるサイズ。またかなり細身で、持ち運びやすいのも大いに評価したいポイントです。常用レンズとしてこのレンズというのは、大いに”アリ”な選択だと思います。
Photo by MAP CAMERA Staff
Leicalens-Report.