“Telyt”シリーズのレンズはLEICAレンズ群の中でも主に100mmを超える長焦点距離のレンズに称される名称である。ビゾフレックスでは最長800mm/f6.3の巨大な”Telyt-S”も存在するが、今回は手持ちでも使いやすい第2世代の『Telyt 200mm/f4.0』を使用した。組み込み式のフードになり絞りもプリセットタイプに。軽金属を使用した鏡筒は想像以上に軽量で、外観の大仰さに比べて持ち運びはしやすいレンズである。
また、描写の安定感が抜群なのがこの”Telyt”シリーズの特徴だ。新旧もあるが、古い世代の”Telyt”でもコントラストや色再現に違いはあれど、どの玉も非常に優秀である。反射の強いシチュエーションでもこれだけ写れば文句は無いだろう。元データではグラスに生じた結露まで見える好描写だ。
焦点距離を考えると、F4でも十分にボケる。圧縮感も見事なもので、ピント面の立ち上がりも良好だ。花弁のひだの柔らかな感じもしっかりと伝わってくる。
細かな水面の煌めきも美しく表現する。コントラスト偏重ではない落ち着いた描写が印象的だ。
少々絞り込んでの撮影。無機質な被写体に光の強いシチュエーションだったが、描写が固くなる事も無く光を描き分けている。予想以上にボケの大きいのには驚いた。
前後のボケ味も良好だ。落ち着いたトーンをしっかり描いてくれるのには嬉しくなってしまう。開放でも頑張ってくれるが、少し絞り込んだF5.6からF8辺りの絞りでは解像感とボケのバランスが良く、個人的にはお勧めである。色合いもシックで綺麗なものだ。
手前にかけての緩やかなボケも”Telyt”らしい。
大仰、ではある。しかし精密な機械の装着感や操作感など、魅力も多いのが悩ましい所だ。今回の撮影ではアイレベルのプリズムファインダーではなく垂直タイプのルーペを使用したが、ウェストレベルでの撮影が予想以上にしやすかった事は驚きだった。
ちなみに、今回使用した『Telyt 200mm/f4』や前回レポートした『Hektor 125mm/f2.5』等は”Visoflex III型”に装着するのに”OUBIO”通称テリートリングを使用する必要がある。LマウントをMマウントに変換する、本体に三脚座のある確りとした中間リングだ。
いろいろな手間のかかるレンズでもあるが、それゆえ手頃な価格というのも魅力的。LEICAレンジファインダーを使った新しい撮影体験を、ぜひ楽しんでもらいたいと思う。
Photo by MAP CAMERA Staff