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MC Pentacon Auto 50mmf1.8 & MC Pentacon Auto 29mmf2.8

[ Category: M42星雲|掲載日時:2007年08月24日 13時03分]
 M42というマウントのレンズをご存知でしょうか。
 古式ゆかしいピッチ1ミリのネジ込み式マウントで、内径が42ミリ、スクリュー・マウント、プラクチカ・マウント、スレッド・マウント(T・M)などという異名があり、「M」が何の「M」なのかという点に関しては、いまだ確かな答えが出ていない……。

 何だか雲をつかむような説明ですが、どうしてこのようなことになっているかというと、M42というマウントが一眼レフ用レンズとしてほぼ世界的基準……ユニバーサル・マウントであったという時代が存在し、ありとあらゆるメーカーがこの規格でレンズを製造したため、写真機史的に若干の混乱を来たしているからです。
 日本ではペンタックスを筆頭に、リコー、ヤシカ、フジ、オリンパス、トキナー、シグマ等、ドイツではカール・ツァイス、シュナイダー、フォクトレンダー、ローライ、シュタインハイル、メイヤー、シャハト等、フランスではアンジェニューが、リヒテンシュタインなんて小さい国でもキルフィットというレンズメーカーがあり、片やロシアでは戦果としてドイツから持ち帰った技術にクラスノゴルスク機械工場がロシアン・アレンジを施し……と、ほぼ世界中でこのマウント規格のレンズが製造され続けました。何十年もの間、です。
 メーカー各社が独自のマウントをずらりと並べ、ウチはウチと線を引いている現在、果たしてこのようなことが想像できるでしょうか。M42マウントのカメラ一台あれば、世界中、何千種類あるかわからないレンズ全てが使えてしまうだなんて……。
 「M42」と天文学会で言えば、それはオリオン座の大星雲のことですが、まさにこれはカメラ・レンズ界でも、間違いなく大星雲の呼び名であるのです(……これ、M42における使い古された決め台詞ですが)。
……大星雲に飛び込んでみませんか? ちょっとだけ勇気を出して。楽しいですよ。そういう時、ぴったりな案内役が、東の「ペンタックス・タクマー」、西の「ペンタコン(Pentacon)」であると(事情通の人たちの間では)言われています。

今回ご紹介するのは、西の方、ペンタコンのレンズ二本です。

「ペンタコン」といきなり言われると、ついうっかり米国の国防総省を思い浮かべてしまう方も多いかもしれませんが、あれは「ペンタゴン」であり、まったくの別物です。意味合い的にもまったくの別物であり、ペンタゴンが民主主義の国のものなら、ペンタコンは社会主義の国のものです。

 ペンタコン……東ドイツの人民公社的コンビナートのことで、東西ドイツ統一まで、数々のカメラやレンズを製造していた企業体です。プラクチカやペンタコン・スーパーなどの一眼レフの他、6×6フォーマットのペンタコン・シックスがよく知られています。

 ペンタコンの本拠はドレスデン。大戦後、ベルリンの壁によってドイツが東西に分裂したというのはご存知の通りですが、このうち、東ドイツという土地に所属した光学メーカーたちは、社会主義的国家体制のもとで纏められ、(その主義の中での)効率的運営を目指す、ということになりました。このうちのひとつがペンタコン人民公社であり、つまりはひとくちにペンタコンのレンズと言っても、元は別のメーカーのレンズを名前を変えて製造しただけ、ということもあります。

 今回の二本は、どちらもメイヤー(Meyer-Optik Gorlitz)という光学メーカーのモデル(50ミリの方はオレストン、29ミリの方はオレステゴン)を原型としているらしいというのが一般的な説です。レンズ自体の構成は同じだと思われ、最短撮影距離が同じだったり、メイヤー製のものの描写特性(あるいは癖)がペンタコンの後期型でも同じように見られます。

 コンパクトで軽量ながら、どちらも金属鏡筒で、プラスチック製のオートフォーカスレンズに慣れてしまった手には、金属のしっかりした硬さ・堅さが新鮮です。絞りリングのクリック感も心地よく、マルチコーティングは鮮やかな紫色を発して輝きます。
 肝心の写りで褒められる点はと言えば、発色の良さがあります。東独レンズは色のりがよいというのも有名な話ではありますが、これもその系譜に載っているということでしょうか。29ミリの方は周辺の流れや歪みが目立つ感もありますが、ある程度絞ってやれば、当たり前のようにシャープな結像をします。

 最短撮影距離は、50ミリが33センチ、29ミリが25センチと結構寄れます。スナップしながら歩いていて、花に猫に……急にマクロ的な一枚に挑戦したくなっても便利ですね。

 しかし、これらレンズの最大の武器・長所は別のところにあります。

 そうです。人民公社製ゆえのコストパフォーマンスと玉数の多さに他なりません。前世代の、それも遠い異国のレンズですが、とにかくよく見かけることができます。そして、安い。二本あわせて幾らだったか……中古品であるため明言は避けますが、数字を見れば貴方もきっとひとつくらい欲しくなるはずです。

 高級な宝物レンズもいいですが、惜しげなく使えるレンズというのも絶対に必要です。筆者もこの二本で、街で、旅で、海で、宇宙……もとい雨中でと、たくさん撮影しました。そうしていつも気兼ねなく持ち歩けることで、案外、ペンタコンでものにしたシャッター・チャンスは多かったりします。
 M42は単純なネジ構造のため、オートフォーカスをはじめとする現代的なメカニズムには対応していません。ですが、それゆえにさまざまなカメラ(もちろんデジタル一眼レフを含む)にマウントアダプタを介して使用することができ、また、単純ゆえに絞りやシャッター速度といったカメラやレンズ本来の仕組みを勉強するのにも最適です。

 そして、さらに少し深く覗き込んでみれば、レンズの奥には、そのモノの辿ってきた世界史をも垣間見ることができる……。M42レンズを通して、いつもとちょっと違う世界の見方をしてみるというのも、なかなかオツな楽しみではないでしょうか。

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M42
MC Pentacon Auto 50mmf1.8
M42
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[ Category: M42星雲|掲載日時:2007年08月24日 13時03分]

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