11/15より始まったブログ企画『11月30日はカメラの日』。そのタイトルに掲げられている本日11/30は、今から42年前の1977年(昭和52年)に小西六写真工業(コニカ)が世界初のオートフォーカス搭載カメラ「コニカC35AF」を発売した日です。
今やオートフォーカス技術は格段に進化しました。AIと組み合わせることによってカメラが被写体を自動認識し、手動で行うマニュアルフォーカスとは比べものにならないほどのスピードでピントを合わせてくれます。実際に最新のミラーレス機を使用すると人の腕(テクニック)を超えた技術だなと実感してしまいます。
そんなAF記念日とも言える『カメラの日』、ブログ企画最後のトリとして取り上げるのは…
『Leica M9』です!
…大丈夫、分かっています。AF記念日だと言っておきながらM9は完全なるマニュアルフォーカスカメラ。しかも10年前に発売されたデジタルカメラです。なぜ今このカメラを取り上げるのか?それは「カメラで写真を撮る事」の大切な何かをたくさん感じられるカメラだからです。
まずM9とはどんなカメラ?というところをざっくり説明しましょう。M9は2009年発売されたデジタルカメラで、名前の頭に付いている“M”はM型ライカを意味し、1954年に発表されたM3から続く伝統的なレンジファインダー機になります。レンズマウントはその名の通りライカMマウント。レンジファインダーの機構説明については割愛させていただきますが、採光窓が付いているM型デジタル機では最後のモデルになります。
M9の最大の特徴と言えるのがローパスレス仕様の1800万画素フルサイズCCDセンサーを搭載した唯一の市販カメラだということ。このセンサーはKodakがライカのためだけに作った100%カスタムメイドの撮像素子です。この頃のイメージセンサーはすでにCMOSが主流になっており、同世代の『EOS 5D MarkII』『D700』『α900』といったフルサイズ一眼レフ勢にはライブビューや動画撮影機能、低消費電力などメリットの多いCMOSセンサーが採用されています。
M9ユーザーがこのカメラの虜になっている理由は「M9でしか撮れない」と感じる写真を生み出してくれることです。濃い発色性や解像力と立体感、そして何より独特の雰囲気や色気のある写真が撮れると言えばいいでしょうか、言葉や文字で例えるのが非常に難しいのですが、他のカメラでは感じることのできない印象をM9の画から受ける事が多々あるのです。
主観的な見解ではあるのですが、デジタルカメラの画がどんどん高精細になって綺麗になっていくと『画像』のような印象を受けるのに対して、M9の撮れる画は一貫して『写真』なのです。それはフィルムメーカーであるKodakが作ったCCDセンサーだからなのか、それとも写真の歴史を作ってきたライカが作ったカメラだからなのか。今のデジタルカメラと比べてしまうと明らかに時代遅れな機種ではあるのですが、それ以上の魅力がM9にはある。これは断言できます。
ここからは愛機自慢の話になってしまうのですが、少しお付き合いください。私のM9は中古で購入しました。オリジナルの革はくたびれていたので、M9用の貼り革を購入し自ら張り替え(リザード調)。ボディはコンパウンドとポリマーで磨いてツヤを出し加工。そして紙やすりを使い分けてエイジング加工をしました。なんというか、ライカを紙やすりで削る行為は「我ながら変態だな」と思いました。
そして赤いロゴは黒塗りに。この「赤ロゴ問題」はライカ好きでも意見が別れるところなのですが、私は“目立たせたくない派”なのでこのようにしました。
本当はロゴを取り外してベンジン系で塗装を落とし、サーフェーサーで下塗り後にエナメル塗装を施す予定だったのですが、ロゴ外しの段階で挫折(外せなかった)。そのため筆で直塗りしてあります。塗料はプラモ男子におなじみの『タミヤカラー エナメル塗料 X-1 ブラック 光沢』。“Leica”の文字面は塗装後にプラ板(クレジットカードなどでも可)で擦れば綺麗に下地が出てきます。塗装にチャレンジする方はくれぐれも自己責任でお願いします。
レリーズボタンは真鍮無垢削り出しの物を。エイジングで見えているボディの真鍮地金と合わせました。ニッケルレンズを装着するとさらにコーディネートが決まります。
ストラップはレザーも考えたのですが、まずはと『ARTISAN&ARTIST (アルティザンアンドアーティスト) ピンドットコードストラップ ACAM-701 ブラック/ホワイト』をチョイス。そして使用しているSDカードはライカです。
M9を手にするまで理想のカメラって何だろうとずっと考えていました。一眼レフから写真の世界に飛び込んだのですが、段々と撮りたい写真も変わっていき、それに応じて理想のカメラも次々変わり、気づけば今ライカを手にしています。よくある例えかもしれませんが“呼ばれた”のかもしれません。無意識の中の意識。偶然という名の必然というやつです。
昔は「ライカは自分に関係ないカメラ」と憧れすら抱いていませんでした。高いだけで性能は国産カメラの方が上だ、ライカなんてブランド品みたいなものだろうと。
しかし、実際のライカは違いました。純粋に撮影を楽しめ、これほど写真を撮ることに真剣に向き合えるカメラは他にないと思うのです。
後継機種と言えるM型デジタル機も登場していますが、やはりM9は孤高の存在のように感じます。どちらが良いとかではなく、個性が強くて独特の味わいがあるカメラがM9なのです。
もし理想のカメラは?と質問をされたら、私は「Leica M9」と答えます。カメラの日だからこそ皆さんも自分の愛機について少し考えてみてはいかがでしょうか。カメラと今の自分を考えるのもたまには良いものです。