これはSONY α7RⅢを軽量性だとかAFだとかを無視して古いレンズの母艦機として運用している筆者の日記です。
母艦機とは本来燃料や航空機などを輸送する船のことを指す言葉ですが、カメラボディに対してこの言葉を使う場合は「レンズを使うためのボディ」という少々ややこしい意味を持ちます。
フランジバックの問題でレフ機ではアダプターがなく楽しめなかったあのレンズもこのレンズも、ミラーレスならすべて楽しめるというわけです。
大昔の聞いたことがないレンズから一度は耳にしたことがあるレンズまで、α7RⅢに付けて楽しんでいきたいと思います。
今回使用したLeica Hektor L50mm F2.5はライカ社初のハイスピードレンズです。
エルマーの後継となり、A型に取り付けられた状態で発売が開始されました。
後年にはレンズ単品でも発売されていたようですが、出回っている本数が少なく今では珍品のような扱いです。
バリエーションはニッケルとクロームの色違いモデルが存在します。
エルマーやズマールなどはニッケルの方が生産本数が少ないため金額が高騰しますが、本レンズにおいては逆転しクローム鏡筒の方が生産本数が少ないため値段が高いです。
ぱっと見ではエルマーとそう違わないように見えるライカ初の大口径レンズはどのような写りを見せてくれるのでしょうか。
まずは1枚。何の気なしに撮影しましたが、ベルベットの質感が上品に表現されています。
スペックからズマリットのような甘いレンズを想像していましたが、しっかりと、そしてしっとりと写ってくれます。
カラーフィルム等存在しなかった時代のレンズではありますが、非常に渋い色味です。
斜めに日が入ったことで下部にフレアが出ています。
地面から照り返す暖かい光のようにも見えます。
背景を回すために被写体に寄ってみました。
ズマールのような回り方をしています。ピントのピークは芯があるもののどこか優しい雰囲気。
バブリーなボケをするかと思いましたが、背景の点光源が少し足りませんでした。
トリプレットの派生形なので輪郭が強く出るボケはお約束。
もう少し葉を周辺部に寄せた構図でも撮ったのですが、周辺は甘くなりすぎてしまうため、ある程度中央部に寄せておいた方が無難でしょうか。
F9まで絞っての1枚。
パキっとした描写はかなり現代的ですが、背景の怪しいボケがオールドレンズであることを主張してきます。
解像力もさることながら、幹の乾燥した部分としっとりとした部分を描き分ける表現力は流石ライカです。
開放での一枚。
船をあえて周辺部に持ってきて少し甘くしました。
ライカの「なんとか明るく、そしてしっかり写るレンズを作ろう」という意気込みが見えてくるようで、私はズマールやズマリットよりも好みでした。
今回はライカ初のハイスピードレンズ、Leica Hektor L50mm F2.5とお送りしました。
中央部の確かな解像力と周辺部の妖しいボケ味が共存する、ライカの歴史を感じることのできる一本です。
見かけた際は是非お手に取ってお試しください。