これはSONY α7RⅢを軽量性だとかAFだとかを無視して古いレンズの母艦機として運用している筆者の日記です。
母艦機とは本来燃料や航空機などを輸送する船のことを指す言葉ですが、カメラボディに対してこの言葉を使う場合は「レンズを使うためのボディ」という少々ややこしい意味を持ちます。
フランジバックの問題でレフ機ではアダプターがなく楽しめなかったあのレンズもこのレンズも、ミラーレスならすべて楽しめるというわけです。
大昔の聞いたことがないレンズから一度は耳にしたことがあるレンズまで、α7RⅢに付けて楽しんでいきたいと思います。
今回使用したレンズはニコンが苦難の末作り上げたハイスピードレンズです。
レンジファインダーからレフレックスにカメラの主役が移り変わっていた1960年代。
レンジファインダー機ではマウント面からシャッター幕までの空間が比較的自由だった為レンズ後端を伸ばすことが可能でした。
しかし、レフ機ではそこにミラーボックスが入ったことで設計の自由度が一気に落ち、各社レンズの再設計を余儀なくされました。
50mmでレンジファインダー用レンズと同じ明るさ・焦点距離レンズを作るのが難しく、各社55mmや58mmという今から見れば中途半端な焦点距離のレンズを作成します。
1962年にCanonが発売した58mm F1.2に追いつけ追い越せで発売された本レンズが55mm F1.2です。Canonより3年の歳月がかかりましたが、より50mmに近い焦点距離で同じ明るさを達成しました。
今回はそんな各社がしのぎを削っていた時代の一本、Auto Nikkor 55mm F1.2とお送りいたします。
まずは開放で一枚。
しっとりとした雰囲気のレンズです。
解像感は全域でそこそこ高く、ボケは輪郭が強め。お手本のようなオールドレンズです。
オーバーに振ると滲みが発生します。
これは良いレンズ、とぽつり。
こういった味わい深い描写をするレンズを見つけた時の感動、プライスレス。
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ハイライトが滲みやすく、白飛びするギリギリのところまで明るめに撮影しました。
背景のぞわぞわとしたボケ味は好き嫌いが分かれるところです。
筆者は絵心も絵の知識も全くないのですが、絵と写真は似ていると感じることが時々あります。
目の前の風景に対してどの角度で描写するのか、どのように描写するのか、それを考える過程が似ているからでしょうか。
F1.2の圧倒的な立体感が気持ち良いです。
サムネイルにも使用した一枚。
F1.2という非常に薄い被写界深度ながらもピントが合ったところはしっかりと解像してくれます。
薄くかかった滲みの奥で葉の上の水滴が輝いています。
輝度差が少ない場面では特別クセの強い描写をすることもなく優等生です。
どのように使うかで出してくる画が変わってくる、使う方に合わせて色々な引き出しを持っているような懐の深い一本です。
見かけた際は是非お手に取ってお試しください。