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【極私的カメラうんちく】第48回:マイクロフォーサーズ

マイクロフォーサーズという規格が話題を呼んでいる。

フォーサーズの拡張規格というと難しく聞こえるが、フォーサーズと全く同じ撮像素子を使用しながら、ミラーを省略することによってフランジバックの長さをおよそ半分に出来るアドバンテージを活かし、フォーサーズ規格よりもカメラボディの大幅な小型化が実現できる規格のことである。また交換レンズもフランジバックが短くなり、さらにマウント径を6mm縮小した効果により大幅な小型軽量化を実現できる。

マイクロフォーサーズ規格で初の製品となったPanasonic LUMIX DMC-G1は「デジタル一眼」のキャッチフレーズで発売された。LUMIX DMC-G1は一見一眼レフのように見えるが、ミラーが無いので当然ファインダー内には小型のLCD(液晶ディスプレイ)が内蔵されている。デジタル一眼レフと比較するとそのカメラボディの薄さは特筆すべきものがあり、また全体のシルエットは最小型デジタル一眼レフの2/3程度しかない。一眼レフの派生型と見る上では超小型超軽量という形容詞がぴったりである。
しかしこれは筆者の個人的な意見だが、LUMIX DMC-G1は形式的に見れば明らかに「レンズ交換が可能なEVF機」であり、本来大きさを比較すべき相手はEVF機なのではないかと考える。大型の撮像素子を採用しさらにレンズ交換を可能にしたEVF機として比較、評価するのが最も妥当であるように思える。また、筆者としては「デジタル一眼」という呼び方にも抵抗がある。LUMIX DMC-G1の成り立ちが元をたどればフォーサーズという一眼レフの規格に基づいている点や、一眼レフのライブビュー機能の可能性を極限まで追及した製品であるという事情はよく解るが、「一眼」という言葉は「一眼レフ」を安易に連想させるものであり、プレビュー原理の全く違うカメラを同列で比較する誤解を生みかねないと考えられるからである。
EVFと一眼レフの決定的な違いがファインダー映像の表示速度にあることは、以前にこのコラムで指摘したが、LUMIX DMC-G1もその例に漏れることは無い。一眼レフが原理的にファインダー像を光速で表示するのに対し、EVFや「デジタル一眼」では大なり小なり映像処理のための遅延が発生する。この遅延は僅かなものなので撮影ジャンルによっては無視できる場合もあるが、場合によっては致命的ともなり得るものなのである。

また、Panasonicが超小型一眼レフをイメージしてLUMIX DMC-G1を発表した一方で、マイクロフォーサーズではビューファインダーが無い、背面液晶のみのモデルの展開も想定されている。つまりレンズ交換が可能なコンパクトカメラのようなモデルの出現も十分考えられるのだ。オリンパスが今年9月にドイツのフォトキナで発表したマイクロフォーサーズのモックアップは、まさにこの部類に属するものである。現在大型の撮像素子を使用したコンパクトカメラはシグマのDP-1が人気だが、そこへレンズ交換の性能が加わったとしたらさらに魅力的な製品になるだろう。ズームレンズだけではなく明るい小型の単焦点レンズが複数そろえば、レンジファインダー機よりもコンパクトな全く新しいシステムカメラが完成する。

35mm判一眼レフは、既に存在した35mm判レンジファインダー機のシャッター機構とフィルム巻き上げ機構を踏襲し、そこにミラー機構を追加することによって完成したといってよい。そこに一眼レフとしての独自の進化論はあるにせよ、技術的に先に完成していたレンジファインダー機があったからこそ、35mm判一眼レフは比較的短期間で完成した製品となりえたといえる。またレンジファインダー機が短いフランジバックの自由度を活かして、広角レンズを自由に駆使していた反面、初期の一眼レフは特に広角レンズの設計において長いフランジバックの制約に苦しんでいた。現在の一眼レフは全てその制約の克服の上に成り立っているのである。
それと比較してみると、マイクロフォーサーズが一眼レフのミラーを省略することによって短くなったフランジバックのメリットを最大限活かして、カメラボディと交換レンズの大幅な小型化を実現した点は、あたかも一眼レフの辿った道のりを逆行したかのごとく見える。そしてそこにはやはり先に完成していたレンズ交換式デジタル一眼レフとそのライブビュー機能の技術があり、それらを最大限活用することによってLUMIX DMC-G1は完成したのである。

ところで、フォーサーズカメラボディにはOMマウントをはじめ、ニコンFマウントやM42マウントなど多くのマウントアダプターが出回っており、マウントアダプターを介して沢山の種類の一眼レフ用レンズが装着できるが、マイクロフォーサーズ用のマウントアダプターも既にサードパーティーから発売が予定されている。特に注目すべきは、レンジファインダー(Mマウント)用のマウントアダプターで、マイクロフォーサーズの方がレンジファインダー機よりもフランジバックが短い特性を活かし、補正レンズなしで無限遠の撮影が可能になっている。Mマウント用のアダプターが用意されたということは、事実上Lマウントも使用可能という事であり、これによってほとんどのレンジファインダー用レンズがライブビューで使用可能になっている。

今後様々な新しい展開が予想されるマイクロフォーサーズだが、問題はどれだけ普及定着するかの一点にあるといえる。これは新規格のマウントには必ず付いて廻るリスクだが、全てが新しいということは企画、設計上の制約が少ない反面、同時に既存のインフラが全く無いことを意味している。フォーサーズ規格レンズとの純正アダプターも用意されているが、フォーサーズ自体がまだまだ新規格のマウントである以上、フォーサーズユーザーからの需要はあまり期待できないかも知れない。そしてそのリスクを少しでもカバーするためには、今後の商品展開のスピードが重要である。LUMIX DMC-G1の次のマイクロフォーサーズはいつどんな形でお目見えすることになるのだろうか。いずれにしても方向性と可能性をどれだけ早く消費者にアピールできるかが、マイクロフォーサーズの今後を占う上で大変重要であることは間違いない。

[ Category:OLYMPUS & OM SYSTEM | 掲載日時:08年12月25日 00時00分 ]

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