「解像度のいらない世界へ」というコンセプトから、写真家の鈴木さや香さんがプロディースしマルミ光機が出した「アルプスパンチ!」「なついろパンチ!」
かねてより気になっていたフィルターが販売開始したということで、さっそく作例を撮りに出かけたいと思います。
解像度で良さが謳われる現代で、わざと解像度を落とし、非現実な世界観をカメラに映し出してくれるこちらのフィルター、『記憶の中にある心の画像を写す。』ということで、SONYのα7IIIと中一光学 SPEEDMASTER 50mm F0.95 IIIに今回は、アルプスパンチ!を付けて、筆者の幼いころの思い出の場所へ遠征してみました。
※作例はすべて、WBをカスタム、マゼンタ寄りの色で設定しています。
酒屋を営む実家、家の裏にはビールケースが高く積まれています。
我が家は代々布団ユーザーだったのですが、私がベットで寝たいと駄々をこねて、父がこのビールケースでベットを手作りしてくれたのを思い出しました。
アルプスパンチ!は赤色を強調してくれます。黄色と赤の対比がかわいらしい写真です。この解像度の低さ、レンズ元々の解像度も相まってまるでオールドレンズで撮影しているような写りになりました。
家の周りをうろうろして、気になる被写体を見付けては写真を撮って行きます。
丘の下に何年も放置されたであろう古民家がありました。
50mmの単焦点を、APS-Cにクロップして75mmで撮影しました。明るさもだいぶ絞り込んで撮影しています。
『アルプスパンチ!』は望遠になればなるほど、解像度も下がってしまう作りになっているようです。こちらのレンズは、絞り込むことではっきりとした描写も得意なのですが、フィルターの影響でだいぶふわっとした写真の写りになりました。
肉眼では見ることができない写真に『記憶の中の色』という言葉がとてもしっくり来ています。
続いて、実家からまた少し離れた山の中にある遊園地へ向かいます。丘の上にあるとても小さな遊園地です。園内には2、3組の親子が休日を楽しんでいました。
まだ私が幼かった頃、母親に手を引かれ何度も遊びに来ていた思い出の詰まった遊園地です。
ここの街は、街自体が懐かしい空気感をまとっていて、アルプスパンチ!にピッタリの撮影が出来ると確信し、遊園地に向かう足取りも弾みます。
残念ながらこの日はあいにくの曇り。。。ゴーストやフレアがこのレンズフィルターの醍醐味でしたが、陽の光が出ていない今日は出せそうにありません。
せっかくですので、フィルターが見せてくれる色を存分に楽しみたいと思います。
園内にあるものすべてが、何十年もの間、変わらずここにあるようなノスタルジックな空間でした。
少し年季が入ったアトラクションは、人が乗らないと完全に電源を落としてしまっているのか、電球1つ付いていませんでした。なんだか切なさが湧きたちます。
このレンズは開放で撮影すると被写体とフチ部分に不思議な滲みが生まれます。この滲みが更にアルプスパンチ!の解像度の無い世界をさらに独特な世界にしてくれていると思いました。
はじめ、中一光学 SPEEDMASTER 50mm F0.95 IIIに更に解像度をわざと落とす加工がされているフィルターを付けてしまったら、曇りがかかったような写りになってしまうんじゃないかと、実家へ向かう電車の中でハッとして後悔しましたが、杞憂だったようです。
小さなゲームコーナーがありました。ガチャガチャが200円300円が当たり前になったこのご時世ですが、ここの乗り物は1回遊ぶのに50円です。本当にここだけ時が止まっているかのような気持ちになります。
アルプスパンチ!を使い、深く考えずなんとなくでシャッターを切った写真を見てみると、目の前にある景色が途端に懐かしくて切ない色合いに変わりました。
子供の頃の記憶をリアルタイムで見ているかのような不思議な体験です。
都心から電車に揺られて数時間の筆者の故郷は、故郷というには近すぎて、顔を出すには少し遠い。そんな場所にあります。
今回の帰省も『記憶の中にある心の画像』を撮影する。という目的がなければ、重い腰を上げられなかったと思います。このフィルターのおかげで、また少しずつ実家に帰って故郷の様子を見ておきたいな。という気持ちになれました。
▽今回撮影で使用した機材はコチラ!▽
▽アルプスパンチ!▽