【旅と写真】インドで買ったカメラ
どこか遠くへ旅行にいきましたか?
少し昔になりますが、筆者がカメラとバックパックで一人フラリと旅をしていた頃のエピソードです。
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肩に掛けていたカメラストラップがまるで手品のようにするりと解け、
あ!と思ったときにはスローモーションを見ているかのようにカメラが石畳へ落下していった。
ガシャン!!
もの凄い勢いで拾い上げたデジタル一眼レフは『カードエラー』の表示。よく見るとカメラボディの一部にヒビが入っている。
青白い顔になった私の隣で「Oh!」と
浅黒い顔のオジさんが覗き込んでくる。
その声にノラ犬がなんだ?と振り返り、目の前を鮮やかなサリー姿の女性がガートの階段を下りて行った。
・・・参った。ここはインドだ。。。
インドにヴァラナシという街がある。
有名なガンジス川が流れ、インド中からの巡礼者と世界中の旅行者でにぎわう大きな街。
日の出と共にガンガー(ガンジス川)で行われる沐浴。
ひしめくように建ち並ぶ寺院からは祈りの声。
一日中空に立ち上る火葬の煙。
私の中にあるエキゾチックでドラマチックな『THE・インド』の土地ヴァラナシに訪れた初日、まさかの失態をやってしまった。
何がともあれ、とりあえず私にはカメラが必要だ。
動揺しつつも頭のスイッチを切り替え、隣に居た浅黒いオジさんにカメラ売っている店知らないか?と訪ねる。
「連れて行ってあげるよ」と細い路地をスルスルと抜け、
着いたのは街のどこにでもありそうな雑貨店。
日本でいう『タバコ屋』にイメージが近いだろうか、道路に面したカウンターで「○○ください」と言うと
どこからともなく「はいよ」と奥から品物が出てくる感じのお店。
執拗に旧型のコンパクトデジタルを進められたが、
バックパッカーの私にそんなお金の余裕は無い。
フィルムが交換できるコンパクトはないか?と突っぱねると
渋々出してきたのがこのカメラだった。
『Kodak KB10』というカメラ。
プラスチックで出来たボディにしっかりとフラッシュも付いている。
すこし頼りないが、手触りがなんだか懐かしい。10代の頃に必ず持ち歩いていた『写ルンです』を思い出す。
とりあえずインドで“常温保存”されていたISO100と400のカラーフィルムと一緒に買い、数日この街で過ごす事にした。
ガンガーの川沿いには迷路のような細い路地が入り組んでいる。
夜明け前からガート(沐浴場)に多くの人々が集まり、沐浴をする。
ボートで川に出ると絶滅危惧種のガンジスカワイルカに奇跡的に遭遇できた。
地元のインド人でも見た事がない・知らないというくらい珍しい生き物だ。
対岸の『不浄の地』と呼ばれる土地には広大な砂浜が広がっている。
夕暮れ時の漁ではニゴイのような魚が掛かっていた。
ガートで泳いでいた少年。日本から持って行っていた『あずきキャラメル』を一緒に舐めながらガンガーを眺める。
ヴァラナシには大小1500以上のヒンドゥー寺院がある。川沿いの路地裏にも寺院がひしめく。
水牛も気持ちよさそうに沐浴?この日はクラクラするほどの暑さだった。
散歩をしていると「写真とって!」とおもむろにパンをくわえる少年。
あの日々はこのカメラも含め、私の思い出な大切な思い出。
もうこのカメラで写真を撮る事はないかもしれませんが
それでもどうしても手放せない一台で、いまでも大切に保管をしています。