【Canon】EOS 6D Mark IIが捉えた、深い森の自立起動トロッコ
指先1つで高精細な航空写真マップを見られる昨今、もうこの世には秘境など無いようにさえ感じられます。
スマホを片手に「目から上」だけで旅する、全国各地の観光名所。
後に残るのは眼精疲労と寝不足、ほんのちょっとの予備知識。
そうなると自ずと探し始めるのは「見たこともないノスタルジア」。
冬に夏を、昔日には未来を求めるようなものでしょうか。
ようは、欲張りなのです。私という人間は。
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普段から面白そうなスポットの情報にアンテナを張っていますが、それで見つかる場所全てに行けるわけではありません。
その点今回は幸運でした。
山奥に現役で稼働している、鉱山トロッコがあるようなのです。
クマにさえ気を付ければ、そう難儀せず辿り着ける場所。
周辺の地理を軽く調べ、リュックサックにレンズとカメラを詰め、俗に言う“秘境駅”から、歩を進めました。
エメラルドグリーンの川が続く、静かな山道。
地元の田舎でも見た事の無い、鮮やかな水面に目を奪われること暫し。
空腹に気が付いても、飲食店などありません。
マンガよろしく体中のポケットを触って何か食べ物がないか確認しますが、出てきたのはLP-E6NHが二つとEF40mm F2.8 STMだけ。
撮影に関しての準備は万端な模様です。
何キロも同じような道が続きますが、川を包む渓谷の色は少しずつ変化しているように見えました。
季節は真冬。光の射さない深い森を歩けば、厚着もむなしく震えが体を襲います。
かなりの距離を踏破し、これ本当に公道なの?と思えるような道を抜けると、大木が奏でる葉擦れのノイズに交じって、かすかにゴトン…ゴトン…という音が聞こえ始めました。
ここまで来れば、もうすぐ目的地のはず。
そして…
ネットの画像で予習をしてはいましたが、それは何とも言えない不思議な空間でした。
辺りには誰もいないのに、ひとりでにカタン…と動き出すトロッコたち。
10分ほど動いたのち10分ほど止まる…。を繰り返しているようです。
見たところかなりの旧式の様子。一体幾星霜、この森を走り続けているのでしょうか。
このトロッコが実際に動いている姿を動画にしましたので、宜しければご覧ください。
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今回の動画では、Technicolor製ピクチャースタイルのCinestyleを使用し収録しました。
これは乱暴に言えば、「全てのEOSでLog撮影が出来るようになるピクチャースタイル」です。
現在主流のミラーレス機に内蔵されているLog撮影機能と同様、撮影時には非常にナローなガンマカーブを与え、編集時のカラーコレクション・カラーグレーディングで色を追い込むものです。
もともとはこのピクチャースタイル専用のLUTも存在していましたが、DaVinci Resolveで読み込めない形式だったため断念し、ゼロから自分の納得のいく様に編集しました。
このピクチャースタイルは暗所でのシャドウノイズが目立ちやすいという評判でしたが、確かにその通りです。
しかしながらダイナミックレンジの拡充には繋がっており、目的とした“シネマっぽい画”に仕上げることができました。
ちなみにキヤノンが標準とするピクチャースタイル“スタンダード”と比較すると、次のようになります。
スタンダード
Cinestyle
差は一目瞭然。
スタンダードでは白トビしているように見える場所でも、Cinestyleではしっかりとディテールが残りました。
仮にスチルなら、RAWからの編集で色情報を取り戻せることもありますが、それができないムービーではこの差は相当効いてきます。
少し癖の強いスタイルではありますが、上手に使用していきたいものです。
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この時のお出かけは、予想以上に大満足のものとなりました。
毎回必ず面白いものに出会えるわけではありませんが、こういったことがあるから写真趣味はやめられません。
緊急事態宣言が明けたら、また素敵なノスタルジアを探していきたいと思います。