4年という歳月を経てついにモデルチェンジをした『FUJIFILM X-Pro2』。最新の2400万画素 X-TransCMOSを搭載しただけで無く、先代のネガを徹底的に見直しカメラとしての完成度も飛躍的に進化したFUJIFUILM渾身の一台となっています。今回はメーカー担当者へX-Pro2の魅力とともに、非常に気になる”あの事”までマップカメラが迫ります。非常に内容の濃いインタビューとなりましたので是非最後までご覧ください。
ついに待ちに待ったX-Pro2が発売になりました。今までのX-Pro1ユーザーの皆さんはどのように進化したのか気になっているかと思います。まず搭載されるセンサーがX-Trans「III」となりましたよね。画素数の向上が数字として分かり易いですがその他の進化点を教えてください。
上野氏:まず最初のX-Transはなぜ16M(1600万画素)を選択したかというと、当時APS-Cセンサーとしてはベストバランスだったからなんです。画質というのは解像度だけではなく、色再現・高感度ノイズなど含め、立体感であったり空気感であったり、プリントして写真として飾った時に感じるすべてのことだ、というのが富士フイルムの概念なんです。当時それを満たしていたのが16Mだったんですね。
今回センサーが24M(2400万画素)になったことで1画素あたりの面積が小さくなりますので、常識的にいうと高感度は弱くなるのですが、そこはテクノロジーの進化で画素ピッチを小さくしても16Mの高感度性能以上のものができるようになりました。まず、そこが大きな変化点ですね。これがあったからこそ高画素化に踏み切ることができました。
もしこれができなかったら、やっぱり16Mだったと思いますよ。
24Mにすると当然解像力は上がります。それに加えセンサーがX-Trans配列ですと主に斜め方向の解像力が飛躍的に向上しますので画素数値以上の解像感が得られるというのは分かっていました。なので高感度性能などセンサー側の進化を待ってから24M化したということですね。また24Mにすると今までの1.5倍の情報量の読み出しなる、そこに時間がかかるようではAF性能であったり連写であったりに色々なところに影響がでます。これも画素数が増えたことによるネガなのですが、そこはプロセッサーを進化させることで24Mに画素数をアップさせつつ、性能も向上させることができました。
他メーカーのカメラを見てもAPS-Cセンサーに関しては現時点は24Mが上限かなと思うのですが、そこはどうなんでしょうか?
上野氏:そうですね。一部の海外メーカーでは28M機を出していますが、結局画素数も他との性能のバランスだと思います。デジタル技術は日々進化していますから、今後小さな画素でもより性能を上げられるなら24Mが限界ということは無いと思います。ただ、現時点で24Mが最良の選択なんじゃないかなと。連写性能など謳っている機種は20M前後に落としたりしてますからね、20〜24Mあたりが現在のテクノロジーだと丁度いいんじゃないでしょうか。
確かにフラッグシップ機でも画素数的には抑えた数値になっていますから、そこはどのメーカーもベストバランスを探っているということなんでしょうね。
上野氏:そうですね、結局、用途によって最適条件は常に変わるはずですから、色々なカメラを見てもいたずらに画素数だけを上げいているわけではなくて、そのカメラごとの用途に合わせてセンサーを選んでいるんじゃないかと思いますね。
Xシリーズが採用しているセンサーはベイヤー配列ではなくてX-Transを採用していますよね。そのことにより製品化するのが難しい点などありますか?
上野氏:ありますね。 一つは『読み出し』。一般的なベイヤー配列は2×2(赤1・青1・緑2)で色を感知・再現していますが、X-Transは6×6(赤8・青8・緑20)という複雑な配列で色を感知し、映像として見える色を再現しています。カラーフィルター配列が複雑な分だけ時間ですとか、プロセッサーのパワーが取られますから大変だったりしますね。
新たなフィルムシミュレーションとして「ACROS」が加わった他、粒状感を再現する「グレイン・エフェクト」も搭載されています。他社でも色調調整などの機能が盛り込まれてきていますが、フィルムメーカーならではの優位性はどのあたりにありますでしょうか?
上野氏:ご存知の通り我々はずっとフィルムを作ってきた会社ですので、今回のフィルムシミュレーション・アクロスはモノクロでの最高の質感表現を目指しました。
ネットや雑誌で拝見するとX-Pro1ユーザーの方はモノクロが多いんですよ。メーカーとしても定期的に国内外で「写真家ヒアリング」というのを行っているのですが、そこでもモノクロをより良くしてほしいという要望もいただいていました。これはX-Pro1だからこそ、よりモノクロへの要望があったと思うんですね。だったら後継機となるX-Pro2では是非モノクロのフィルムシミュレーションをやろうと開発の段階から決めていました。
なるほど、今回は前提にそれ(アクロス)があり、プラスでフィルムの粒状感も出そうということで『グレイン・エフェクト』が加わったんですね。
上野氏:はい。実はこのアクロスの特徴としてはグレイン・エフェクトをかけなくても粒状が組み込まれているんです。好みではありますが、オススメとしてはアクロスではグレイン・エフェクトをかけない方がいいかもしれませんね。
我々は感材を作っていたメーカーなので銀粒子がどういう画像の状況によってどう分布するのか、ハイライト・シャドウではどう粒状が変化するのか、というのを当然一番理解しているつもりです。
例えば、グレイン・エフェクトでは画面全体に、ほぼ均一サイズで粒状が再現されます。そうしますと、ハイライト部、シャドー部にかかわらず、エフェクトがかかることになりますが、これは銀塩プリントの粒状感とは違います。これをもっと銀塩写真に近づけるには、ノイズの乗るパターンや大きさをランダムにする必要があります。また、モノクロフィルムで撮られる方はわかると思いますが、ハイライトが白く飛んでしまえば、そこに粒状感は出ません。なのでハイライトにも粒状感が出るエフェクトは違和感があるという風になるわけです。
今回のフィルムシミュレーションで新たに加わったアクロスではハイライトに粒子は乗りません。
RAW現像ソフトで撮影後に粒子エフェクトをかけることもできると思いますが、そこもエフェクトという範疇だと思うんですね。良く出来ていると思いますけど、やはりフィルムとは違う。富士フイルムはフィルムメーカーなのでそこ(フィルムの粒状感)に限りなく近づけています。
こういう話をすると、なぜわざわざデジタルで言うノイズを乗せるのかと思うかもしれませんが、これが入ることによって、写真のリアリティであったり質感が出るということをフィルム時代から分かっているんです。本来アクロスというフィルムはISO100で超微粒子現像が特徴のフィルムなのですが、デジタル・アクロスはISO800以上で使うと一番いい感じの粒子が乗ってきます。それをモニターではなくちゃんとプリントした時にフィルムと同じとまではいいませんが、それに近いモノクロの質感を出せる。それが他メーカーさんとは違う強みです。
なるほど、単なるモノクロモードではなく、モノクロフィルムの特性を限りなく再現しているのがデジタル・アクロスということなんですね。
上野氏:そうなんです。ただのカラーエフェクトではないという事ですね。これはアクロスだけじゃなくて他のカラーフィルムシミュレーションでも同じように作っています。
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