先日自宅にてジーンズの整理をしていたところ、ポケットから洗濯済みの1万円札が出てきました。
「今日は自宅でのんびりと写真の現像でもして、夜はラーメンでも食べに行こう」と考えていたのですが、こうなると話は変わってきます。
取り出したるはスマートフォン。
もはや暗記してしまった番号へダイヤルし、オペレーターの方へ「伊豆大島行きの夜行船の予約をお願いします。等級は特2等で。帰りはジェットでお願いします。」
次の瞬間には防湿庫からEOS 5D Mark IVとEF35mm F2 IS USMを取り出し、しばし考えてサブ機のPowerShot G9X Mark IIもバッグへポイ。「旅行の準備」というにはあまりにも簡単なものです。電話から40秒も経つ頃には、支度を終えて玄関に立っていました。
さあ、出発です!
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電車で最寄りの駅まで来たものの、出港まで時間があるので、港区付近でスナップをして楽しみます。
久しぶりに使用したEF35mm F2 IS USMは、類まれなる立体感を持ったレンズなので、中距離にピントを置いての開放スナップが楽しくて仕方ありません。
夢中になって撮り歩いていると、夕日の時間になりました。いつもなら設定を色々と変えるのですが、今回はAWBにピクチャースタイル「オート」のままです。
EOS 5D Mark IVに搭載されているピクチャースタイル「オート」は、シーン解析能力が向上していて、夕焼けの赤がとてもよく出るのです。撮って出しのオート設定でも、素晴らしい表現を見せてくれました。
すっかり時間を忘れて楽しんでしまったので、そろそろ港に向かわなければ・・・。
名残惜しいですが、ゆりかもめに乗ってJR浜松町駅を目指します。
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さて、浜松町駅から徒歩7分。
伊豆諸島行きの船が出港するのは、竹芝桟橋と呼ばれる場所です。
今回私が乗る「さるびあ丸」は大型客船で、夜の便、昼の便がございます。
夜の便は深夜10時に出港し、レインボーブリッジをくぐり抜け、伊豆大島まで約8時間ほどの航海となります。
予算によって様々なクラスを選べますが、筆者は断然「特2等」がおすすめ。
比較的リーズナブルな価格ながら
・マットレスの敷いてあるベッド
・カーテンで仕切られたプライベート空間
・小物入れ
が揃っており、快適な旅が楽しめるのです。
慣れ親しんだ大型客船の「さるびあ丸」を待っていたら、ピカピカの新造船が入港してきました。
どうやら今年の6月に、新造船に切り替わっていたようです。
早速乗り込んでみると、船内にはエレべータが新設され、居室も快適になっていました。これはこれで素晴らしいのですが、筆者は前のさるびあ丸のデッキで潮風を感じるのが大好きだったので、少し寂しくもあります。
しばらく船内を探検していると、出港の時間になりました。
「ボォー」という汽笛と共に、船はゆっくりと岸を離れていきます。この音を聞くたびに、わくわくする筆者の前世はきっと船乗りでしょう。
東京タワーにレインボーブリッジ…。ゆっくりと流れる東京の夜景を思う存分撮影したら、明日の上陸に向け寝床に潜り込みます。
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島に到着しました。
今日の到着港は、島北部の岡田港です。
伊豆大島にはこの岡田港と、西部の元町港がありまして、波や天気の状態により使用される港が変わるのです。
今回の目的地は島の温泉施設なので、ここからバスに乗り込み、元町港を目指しました。
元町港から北へ向かうと、程近くに2つの温泉があります。
本当は2つとも入りたかったのですが、片方は営業開始が帰りの出航の1時間半前…。
こちらは泣く泣く諦め、もう片方の「温泉とプールが楽しめる複合リゾート」へ。
私は全く泳げないので、プールは利用せず温泉とサウナを満喫しました。
本日の天気は、晴れときどきふわふわ…。綿あめみたいな雲がしょっちゅう出来ては消えていきます。
日が昇り切ったころ、再びバスに乗りこみ三原山を目指します。
バスは急峻な山道をグングン上っていきます!
ついに到着しました。三原山山頂です!
伊豆大島に数ある観光名所の中でも、とりわけ大きな存在感を放つ三原山。
今なお生き続ける活火山のそれは1986年11月に噴火し、その際は全島民が島外避難するという一大事となりました。
山の東側には火山岩(スコリア)で覆われた、日本唯一の「砂漠」が存在しており、観光名所として名高い場所です。
三原山登山道路・山頂共にススキが満開でした。
鮮やかなビビッドブルーの奥に、伊豆半島が見えます。
山頂の茶屋で「明日葉ざるそば」を食べ、帰りはもう一つの温泉に立ち寄るため登山道を徒歩で下ります。
そんな折ふと横を見やると、広大な敷地内に与那国馬が放牧されていました。
ホースセラピーなどにも利用される日本在来種の与那国馬は、たいへん大人しい性格の馬です。
この日ものんびりと草を食み、座って、立って…を繰り返していました。
「かお」が大きい所がチャームポイントです。ちょっとアンバランスで、可愛らしいですね。
ちなみに船の関係で、温泉には10分ほどしか入れませんでした…。
急いでバスに乗り込み、岡田港に戻ります。
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さて、復路のジェット船出港時刻が近づいてまいりました。
名残惜しいですが、牛乳煎餅をしこたま買い込み、チケットを準備します。そして桟橋を見ると…。
もう船が接岸済みでした。このアングルで見ると、ひよこを真正面から見ているようで可愛らしく見えます。
ところが侮ることなかれ。この船は「ジェット船」という名前の通り、巡航時には水中に翼を展開し、海の「上」を走るのです。その状態を翼走(よくそう)と言い、船体は完全に海面から離れます。
そうなるともはや船酔いとは無縁。
通常の船の様なゆらゆらした揺れ方ではなく、スポーツカーの様な「ドンッ」という短い縦揺れに変わります。
伊豆大島から2時間かからず竹芝桟橋に到着するハイスピード船を、皆様も是非ご利用ください。
暑さが過ぎ去り、過ごしやすくなった今日この頃。
今こそ愛機を抱えて、旅をしてみてはいかがでしょうか。
追伸:今回の旅で一番ほっこりした出来事です。
今回使用した機材はこちらです。