【Leica】マップカメラが選ぶライカレンズ10 ~Leica ヘクトール L73mm F1.9~
2023年2月20日、Leica Boutique MapCamera Shinjuku は10周年を迎えます。
マップカメラのブログサイトであるTHE MAP TIMESでは、よりライカの世界を楽しんでいただけますよう、専門店スタッフによる関連記事や動画コンテンツを順次掲載してまいります。ぜひお楽しみください。
今回ご紹介するのは「Leica ヘクトール L73mm F1.9」です。
本レンズは1931年(諸説あり 1930年からという情報も)から1942年まで製造されており、Leicaの長い歴史を持つレンズの中でもごく初期に作られていたレンズです。
市販用の試作機として作成され、今ではオークションで億円超えする有名なLEICA 0型 (ヌルライカ)の製造が1923年~1924年頃ですので
そこから7年後に発売されたと考えると、改めて歴史の古いレンズだという事を認識させられます。
当時は人物撮影用として作られたといわれており、中望遠と大口径を掛け合わせたポートレートレンズとして非常に完成度の高いレンズです。
大口径F1.9より明るいレンズはクセノンXenon 50mmf1.5(1936年~)が登場するまで存在せず、そのような意味でも当時Leicaを代表する高価なレンズだったことが伺い知れます。
古い歴史を持つ本レンズには様々な特徴があるのですが
一番わかりやすいのはレンズの外観デザインのバリエーションの多さです。
シルバー×ブラック
ブラック×シルバー
ブラック×ニッケル
他にも外観がすべてブラックに塗装されたオールブラックや、全面シルバーのオールクローム
焦点距離リング下部の色によってもタイプが異なっており、その分別は7種類とも言われています。
非常に希少なオールブラック(ブラック×ブラック)
特にオールブラックは希少性が高く、市場でも滅多に目にすることができません。
マップカメラでは以前プレミアムコレクションとして販売しておりましたのでご紹介させていただきます。
多数の写真に加えて動画も掲載しておりますので、是非ご覧ください。
Leica (ライカ) ヘクトール L73mm F1.9 フード付 ブラックxブラック
このようにレンズのカラータイプだけでもバリエーション豊富な本レンズ。
外観だけでなく、製造年によってフォーカシングでレンズが回転するタイプや直進タイプ、レンズ上下がネジ式で止まっており、回転させると分離するタイプなど、レンズ構成は同じなのに多種多様な種類が存在します。
使用用途に合わせた仕様変更や改善が積み重なっていく過程がその種類の多さから伺い知れます。
そのほかにもじっくりとレンズを見比べてみると色々な所で細かな違いが見て取れます。
個体によって絞り指標のフォントが違っていたり
距離指標もmtr(メートル)とFeet(Germany記載)タイプなど、同じヘクトール 73mmでも様々な違いがあることが分かります。
レンズフードは本レンズ専用の「FGHOO」
フード単体で販売されていることは少なく、希少性の高い逸品です。
マップカメラで販売している商品にはフード付きも多く取り揃えていますので、フードが付属している個体のご購入をおすすめします。
フードは持ち歩き時、逆付けすることでレンズを覆う形ではめ込むことができ、その頭にかぶせ式キャップが付く仕組みとなっています。
1930年前半から既に合理的なデザインとなっているところにもLeicaの高貴な美学が垣間見れるような気がします。
外観の特徴点を簡単にお伝えしましたが、描写についても非常に特徴があるのが本レンズ。
この独特な映りに魅了されて本レンズを探されている方も多いのではないでしょうか。
今回はスナップ撮影を中心に使用してみましたので、写真も併せて紹介いたします。
本レンズが販売されていた当時はモノクロフィルムの時代ですので、今回はモノクロでの撮影も色々と楽しんでみました。
高級感溢れる車体もしっとりと艶やかな雰囲気に包まれています。
中望遠のスナップ撮影は久々で戸惑うかなと思っていたのですが、いざ撮影してみると抜き出したい画を大胆に切り取ることができ、どんどんシャッターを切りたくなってしまいます。
メキシコ料理店に飾られていた旗を撮影してみました。
風になびいてふわっと動くのですが、この旗は「Papel Picado(パペルピカド)」と言いメキシコ語で切り絵を意味するそう。
メキシコの大きな祭りである「死者の日」を筆頭に、クリスマスからイースター、独立記念日まで様々な場面で飾られています。
イベントごとに切り絵のデザインが異なっているのも面白いところです。
冬の花といえばツバキを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
絞り開放ではフワッとした描写ですが、花との相性は非常に良いように感じます。
滲みレンズらしいボケ味も魅力的です。
被写体と抜け感のある背景を狙っていくとじわっと滲むようなボケ味を味わうことができます。
イメージを膨らませてシャッターを切ると、良い意味でベクトルの異なる画が撮れて思わず「おっ」っと思わせてくれるのもこのレンズの楽しいところの一つ。
現代レンズにはない特徴的な描写に虜になってしまいます。
レトロな雰囲気の裏路地をモノクロで撮影すると、一気に昭和に戻ったような写りを楽しむことができました。
特徴的なレンズの描写はその場の空気まで和やかに包み込んでくれます。
夜の散歩をしているとキラっと光るイルミネーションが目に入り、前ボケ/後ろボケを取り入れながら撮影してみました。
LEDの性質も相まってか面白いボケ味が発生しています。
白いイルミネーションを撮影して拡大してみると…まるでミズクラゲのような形をした特徴的なボケです。
特定の条件下でしか発生しないのかもしれませんが、非常に興味深いボケ味です。
イルミネーションをアンダー露出で撮影すると、まるで沢山のクラゲが漂っているような写真を得られることができました。
個体によって様々な個性のあるレンズですが、撮影中にもこのような発見があるとより一層愛着が湧いてきます。
ヘクトール 73mmの滲むような描写はイルミネーションをより幻想的に演出してくれました。
1日を通して飽きずに撮影を楽しませてくれる本レンズ、これからもたくさんの魅力を伝えてくれそうです。
Leicaの中望遠レンズも様々な種類がありますが、特に雰囲気重視の方、特徴的な写りを体感してみたい方にお勧めの本レンズ。
是非手に入れて撮影を楽しんでみてください。