
【Leica】100年目のライカA型、今もなお現役
1925年に誕生したライカA型。世界初の35mmフィルムカメラとして、写真の歴史を大きく変えた名機です。
正式名称はI型ですが、本記事では一般的な呼び名のA型としてご紹介します。
100年を経た今、クラシックな佇まいとシンプルな機能美は多くの写真愛好家を魅了し続けています。
「100年前のカメラなんて、もう使えないのでは?」とは思うかもしれません。
しかし、適切なメンテナンスをしたライカA型は今でも十分に現役です。ただ”動く”というだけでなく、まるで現代のカメラで撮ったと錯覚するほど引けを取りません。
今回は、ライカA型を現代で使うための方法を紹介しつつ、その魅力や実際の使用感についてお話ししていきます。
100年前の名機が、今の光をどう写すのか——その答えを、一緒に探してみましょう。
私の手元にあるライカA型は、オリジナルの美しさを保ちつつ、現代のツールと組み合わせることで、今でも快適に撮影ができます。
その一例が、最新のデジタル露出計 AstrHori XH-2 との組み合わせです。
露出計を持たないライカA型にとって、XH-2 はまさに現代の「目」。これを使えば、最新のカメラと同じように、正確な露出設定を導き出すことができます。
真鍮製かつファインダーにも干渉せず、まさにこのカメラのための露出計だと感じました。
ライカA型はレンズ固定式で、当初はエルマックス(Elmax)やアナスチグマット(Anastigmat)といったレンズが搭載されていました。その後、改良が加えられ、エルマー(Elmar)5cm f/3.5が主流となりました。
1925年から1936年(ほとんどは1931年まで)の11年間にNo.130~No.71249 まで生産されています。上のカメラは新エルマー付きのメートル表記で最も多く生産されたシリーズです。
また、レンズ以外にも同一モデルの中で、『矢印のデザイン』『巻き上げノブ』『シャッターレリーズボタン』『底蓋』などのパーツが次々と変わっています。
現代のカメラでは個体によって見た目が異なるということありませんが、ライカA型では自分のカメラはどの世代のパーツが使われているのか?と調べていくとワクワクし、さらに愛着が湧いてくることでしょう。
ちなみに、エルマー(Elmar)5cm f/3.5には、19mmのレンズフィルターが使用できます。
パーツについては以前記事にもしておりますのでぜひご覧ください。
ライカA型のもう一つの魅力は、その地金の美しさです。ブラックペイントの下に輝く真鍮や、長年の使用によって生まれる経年変化は、まさに時代を超えた風格を感じさせます。特に使い込まれたA型は、塗装が剥がれた部分から金属の質感が現れ、味わい深い表情を見せてくれます。
また、シャッターボタンやスピードダイヤルの表記は、製造年代や販売地域によって微妙な違いがあり、コレクターにとっては重要な識別ポイントとなっています。オリジナルのシャッターボタンには独特の良さがあり、現代のカメラと比べて柔らかく、機械式ならではの感触を楽しめます。コトっと鳴るシャッター音がたまりません。
それでは実際に撮影した写真を見ていきましょう。
[フィルム:FUJICOLOR 100 スキャナー:GT-X830]
朝の新宿らしい透明感のある光が印象的な写真が撮れました。
影が落ちて美しく、歩道の円形タイル模様,、光と影のコントラストが際立っています。階調も豊かで、柱の立体感や路面のテクスチャがしっかり残っています。バスの色もはっきりしており、色乗りも悪くはありません。
かなり昔のカメラですが、こうして現代の風景をしっかり捉えられるのが素晴らしいです。
ファインダーは小さく覗きづらいですが、とても明るくスカッと抜けています。
撮影中に強い陽射しが差し込むシーンに遭遇することはよくありますが、デジタルカメラではハイライトが飛んでしまったり、暗い部分が潰れてしまうことが多いです。フィルムが持つ自然な色調が、現代のデジタルカメラとは異なる多様な豊かな表現を可能にします。
ガラスに反射した海まで描写しており、とても100年前のカメラとは思えないです。
ライカA型には距離計がないため、ピント合わせは目測になります。自分の身長や腕の長さを目安にすることで、およその距離感を掴むことができますが、やはり慣れるまでは少し難しさを感じるかもしれません。
撮影のコツは、若干手前にピントを合わせて絞って撮影する方法です。これにより、被写界深度が広がり、ピントが合っていない部分が少なくなるため、失敗を減らすことができます。
とはいえ、絞りを開いてピントを合わせてみたくなるのがこのカメラの魅力。ピントが思っているように合っていると嬉しくなります。
フィルムカメラで撮影する際、特にライカA型のようなシンプルなカメラでは、撮影枚数が限られているため、1枚1枚に対する意識が非常に大きくなります。36枚撮影して、その中で「これだ!」と思える写真が1枚でも撮れれば、大成功です。
デジタルカメラであれば何度も撮り直しが可能ですが、フィルムカメラではその瞬間を逃すことなく、1枚1枚を大切にしながら撮影しなければなりません。そのため、シャッターを切る時には、光の加減、構図、ピントなど、すべてに集中します。限られた枚数だからこそ、撮影そのものがより意義深く、満足感が得られます。
写真を撮る行為そのものが、ただの記録ではなく、ひとつの体験になります。
昔のカメラは使い方が難しいと思うかもしれません。
でも、実は機能が少ないからこそ、意外と簡単に使えます。ピントは目測、露出は勘や露出計で決める。このシンプルな仕組みが、撮影をより楽しいものにしてくれます。
まずはカメラを手に取って、シャッターを切る楽しさを味わってみてください。
そして、これまでよりも写真を撮ることが楽しくなっていただけたら嬉しいです。