【マップカメラ鉄道倶楽部RailMap】信越本線120周年に碓氷峠を歩く(その2)
信越本線開業120周年に碓氷峠を訪れた小旅行記の続きです。
写真を撮り、お弁当を食べながら碓氷峠の坂道を登ること約2時間。
日本最大の煉瓦アーチ橋「碓氷第三橋梁」(写真左)を見学した後は、再び来た道を戻ります。
坂道を2時間登った後の下り坂は押さえが効かず、知らず知らずのうちに早足になってしまいます。
改めて日頃の運動不足を感じた瞬間でした。
旧線と新線の分岐点の温泉施設まで戻り、ここからはトロッコ列車で山を下ります。
トッロコ列車を待つ間、新線のレールの行く先を覗いてみました(写真右)。
草刈り等のメンテナンスが続けられている様子が伺える分、使われていないレールの錆が寂しさを誘います。
しばらくするとディーゼル音を響かせながらトロッコ列車が登ってきました(写真左)。
かつて碓氷峠の線路保守に使われていたディーゼル機関車が今でも活躍していました。
トロッコ列車は鉄道資料館の「碓氷峠鉄道文化むら」内の駅に向かうため、乗車券の他に文化むらの入園券も
必要になります。トロッコ車両ですから乗り心地はあまりよくありませんが、峠をゆっくり下りながら浴びる
少し冷たい秋の風はとても気持ちが良かったです。
そして「碓氷峠鉄道文化むら」に到着。
最初に目に付くのは、やはり信越本線を代表する特急「あさま」として活躍していた189系車両。
国鉄時代の特急色に国鉄マーク入りで保存してありました(写真左)。
チェックポイントは何と言っても型式番号の前にある丸印(写真右)。これは碓氷峠を通過する際、専用電気機
関車との協調運転用の改造がされているという印で、俗に言う「横軽対策車」の目印です。
車内はもちろん(写真左)、運転席にも入れました(写真右)。
多少の傷みはあるものの大宮の鉄道博物館と比べ空いているのでゆっくり見ることができます。
検修車庫の中では、アプト式の電気機関車「ED42」も見ることができました(写真左下)。
連結棒で動輪を回す台車がとても特徴的です(写真右)。
このほかにも屋外展示コーナーでたくさんの車両を見ることができます。
何故ここにこんな車両が?と思える不思議な空間。バラバラにいろんな車両が展示してあって笑えます。
撮影を続けていると、脇の廃線跡を碓氷峠専用電気機関車「EF63形」が通過していきました。
トロッコ列車の線路の一部を使用しての体験運転との事でした。
是非やってみたい!と思ったのですが、予約制であることと、事前に学科講習(料金3万円)を受けた後での
実技講習運転(30分5千円)と分かり挫折。本物を動かすわけですから当たり前と言えば当たり前なのですが…。
ただ廃止から11年たった今もなお、整備され現役で動いている姿を見ると近いうち横川~軽井沢間での営業運転
が再開されるのではないかと期待をしてしまいます。
予想外のイベントで展示施設の全てを見ないうちにバスの時間がやってきてしまいました。
名残惜しいですが、またいつか来ることとして軽井沢へ旧信越本線を進むことにします。
バスに乗って約40分。無事に碓氷峠を越えて軽井沢に着きました。
バスを降りて最初に飛び込んで来た景色は、旧信越本線のホームの荒れ果てた姿。
その奥に長野新幹線のホームと新しく出来たプリンスショッピングプラザやスキー場が見えます。
手前と奥とのギャップが時代の流れを表しているようで、寂しく思えます。
ここからまた線路が始まり旧信越本線は続くのですが、軽井沢~篠ノ井(長野県長野市)間の65.1kmは第三セ
クターの「しなの鉄道」に移管されており、現状信越本線は横川~篠ノ井間で分断されていることになります。
第三セクターと言えども元は大幹線。立派な駅舎や通過する町並みを見ても地方交通独特の静けさはなく、以前
とさほど変わらない賑わいを感じました。これだとJRのフリー切符が使えなくなっただけの様な気がして、ちょ
っと損をした気分です。
使用されている車両もJRからそのまま移籍した115系。専用のカラーリング(写真左)になったものの、現在で
も中央線等で活躍している見慣れた車両です。
この他にもしなの鉄道では、かつての国鉄碓氷峠専用急行車両169系も活躍しています。169系はもうここでし
か見られなくなってしまった貴重な車両。日没の時間を迎えていましたが、どうしても169系に乗りたくて小諸
まで足を延ばしました。
お蕎麦が有名な静かな街には少し早いクリスマスのイルミネーションが(写真右)。
名物のお蕎麦を食べて169系の到着を待ちます。
日も暮れているのに何故そこまでして169系を待つのかと言うと理由があります。
しなの鉄道も信越本線120周年を記念して169系の色をかつての国鉄急行色に戻して(基本色は115系とほぼ同
じ)いたのです。東海道本線などで多く運行された緑とオレンジのツートンカラーで湘南色とも呼ばれているカ
ラーリングは上野~長野を結んでいた急行「信州」を思い出させてくれます。
実際、復刻カラーの列車は快速という格付けでしたが「リバイバル信州」号という愛称が付けられました。
リバイバル信州号(169系)の車内(写真左)。昔のイメージとだいぶ変わっていました。
特に中吊り広告が優等列車ではなくなった一般の車両であるという現実を突きつけます。
迫力のあった急行のヘッドマークとはいかないまでも、リバイバル信州号にもヘッドマークが付けられていまし
た(写真左)。また行き先表示や座席種別も専用のものが用意されました(写真右)。
こういう細かいこだわりはとてもうれしく、寒さに耐えて遅くまで粘ったかいがありました。
120年という長い歴史の中のほんの一割にも満たない、長野新幹線開業からの11年で信越本線は大きく変わって
しまいました。数回しか乗ったことが無いのに何故か懐かしく、そして変わることに抵抗を感じる不思議な路線。
それだけ人の心を引きつける魅力が景色の中にあったのだと感じます。
今後の長野新幹線の延長でさらに変わっていくと思われる信越本線。廃線跡を歩いて改めて見えてきた過去の偉
業や、廃線後もそれを維持してくださっている関係者の方の努力に感謝したいと思います。
使用機材:Nikon D700
Nikon AF-S ED80-200mmF2.8D
Nikon AF-S ED28-70mmF2.8D
Nikon AF ED14mmF2.8D