初めてのカメラ。 その12 ~ザイデルさん~
ルードヴィヒ・ザイデル
1800年代の数学者。
天文学者でもあった彼は望遠鏡の研究をする過程で「収差」というものを見つけたそうな。
そもそも「収差」ってなんでしょう?
写真を撮って画像を確認したときに
丸いものが楕円に写ったり、
被写体の輪郭だけが紫になったり
建物が膨らんだように歪んでしまったり…
こういう経験ないですか?
大まかにいうとこれ全部、「収差」なんです。
自分が何か間違った設定にしてしまったのかと不安になりますが
「レンズの性能」に依存するものがほとんどです。
収差の大きいレンズを使うと、撮り手がどう頑張っても収差は出てしまいます。
「初めてのカメラ。」なのにそんな難しいことを…と思ったのですが
レンズの話をするうえで避けられないのでお話ししておきます。
挙げていくとキリがなくなるので
今回はザイデルさんが見つけた代表的な「ザイデルの5収差」のお話。
・球面収差
レンズは基本的に球面なので、特に近距離からの光がまっすぐ入りません。
それにより光の結ぶ位置がずれて「にじみ」が目立つようになります。
この「にじみ」の原因が球面収差です。
「ソフトフォーカスレンズ」はこの球面収差をわざと残してふわーっとさせるレンズです。
球面収差が大きいレンズも「絞り込んで撮影する」とシャキッとすることが多いです。
また、レンズを作る段階で「非球面レンズ」を使用することにより
レンズの球面がなくなるので理論上はなくすことができる収差です。
・コマ収差
点光源に多く見られます。
「彗星のように尾を引く」ことから英語のコメット(comet)が
訛ってコマ収差と呼ばれています。
角度が付いて光が入ってくると発生しやすく
光が一点に結ばれる際に、本来結ばれるべき場所からずれた位置で結ばれることで
その像が尾を引いたようににじんでしまうものです。
大口径レンズでイルミネーションなどを撮ると出やすいです。
球面収差同様にレンズを絞ることで軽減できる収差です。
・非点収差
言葉通り「点に非ず」と書いて非点収差。
光がレンズを通る際に、縦軸と横軸とで光の焦点距離がずれることで
像の形が崩れる収差です。
「ザイデルの5収差」の中で唯一色の話が絡まない収差でもあります。
レンズを作る際に、縦軸と横軸の光がきちんと結ばれるように
設計をすることで理論上では無くせます。
これだけは使い手のスキル云々ではないところが残念ではあります。
・像面湾曲
中心部と周辺部で光の結ぶ位置がずれてしまう現象です。
中心にピントを合わせようとすると周辺がボヤーッと、
逆に周辺にピントを合わせようとすると中心がボヤーッとしてしまいます。
先ほどの非点収差とは密接な関係にあり、レンズの設計だったり
レンズ表面のカーブを正しくすることで非点収差とともに無くなるものです。
撮り手のスキル云々ではどうにもできないのでレンズ選びの段階で気を付けるのが大事。
・歪曲収差(ディストーション)
最後に誰でも一番最初に気付く「歪み」です。
広角レンズは外に向けて膨らんだり引っ張られたりすることが多いです。
これを「タル型」と一般に言います。
逆に標準・望遠レンズだと内側にへこんだように歪むことが多いです。
これを「糸巻き型」と言います。
この目で見てすぐわかる「歪み」の補正はレンズの世界において
永遠のテーマだと思っています。
非球面レンズを使ったり、レンズのカーブを補正したりと
あらゆることをしなければなりません。
これらの代表的な「ザイデルの5収差」が知られるようになってから
200年近く経とうとしていますが、未だにそのすべてを解決した
パーフェクトなレンズが作られるまでには至っていません。
もしかしたら技術的には可能なのかもしれませんが
発売されたところで、開発費やらなんやらに莫大なコストがかかり、
きっと一般庶民が手を出せる金額ではないのではないか…と思います。
これから先、もう数十年経てばそんな夢のようなレンズが世の中に現れるのでしょうか。
それを手にすることは出来ないかもしれませんが
そう思うだけでも夢があっていいですよね♪
…とただのカメラオタクのつぶやきになってしまいましたが
今日はこの辺で。
それではまた!
初めてのカメラ。シリーズのカッコイイバナーを作ってもらいました♪
↓今までの初めてのカメラ。シリーズは下記バナーをクリック!↓