故郷の空気
桜の花びらは春の強風で飛ばされ、桃色の景色はあっという間に鮮やかな緑に変わってしまいました。
気温もぐんぐんと上がり、早くも初夏並みといわれる日が出てくるほどに。
暖かくなってくると私は決まって水辺に行きたくなります。
昔から海や湖の近くで過ごしてきたからか、水が身近に感じられる
場所がとても落ち着くのです。
海を見るために横浜や鎌倉方面まで行ってもいいのですが、
都内でも身近に水の流れを感じられる場所があるのです。
この都市部のすぐ近くにある“島”が私のそんな欲を満たしてくれます。
今回はその島に至るまでのお気に入りのコースを久しぶりに歩きました。
地下鉄を出てすぐのところにある庭園。
広大な池の周りは岩と植物の調和が素晴らしく、水面の反射とあわせて美しい造形美を見せてくれます。
この庭園で有名な桜はまだかろうじて残っていましたが、私はこの池の水面を眺めているほうが好きです。
庭園から出てしばらく行くと、運河から別れてくるいくつかの川が通っており、漁船や屋形船が何隻か泊められていました。
随分と長い年月を経ているであろう一隻の船。
何度も運河に出ているのか、もしくはここにずっと繋がれたままなのか。
どちらにしてもこの船の来歴をいろいろと想像してしまいます。
大通り沿いに進んでいくといよいよ視界が開け、同時に潮の香りが漂ってきます。
一息ついて運河の向こう岸に目をやれば、巨大なビルやマンションがいかにも人工的な感じのする平坦な地面の上にそびえ立っています。
水面から生えるように何本も伸びる建物の無機質な姿は、何か異様な感じさえします。
そのまま橋を渡れば島に到着です。
水面の浮島に留まる鳥。
島の神社の境内。
あえて開放で撮れば周辺光量が落ちて中心の被写体の存在感が引き立ちます。
島の中を歩き、中央が開くことで有名な橋の方へ。
夕暮れ時にここへ来ると市場方面に沈む夕日を見ることができます。
この時間にも港には多くの人や車が行き交っていました。
自分の生まれ育った土地に住んでいなくても、故郷と似た空気を感じる場所はあると思います。
ようやく暖かくなって気持ちが緩んできたこの季節に、皆さんもそうした心の落ち着く場所を歩いてみてはいかがでしょうか。
Nikon (ニコン) D800E ボディ
+Nikon (ニコン) Ai AF Nikkor 50mm F1.4D
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