皆様、フィルムはお好きでしょうか。
筆者はフィルム写真を始めたとき、このフィルムはどんな写りをするのだろう、と雑誌やネット記事等いろんなものを読み漁りました。
好みのものを見つけては試写し、前回使ったものとここが違うと一喜一憂したり、大変楽しかった覚えがあります。
「銀塩写真列伝」ではそんなフィルムに焦点を当て、各フィルムの特徴などを作例とともに紹介し、フィルム選びの助けとなることを目指しています。
9月18日から休暇を利用すれば最大9連休というシルバーウィーク。
フィルム入門の方も、すでにお使いの方も遠出や旅行ができない中ではありますが、
ゆったりとフィルムカメラで撮影した気分に浸っていただければ幸いです。
※今回掲載している写真は緊急事態宣言下での撮影は避け、スタッフが過去に撮り溜めたものとなります。
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今回ご紹介するのは、FUJIFILM PRO160NSです。
※2021年 10月現在、惜しまれつつも生産完了となりました。
ROLLEIFLEX 3.5F(Carl Zeiss Planar 75mm F3.5)
カラーネガフィルムで、35mm判にはなく中判カメラ用120フィルム(ブローニーフィルム)のみ販売されています。
中判カメラは、ハッセルブラッドや二眼レフのローライフレックスを主に使っています。
これら6×6判スクエアフォーマットのカメラだと、フィルム1本につき12コマ撮影できます。
以前は、FUJIFILM PROVIA100FやVELVIA100などのリバーサルフィルムを多く使っていました。
5本パックの価格がネガフィルムとそれほど大きな差がなく、プリント代も含めて考えると現像から上がればそのまま鑑賞できるリバーサルの方がお得だし楽だなと無精者の筆者は考えていました。
しかし昨今はフィルム代だけでなく現像代、特にリバーサルの現像価格が顕著に上がってきてしまい、フィルム消費の多い身としてはネガで撮影してフィルムをスキャンする方法に移らざるを得ない状況に…
そんな時、単価の安いPRO160NSは強い味方。とはいえ勿論、色味など写りに納得がいかなければ、いくら安価でも常用とするわけにはいきません。
FUJIFILM公式ページでの説明によると、プロのスタジオ撮影に適したポートレート用フィルムと記されています。
ずっと以前に「PRO」の付いていない「160NS」というフィルムを試した記憶があるのですが、その時の印象は鮮やかさがなく地味な、良くも悪くも特徴に乏しいフィルムというものでした。
上の写真は、昨年9月に神奈川県の葉山マリーナに行った時のものです。
何よりも印象的なのが、空の青の色合い。まさに現地で見たままを再現していると感じました。
遠くに見える入道雲の陰影や江の島の島影もきちんと描写され、手前のヨットも白トビすることなく細かな部分まで表現されています。ちなみに、左から2番目が私の船(…なんて、嘘です。)
…写真を見ただけで、あの時の暑さや肌に感じる潮風がよみがえってくるようです。
もしVELVIA系で撮っていたら、空の青などはもっとどぎつい青になっていたと思われます。
派手になることなく、それでいて鮮やか、発色の傾向はPROVIA100Fに近いような気がします。バランスの取れた自然な色味で、先の「特徴に乏しい」は全く当てはまりませんでした。
ROLLEIFLEX 2.8F(Carl Zeiss Planar 80mm F2.8)
2枚目は、浅草は浅草寺(せんそうじ)で開かれたほおずき市、4年前の写真です。
こちらも夏の強い日差しをたっぷり浴びたほおずきの鮮やかな色が、非常によく再現されています。
テカリ具合やピント合焦部分の細かなシワまで描写され、まるで目の前にあるかのように感じられます。
HASSELBLAD 500C/M + Carl Zeiss Planar C80mm F2.8
文京区にある湯島天神の梅です。春始めですが花冷えのする曇り空で時刻は夕刻、暗くなり始めた頃だったと思います。
実はこの時の写真がプリントされたのを見て、「このフィルム、結構いいじゃん!」と思うようになりました。
というのも、うすら寒い曇りでさらに暗くなりかけの頃という色のない時間帯の空気をとても正確に捉えていると感じたからです。
先に書いた「地味」というのとも異なる、まさに忠実な色再現力。
その中で咲き誇る梅の白だけが、ただ一つ眼に明るさをもたらしてくれる… その時感じた寂しさまで表されている気がしました。
また、このフィルムのISO160という感度にも好感が持てます。
もともとスタジオでのポートレート撮影を意識しての感度設定とも思われますが、風景撮影においてもISO100より約半段高感度というのは意外と役に立ちます。
被写界深度の浅い中判カメラ、この半段が絞りを深めたり、日が翳ってきた時のシャッタースピードの確保につながり、何度救われたことか。
ただフィルムを入れ替えた時やライカなど別のカメラを使う時、露出計の感度設定を直し忘れることもしばしばですが…
HASSELBLAD 500C/M + Carl Zeiss Planar C80mm F2.8
同じくハッセルで撮影。冬場の晴天、この時期特有の低い角度からの強い日差しが、壁に蛇口の影をはっきり写し出していたのを撮影。
見ると、壁面の模様?がハイライト部もシャドウ部もしっかり残っています。リバーサルなら飛んでしまったり潰れてしまったりしていそうな状況。
ROLLEIFLEX 3.5E2(Schneider-Kreuznach Xenotar 75mm F3.5)
天気のよい春先、とある神社の御神木です。
こちらも日差しを受けたしめ縄・木肌ともにハイライト部もきれいに描写されています。
大きなフォーマットならではの被写界深度の浅さ、その中でピント合焦面の細密な描写表現は、このような奥行きのある被写体を撮影した時の醍醐味といえます。
ずっと「忠実な色再現」といってきましたが、こんな写真も撮れるという例を。
ROLLEIFLEX 4.0FW(Schneider-Kreuznach Super-Angulon 50mm F4)
往年の銘機「ワイドローライ」の復刻モデルともいえるローライフレックス 4.0FW。
シュナイダーの広角レンズ スーパー・アンギュロン 50mm F4にローライ独自のHFTコーティングを施し、発色豊かなレンズに仕上げています。
晩秋の新宿の風景ですが、イチョウの黄色と空の青さのなんと濃厚なこと!
先にPROVIAの発色に近いといいましたが、この写真を見る限りVELVIAを思わせる彩度の高さです。
ROLLEICORD III(Schneider-Kreuznach Xenar 75mm F3.5)
こちらはローライ二眼レフの普及機ローライコードによる撮影。
搭載レンズのシュナイダー クセナ― は、ローライフレックスのプラナーやクセノタールに比べ、色乗りの淡いレンズですが…
この彩度の低さは、先日生産完了になったFUJIFILM PRO400Hを彷彿とさせます。
この2枚、同じフィルムで撮影したとは思えない違いが出てしまいました。
「忠実な色再現」だけでなく、レンズの特性も忠実に再現してくれるようです。
さて、こうなるともっとたくさんのカメラ・レンズで撮影してみたくなってしまいます。
さらにもっといろいろなシチュエーションで…
振り返ってみたら、「ポートレート用フィルム」と紹介しておきながら風景写真ばかりになってしまいました…
今度は人物撮影にも活用してみたいと思います。
そうなると120フィルムだけでなく、是非35mm判でも発売してほしいフィルムです。
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