銀塩写真列伝 Lomography 100/36 Earl Grey B&W編
Lomography 100/36 Earl Grey B&W編
皆様、フィルムはお好きでしょうか。
筆者はフィルム写真を始めたとき、このフィルムはどんな写りをするのだろう。と雑誌やネット記事等いろんなものを読み漁りました。
好みのものを見つけては試写し、前回使ったものとここが違うと一喜一憂したりと大変楽しかった覚えがあります。
今回の「銀塩写真列伝」ではそんなフィルムに焦点を当て、各フィルムの特徴などを作例とともに紹介し、フィルム選びの助けとなることを目指しています。
世の中には期限の切れたフィルムを含めたくさんのフィルムがありますが、今回の連載ではマップカメラでお求めいただけるものに焦点を当てご紹介してゆきたいと思います。
例年はシルバーウィークでにぎわう頃ですが、今年は4連休となりました。
今年は一味違った過ごし方になるかと思いますが、フィルム入門の方も、すでにお使いの方も楽しんでいただければ幸いです。
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紅茶の種類として有名なアールグレイ。
アールは伯爵という意味で、グレイは人の名前。グレイ伯爵、という意味になるそうです。
由来は諸説あり、グレイ伯爵が考案した、とか、グレイ伯爵お気に入りの中国茶に似せた、とか、その他様々。
今回は、さわやかなベルガモットが香る紅茶の名を冠した「Lomography 100/36 Earl Grey B&W」をご紹介します。
以前も他のブログで少しお話したことがありますが、私はたまにこのフィルムをテスト撮影に使用します。
理由は簡単で、比較的お安いのと、さっさと自家現像をしてちゃんと撮れているかを確認したいからです。
富士フイルムの現像液ミクロファインで、気持ち現像時間短めで現像すると丁度いい塩梅で仕上がってきます。
3本パックで2000円と少し、というところは大きな魅力です。
さて、そんな「Lomography 100/36 Earl Grey B&W」ですが、写りも侮れません。
少し手ブレしていますが、近所の八百屋さんで買い物ついでに撮りました。
モノクロの写真、というよりは、グレーによって作られた写真、と言ったほうが私はしっくりくるかもしれません。
黒や白は勿論、カラーから彩度を抜き去った後の中間に潜む灰色を余すことなく適切な滑らかさで変化させられているからだと思います。
微妙な明度の差を極限まで描写できるため、写る世界にカラーで見る以上の厚みすら感じられます。
使用したカメラは「Argus C4」です。
あの四角いお弁当箱カメラで有名なArgusによって作られた、打って変わって丸みのあるレンズ固定式フィルムカメラです。
この後に「Argus C44」が発売されますが、レンズ交換ができるようになった以外に大きな変化はないようです。
どちらも持っていますが、特にC44の独特のレンズデザインは心を擽ります。かっこいいのなんのって…
お話が横道に逸れてしまいました。実によく写るレンズが付いたカメラです。
フィルムの風合いを楽しむのにもぴったり。
思いっきり絞って快晴の空をややアンダーまで落としました。
夏を前にすくすくと育った葦の葉一枚一枚、茎一本一本を緻密に描写できています。
絞ればここまで光を歪ませずに持ってくるレンズと、その光に応える力を持ったフィルムの両者があってこそのものでしょう。
確か撮影時は背景を白く飛ばさず、雲も見えるように撮りたいと思っていたはずですが、彩度なくして空の魅力を表現するのは私にはまだ少し難しかったようです。
前述したようにこの日は快晴でした。
少し陽は傾きかけていたとはいえ、明るさに大きく差のある景色をこれほどまで残せる力に驚きました。
撮影時は、黒潰れもやむなしと思って撮っていた筈なのですが…期待以上です。
開放時は中心部の描写こそくっきりとしているものの、周辺部に関して少し像が流れる傾向があるこのレンズですが、
モノクロで写すことによってその歪み、滲みさえも面白く見せる効果として不快感を低減してくれるような気がします。
四隅に暗く影が落ちるレンズが大変好みですが、このような表現で魅せるのもいいものです。
レンズ技術の発達しきっていない時代のレンズほど、周辺部やピントの合っていないボケの部分に味が出るため、
モノクロという落ち着いた色の条件で画をまとめつつ、このフィルムのように豊富な階調で表現する。
そうすればより、一つ一つのレンズの味を楽しめるかもしれません。
ちょうどこの頃は自家現像を始めたばかりで、家の中の写真が何枚か残っています。
まだまだ慣れていなかったのか、スキャンした時のチリが多く残っています。今見ると少し恥ずかしいです。
日常を気楽に、情緒的に残したいという気持ちに応えてくれるフィルムでした。
こってりとした高コントラストな仕上がりではないので、明と暗、白と黒、を強く対比させる作品には少し不向きかもしれませんが、
余計な手を入れることのない、素直に色を抜き取った被写体を見せてくれるので、癖を気にせず使っていけそうです。