AF調整ツール Datacolor『SpyderLensCal』の紹介
デジタル一眼レフカメラ等、大型センサーや豊富な交換レンズを有する機材においてレンズ絞り開放F値付近での大きなボケの美しさ、
現実では視認できない空気感というのは誰しもがハマり込む魅力があります。
ただ、レンズの絞り開放付近といえばカメラやレンズ個体特有の相性や、レンズの光学特性上やむをえないピントずれ。
さらには奥行きのある被写体のAFセンサーでの捉え方などでもバラつきが出る可能性もあります。
開放からピントがビシバシ決まる…大口径レンズであればあるほど難しいのが実情です。
フィルムからデジタルに移行が行われ、さらにはデジタル一眼レフカメラも35mm判センサーの2~3000万画素超えのモデルが登場。
被写界深度の浅さとデジタルデータの取扱上たやすく拡大表示でのチェックができるようになったことも頭を悩ませている要因でしょう。
もちろん苦手なことは忘れ、手持ちのレンズのパフォーマンスを安定して発揮できるおいしいF値を使いこなすのもひとつの考え方。
ですが、どうしても人は欲張りです(笑)
開放F1.4に設定ができるのであればその絞りでのAF精度も求めたいですし、被写体や好みにもよりますが、開放の柔らかさや風合いよりもシャープでできるだけコントラストも高く…と望む方も多いのではないでしょうか。
今回紹介するデータカラー社の『SpyderLensCal(スパイダーレンズキャル)』はカメラのAF微調整機能を使用して、効率よくレンズのピント調整を行うためのツールです。
“Spyder”シリーズといえばモニターキャリブレーション用の測色器のほうが浸透していますが、こういったAF調整のターゲットツールに加え撮影後のカラーやホワイトバランス調整用ツールなど充実しております。
いずれもデータの精度や、編集作業の効率化に役立つものとなっておりますので随時ご紹介できればと思います。
プラスチック製で軽く持ち運びや収納性に優れ、下の写真のように折りたたんだ状態で携行できます。
使用時にはターゲットの模様の部分を起こし、ものさし状のものを立てかけ固定をして使用します。
正確な測定のため三脚ネジ穴、水準器を装備。
調整のため撮影のセッティングを行います
・ターゲットの面とカメラの撮像面を並行にすること
アオったりしている場合は精度が出ずバラつきますので注意です。
キーボードなどをターゲットにナナメに撮影をして確かめる場合もあると思いますが、AFセンサーは平面に配置されているため奥行きは判別できません。
・撮影距離は一番よく使う距離で
カメラ内での調整はレンズ毎に一定値でかけるものが多いので、
結局は出番の多い撮影距離での精度を意識します。
画角にもよりますが、大方の撮影距離で被写界深度内の誤差に収まると思います。
・撮影倍率によってターゲットを選ぶ
白/黒の正方形が4つ交わっている点にピントを合わせます。
画角が広い場合は大きいものを、接写に近い場合はものさし横の小さいターゲットを選びます。
今回のカメラとレンズでは、EF85mm F1.8の最短撮影距離85cm付近で撮影。
EOS 5D Mark IIIにはAF測距点を小さくする“スポットAF”に切り替え、ものさし横の小さいターゲットに合わせて撮影しています。
カメラによってメニューの位置は異なりますが、概ね以下のようになっています。
※EOS 5D Mark IIIの場合
AFメニュー内の“AFマイクロアジャストメント”より、レンズごとの調整を選択。
カメラと合焦点のイメージのスケールが出ますので、後ピン気味の場合はカメラ側(マイナス方向)へ矢印を移動。
前ピン気味の場合はカメラから遠ざけます(プラス方向)。
こちらのカメラではズームレンズのワイド端、テレ端それぞれで補正が可能です。
テスト用に撮影した画像
ちょっと判定不能なので、以下に調整前と調整後の目盛り部分の切り出し画像を表示します。
※未調整状態(目盛り0)
軸上色収差で色にじみが見られますが、よくみると後部5mmの目盛りのコントラストが高いです。
※未調整状態(目盛り-5)
色にじみなどでわかりにくいですが調整前、-5調整後どちらも“0”の目盛りは被写界深度内なのがわかります。
被写界深度が紙切れ1枚レベルの薄さであればピークのみが目視できるはずですが、このくらいの被写界深度がある場合は“0”目盛り前後の目盛りのコントランストを参照します。
未調整で撮影した場合は+1mm(後側)の目盛りが濃く、-1mm(前側)は薄くなっています。
カメラのAF調整機能で“-5”の補正を加えた調整済みの画像では+1mm、-1mmの目盛りが同等の明瞭さになっています。
※ある程度の距離、被写界深度が深い場合の見た目の被写界深度は合焦点の手前側より奥側に深いものです。
この調整の際はそういったことは考慮しなくて問題ないです。
補正前(左)、補正後(右)のカメラ設定画面はこちら。
それでは試しに調整済みのレンズEF85mm F1.8の開放絞りF1.8で撮影をしてみます。
私は娘の写真ばかり撮っていますが、よくピントを合わせる手前の目のまつげのシャープネスでピントの当たりはずれを見ています。
※全体画像
※ピントを合わせた付近切り出し
バッチリ!!
その後も撮り続けていいますが、普段撮影する範囲であれば開放から非常に切れの良いレンズに感じています。
もともとは開放F値では柔らかめの描写…と思い込んでいましたが、実は本来の性能は発揮できていなかったのかもしれません。
メーカー各社AF精度や制御に非常に配慮をしており、基本的には調整は不要なはずです。
それでももしかしたらお手持ちのレンズの中で本来の実力が眠っている場合もあるのかもしれません。
そういった不安や期待を抱いた方は、ぜひご使用頂ければと思います。
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