日常にスパイス 09
最近、加速度的に、時間が早く経過していくように感じます。
「あぁ、2018年ももうすぐ終わりだなぁ」なんて考えていたら、
いつの間にか、年が明けてすでに2週間も経過してしまいました。
昨年は、Z7,Z6が発売し、AF-S 500mm F5.6E PF ED VRや、各種Zマウント用レンズなど、
Nikonを愛してやまない私にとっては、そのNikonを存分に堪能できた一年でした。
その上で、新たに今年の抱負も設けるとすれば、「もっとNikonを知り尽くす」です。
「昨年とそんなに変わらないじゃあないか」なんてツッコミが飛んできそうですが、
Nikonという沼の、深い深い深淵へと繋がるきっかけになるような記事を書けるように、
一年努力して行く所存でありますので、どうぞよろしくお願いいたします。
さて、そんな新年一発目のスパイスは、AF-S 105mm F1.4E EDをご紹介いたします。
Nikon伝統の設計思想を引き継ぐ、”破綻しない写りのレンズ”
2016年に発売したAF-S 105mm F1.4E EDは、焦点距離を望遠域の105mmとしながら、大口径F値にて使用することを可能としたレンズです。
通常、レンズを大口径化し、F値を明るくしようとすればするほど、
様々な収差を伴い、開放値では画質が著しく悪化してしまうことになります。
とりわけ、大口径レンズにおいて代表的な収差にサジタルコマ収差というものがあります。
大口径レンズを開放値で撮影するときに、画面の四隅の点光源が羽を広げたようなフレアを伴ってしまう収差なのですが、当105mmF1.4のレンズは、これを良好に補正しています。
それ以外の諸収差も、光学設計や、EDレンズ(特殊低分散ガラス)の使用によって良好に補正させており、開放からどんどん使って行くことができます。
(F1.4 ISO160 SS1/2000)
Nikonが伝統的に受け継ぐ光学的な設計思想の中に、「三次元的ハイファイ(高再現性)」というものがあります。
これは簡単に言えば、実際の被写体の像を写真的に、高再現にて写し込むというような概念を指します。
近年、写真において、ボケという概念は大変浸透し、中には「一眼の写真=大きなボケ」という感覚を持っている方もいるほどです。
また、今や「ボケ(BOKEH)」は世界で通じる言葉ともなりました。
そういった潮流の中で、様々なメーカーがレンズのボケ味に着目し、開放F値が明るいレンズで撮影した際に、良好なボケが得られるようなレンズの製作をはじめました。
そのようなレンズの中には、諸収差を開放から徹底的に抑え込み、ピント面は非常に高いシャープネスを誇りながらも、非常に大きな玉ボケを生み出すようなレンズなどもあります。
(F1.4 ISO400 SS1/60)
しかし、「ピント面はカリカリ、ボケは巨大な玉ボケ」というようなレンズが、こと「再現性」という視点において、必ずしも優秀な設計であるというわけではありません。
「三次元的ハイファイ」‒NikonのF1.4クラスのレンズの場合では、ピント面と前後のボケになだらかな段階を設けることによって、撮影時に立体感を得ることができます。
例えば、ピント面だけ極端にシャープで、ボケは綺麗。この場合、アウトフォーカス部からピントのピークまでの”つながり”が弱いと、ピントが合った被写体の背後に急に巨大なボケが登場してしまうわけですので、立体感が欠如した写真になってしまうというのです。
Nikonは、フィルム時代には多くのユーザーから「NIKKORはシャープに写る」という評価を得てきたメーカーですが、シャープな写りを求めるがゆえに、ボケにも大変こだわってきたメーカーでもありました。
ピント面では、開放から実用に耐えるシャープネスが必要ですが、ボケ味が良くなるというのは、端的に言えば収差をある程度残存させるということにもなります。
このシャープネスとボケ味のバランスの調整は、困難ながらも重要な要素です。過去発売されたDC NIKKORというもので、撮影者が、自分でボケ味を調整できる機能を持ったレンズなんかもあります。
今現在ラインナップされているFマウント用NIKKORのF1.4シリーズなどは、様々な、使用する上でのバランスが、綿密に計算されたレンズなのです。
その中で新たに登場したAF-S 105mm F1.4E EDは、Nikonが紡いできた思想の一つの答えとして、ラインナップに存在しているように感じます。
(F1.4 ISO400 SS1/8000)
当レンズは開放において、ピント面は、バキバキと形容されるほどシャープなわけではないですが、
決して「甘い」と感じるようなことはない、そのような写りになっています。
開放だとわずかな軸上色収差があり、グリーンなどがハイコントラスト部分に少し乗りますが、1~2段絞るだけで改善します。
収差の出方は、多少AF-S 85mm F1.4Gに通じるところがありますが、それに比べてもやはりボケの量がとても多く、不思議な感覚を抱きます。
(F1.4 ISO400 SS1/1250)
ご覧の通り、開放でも歪曲が少ないことがわかります。
また、コントラストもほどほどに抑えられているため、こういった暗所での撮影でも、被写体のディテールが損なわれることはありません。
(F2.2 ISO400 SS1/50)
上がってきた画を見て、純粋に「楽しい!」と感じます。
他の機材だったらスルーしてしまうような、なんでもない被写体でも、105mmという選択的な焦点距離と、浅い被写界深度が相まって、ついついフレーミングしてみたくなってしまいます。
(F1.4 ISO100 SS1/250)
散策していたら、小雨が降ってきました。
高所から俯瞰で切り取ってみます。
(F1.4 ISO80 SS1/4000)
最短撮影距離は1mなので、「寄れる」というレンズではありませんが、浅い被写界深度を活かして、ある程度マクロ的な使い方も可能かもしれません。
(F6.3 ISO400 SS1/2500)
雨上がり、なんと空に虹がかかっていました。
普段フォトジェニックなものを撮るのに慣れていないので、もたつきながら、少し絞り込んでシャッターを切ります。
この描写を見て、遠景も問題なく撮影できる優等生レンズだと再認識しました。
様々な分野で、価値を発揮する一本
Nikonからは既にF1.4のオートフォーカスレンズが何種類も発売されています。
どれも開放でのシャープネス傾向は控えめで、少しだけ甘さを残しつつ、ボケ味は全域で非常に美しく、また、絞ればシャープで遠景でもこなせるレンズばかりです。
そんな中、このレンズを買うメリットとは。
私は、Nikonが好きなオタクなので、このレンズを通してNikonの抱く思想を体感できると思うだけでも、価値があると感じてしまいますが、客観的に見ても、これだけの大口径を実現しながら、フィルター径82mmで手持ちでも難なく撮影できる大きさということに、まず価値があります。
単純なボケ量で考えて見れば、200mm F2という大型レンズクラスの性能に迫るものなので、それを体感する手段としては、ベストな回答の一つだと思えます。
色々言葉で語ることは難くありませんが、このレンズは、ぜひ体感していただきたい部分が多くあります。
描写を見れば、あなたもきっと虜になるはずです。
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