【FUJIFILM】X-T4 インタビュー Vol.1
フィルムカメラのようなクラシカルで小柄なボディ、「写真の色が素晴らしい」と賞賛されるフィルムシミュレーション、ミラーレス機の先端技術を盛り込んだ高機能と高性能。富士フイルムのミラーレス機を牽引するX-Tシリーズの最新モデル『X-T4』がついに発表されました。今回もその魅力に迫るべく富士フイルム株式会社・上野氏にインタビューを行いました。『X-T4』とはどのようなカメラなのか、そしてX-Hシリーズに関してなど興味深いお話もいただけましたので、ぜひご覧ください!
好評だった「X-Pro2インタビュー」 「GFX 50Sインタビュー」 「GFX 50Rインタビュー」に続き、今回は新製品『X-T4』についてお話を伺わせていただきます。よろしくお願いいたします。 『X-T4』が発表されると聞いた時、多くのユーザーから期待の声と、センサーやプロセッサーがなぜリニューアルされないのかという疑問の声もあったと思います。その点を踏まえて、本機の魅力を語っていただけますでしょうか。
上野 氏: まず、『X-T3』の登場から約1年半、その期間でセンサーとプロセッサーをリニューアルする必要性はない、というのが私達の考えでした。確かにセンサーとプロセッサーはユーザーの皆様も期待と注目をしているデバイスなので、私達としてもその期待に応えられるよう、変える時には大きな進化(リニューアル)にしたい。でも、そうしようと思ったら、やはりある程度の開発期間が必要です。さらに言えば、たった1年半という期間でリニューアルが必要なほど、私達の第四世代デバイスの能力は低くないと考えています。ですので『X-T4』の企画をスタートさせた段階で、センサーとプロセッサーは現行の第四世代を継続して使用することは決めていました。
多くの方に聞かれるのですが、『X-T3』の性能が現代に要求される性能に見合わなくなったからモデルチェンジしたのか?というと、そうではありません。お陰様で『X-T3』はX-Tシリーズの中でもハイペースで販売台数を伸ばした機種で、今でも撮影の第一線で活躍できる性能を十分に持っています。その状況のなかで、多くのXユーザーから出されていた要望というのがボディ内手振れ補正機構でした。『X-H1』には搭載していたのに、後から出た『X-T3』には入れませんでしたから、やはりユーザーから見たら「なんで(技術が)あるのに積まないの!?」というのがあったと思います。もちろん、それには理由がいくつかあったのですが、いずれにしても『X-T4』の企画を開始する時点で外せない進化部分として手振れ補正機構を搭載しようということは決定していました。
名称を「X-T3s」でもいいんじゃないかというご意見もいただきましたが、メインデバイスを変えないとモデルチェンジじゃないのかというと、私達は違うと思っています。確かにそれらを変えれば大きなモデルチェンジにはなりますが、カメラの進化はそれが全てではないし、先ほども言ったように今搭載しているX-Processor4にはまだまだ色々な可能性があって、さらに開発期間とコストを掛ければ、新たに出来ることや余力があることは分かっていました。今回の『X-T4』では240fpsの超スローモーション撮影やブリーチバイパスのような、かなり凝った映像表現も作り出すことが出来る。同じプロセッサーを積む『X-T3』には出来なかったことが出来るようになるわけですから、私達としてはその伸びしろのあるX-Processor4を継続して使用することに何の疑問もありませんでした。2600万画素のX-Trans CMOS Ⅳに関しても、高解像力と高感度性能のバランスに優れたセンサーで、プロ写真家の皆様からも大変高評価をいただいておりますので、このまま継続させようということになりました。
なるほど、確かに『X-T3』に搭載されているセンサーとプロセッサーは高性能ですから、今回はチューニングで高性能化したという解釈ですね。では、いま話に出た『X-T4』の焦点とも言える“手振れ補正”についてお話を聞かせてください。
上野 氏: 例えば風景写真でいえば、昨今三脚禁止の場所が多くなっていると聞きますし、色々な理由で手振れ補正に対するニーズは増えています。手振れ補正が無くても撮れるのなら、それに越したことはないのですが、消費電力やカメラのサイズ、重量、そして画質に対する影響が小さく、それらが許容範囲内であれば、もちろん搭載して悪いことは何もないと思います。『X-H1』を出したときは、ある程度サイズや重量が大きくなることを見越して、ボディやグリップを大きくしつつ、画質は譲らないというコンセプトで開発をしました。私達としても初めてのボディ内手振れ補正搭載機だったので、念には念を入れてしっかり作った結果、あのボディサイズと重量になったのですが、『X-H1』はその優秀な手振れ補正や使い勝手を求める方に選んでいただけるように作った機種なので、それはそれでよかったと思うのです。しかし、今回の『X-T4』にはその理屈は通用しません。X-Tシリーズは私達の主力機で、小型軽量なボディにフラッグシップモデルとしての高機能が搭載されているのが特徴であり最大の魅力だと思っています。もし小型軽量という特徴を無くしたらX-Hシリーズが出来上がってしまいます。私達としてはX-Hシリーズは引き続きTシリーズとは違うコンセプトで今後も継続して行こうと思っていますので、そこは絶対に差別化を図らなければなりませんでした。
X-TシリーズはあくまでもX-Tらしくなくてはならないので、手振れ補正ユニットは完全な新型を開発して搭載しています。幸い、その間に『GFX100』という巨大なボディ内手振れ補正を作っていて、そこで得たノウハウや知識がかなりありました。『X-T4』の手振れ補正は3個目のデバイス開発になったのですが、それらの経験を活かし、性能を損なわずに小型化出来る技術的なメドがついた訳です。なので『X-T3』の時に手振れ補正を搭載しなかった理由は、X-Tに見合う手振れ補正がまだ開発出来ていなかった、ということも答えの一つです。『X-T4』は約2.5mm厚みが増したものの、機能やコンセプトを損なわない、X-Tシリーズに相応しい手ぶれ補正が実装出来たと思っています。
また、ニーズという話でいうと、動画撮影者のことを考えて手振れ補正を搭載したとも言えます。昨今ミラーレスの動画機能がプロにも有効に使われるようになっていて、今までシネマ専用カメラしか撮れなかったような映像がミラーレス機でも撮れるようになってきています。その中でも『X-T3』は4K60p 10bit 4:2:2の外部レコーディングと、同10bit 4:2:0のカメラ内レコーディングという機能もあって、本格的なシネマカメラのような動画が撮れる。しかもフィルムシミュレーションを使えば、撮って出しで使える画が撮れるということで、多くのビデオグラファーの間で注目される機種になっていました。T3の場合はOIS搭載レンズを使うか、ジンバルを使うかのいずれかで手振れを抑えながら手持ち撮影を行うのですが、ユーザーからは「もしジンバルを使わないでシンプルに撮影することができたらもっといいよね」という意見もいただいていました。それが実現できるのは何?と考えると、やはりボディ内手振れ補正しかないんですね。そこのニーズを考えると、スチル撮影以上に手振れ補正は必要だなと思いました。