9月の暮れから10月の頭ごろ。
涼しくなってきた関東はいよいよ夏を忘れ、秋本番、そして冬支度にまた一歩進んだように感じます。
友人との会話のきっかけも「今日は涼しいね」から、「今日は暖かいね」と、涼しいことが当たり前となりつつあり、
コンビニでは肉まんとおでんが売られ、そこかしこの金木犀が香りを振り撒いております。
季節が変わり切ってしまうたびに、前シーズンの撮影済みフィルムを現像しなきゃ、と焦燥感にかられます。
などと書いているそばから、バルナックで撮った春先のフィルムを見つけてしまいました。
まあ、来年の春でもいいかな…なんて。
どの季節にも言えることですが、「真っ盛り」と感じられる期間はそう長くありません。
真夏に撮った写真も、現像所に預けてしばし待っていればもう、明け方に秋の匂いを感じる頃になってしまいました。
撮った時間の空気を、その空気のままに鑑賞したい。
「やっぱりカラーも自家現像、するしかないか…」
私がそう言うと、一言。
「デジタルで撮ればいいんじゃない?」
(うーんそういうことじゃ…ないんだよなあ)
Kodak Ektar は素晴らしい。突然の賛辞を贈ってしまうほどに、仕上がりが心地よいものでした。
私より少し先輩にあたる人がいつも、「Ektarはいいぞ」と勧めてくださっていました。
その当時は、いいフィルムだとは分かっていても他にももうちょっと手が出しやすくて、好きなフィルムがあるので
無理して買わなくてもいいかな、と思っていました。
しかし最近になり、せっかくだしいいフィルムで残したい。そう思えるチャンスで試したところ、この通り。
すっかり魅力を再認識してしまいました。
少しだけの安売りでもしてようものならすぐに買ってしまいます。
もちろん家にもまだあるのですが…。
今思えば、レンズとの相性も良かったのかもしれません。
当時はCanon EOS5に最新のレンズを付けていましたが、今使っているのはLeica M2にElmar 35mm F3.5です。
最新レンズとの相性が悪いとは言いません。が、古いレンズとの相性はとても良いのかもしれません。
この夏では、同じロケーション、違うフィルムで撮ることがあったのですが、どのフィルムと比較してもEktarは“すごい”。
カラーネガフィルムばかりを使っての撮影でしたが、どのフィルムも現実とまったく同じようには写りません。
フジのフィルム、lomographyのフィルム、どこのだかわからないフィルム、もちろんEktarも、です。
しかし、肉眼で見た色合いではないにもかかわらず、印刷された写真を見ると撮影した場所の雰囲気が伝わってきました。
頭の中にはその時の記憶が残っているので、正しくは「思い出された」ですが。
このような体験をしたことに対しての明確な理由はまだ見つけられていません。
しかし、もう秋真っ盛りをこのフィルムで撮る心づもりは出来ています。
きっと初雪も、満開の桜も、私の鞄にはにはいっぱいのEktarが詰め込まれているのだろうと、そう思います。