【SIGMA】fpとHELIAR 50mm F3.5 Vintage Line VM
Deconstruction of digital camera
「デジタルカメラの脱構築」
SIGMA fpの掲げたコンセプトには、カテゴリーや用途に縛られることなく、1台のボディを柔軟に使い分けることが出来る。
このような設計思想があります。
撮影者が思い描く様々なセットアップに対して柔軟に答えてくれるカメラ。
そんな懐の深いカメラには様々なレンズをつけて撮影してみたくなります。
今回選んだのはVoigtlander HELIAR 50mm F3.5 Vintage Line VMです。
Vintage Lineのシリーズは、最新設計の光学を搭載しながらも、クラシカルで美しいスタイリングを目指しています。
レンズ先端に向けて先細る様なデザインは、一目見ただけで印象に残る事でしょう。
クラシカルなレンズをマウントした時はアスペクト比もいつもと違った比率にしたくなります。
21:9に設定していつもよりワイドな目線で撮影していきたいと思います。
当日は少し風が強いものの、春らしい陽光が降り注ぐとても気持ちの良い日でした。
そんな日は、一面が日に照らされている所よりも、一部の花にだけ光がそそいでいるスポットを探して撮影するようにしています。
画面の中にアンダーな部分を入れ込んだ方が、陽に当たった花の鮮やかさが引き立つ気がします。
冒頭のカットでも画面の三分の二をアンダーが占めていて、かつ被写体である花も中心を境に丁度半分がアンダーになっています。
花びらの一枚一枚を立体的に見せるにはどうしても影が必要となるので、丁度よく光が当たっている花を見つけられるかがポイントになってきます。SIGMA fpは少しアンダーに撮った時の諧調表現の良さが特徴のカメラですので、自然と気持ちアンダーな露出設定かつハイライトとシャドゥのバランスを気に留めながらの撮影となります。
21:9のアスペクト比で撮影する時は、3:2の時と比べると被写体の配置や、縦方向への空間の使い方が違ってきます。
上の写真の構図をもし3:2で撮影すると、木の上下になにかオブジェクトがあればよいのですが、全くない場合は少しゆるい、悪く言えば気の抜けた構図になってしまいがちです。ですが、21:9の場合は、横にワイドな分や、上下方向が見えない分「空間を想像させる力」が働き、構図として活きてきます。
今回は、レンズの素の描写性能や色再現性を見るために「JPEG撮って出し」としています。
上の天ヌケの様な写真の場合、空のハイライトや、木の葉のシャドゥ部分を現像処理にてもう少し追い込みたくなるところですが、レンズの素の描写だけでも味わいのあるものとなっています。
「へリアタイプはシンプルで高性能」
3群5枚のシンプル構成ですが、どっしりとした安定の描写を見せてくれます。
グッとくる色再現性とも相まって、様々な被写体相手にカメラを向けたくなります。
へリアタイプの欠点と言えば明るいレンズを作れないこと。確かに開放F3.5は昨今のレンズと比べると暗めな印象を受けますが、光量充分なシチュエーションでは特別気にはならないでしょう。
被写界深度も浅すぎず、ボケの印象も安定しているので、重厚感のある画作りができます。
全体的な印象はアンダーですが、背景に建物の白があるおかげで被写体が同化せずに済んでいます。
背景の白も均一に光が当たってしまうとのっぺりとした印象になりますが、良い割合で木の影が入っいるのでのっぺりとした印象を避けることが出来ました。主要被写体の陰影に注目するのは当然ですが、少し引きだとそれなりに情報量が入ってくる50mmですと背景の陰影にも気を配る必要があります。
石塔側面の影に注目した一枚です。ヌケの水面がアンダーなため、石塔のハイライト部が目立っています。
ヌケにもハイライトの部分が多かった場合、石塔のハイライト部と溶け合ってしまうため、立体感が損なわれます。
アンダーが得意なfpだからこそ、画面内のハイライトとアンダーの構成に気を配ることによって立体的な画面を作れます。
Deconstruction of digital camera
「デジタルカメラの脱構築」
撮影者のスタイルによって様々な使い分けができるSIGMA fp。
今回はそのほんの一例にすぎません。
今後さらに様々なマウントのレンズを試してみたり。
SIGMA fpのもう一つの特徴である「コンパクトなシネマカメラ」の要素も追及していきたいと思います。