『鳶(トビ)』を意味する『Milvus』
『木葉梟(コノハズク)』を意味する『Otus』
各社がオートフォーカスの速さと正確さを競う時代に生まれた重量・採算度外視のマニュアルフォーカスレンズたち。
鳥類の眼の如く鋭い描写性能を目指し生まれたレンズ群を自称ツァイス信者がご紹介。
全15本を3回に分けてレビューいたしますのでお気軽にご覧ください。
vol.1はこちら
ボディは『Canon EOS-1D X MarkII』
写真は例の如くJPEG撮って出しとなっています。
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Milvus 21/2.8
21mmって何を撮る画角?
vol.1で直面した広角の壁にまたしてもぶつかった筆者、今回も迷いに迷いました。
結果的に空を撮ることにしたわけですがいかがでしょうか。
通りがかる人々をシルエットにする手法ですがもう少しだけ使わせてください。
開放での周辺減光はかなり強烈ですが、
減光具合でしか現れることのない空の青さの濃淡が物語性を高めてくれています。
一見弱点のように見える要素も使い方次第で強みに変わるのです。
最短撮影距離が22cmであることもお忘れなく。
広角マクロ、筆者の頭にはなぜか苔しか浮かびませんでしたが勿論使い方は人それぞれ。
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Otus 28/1.4
スナップ撮影のイメージがある28mmでネイチャー撮影、穏やかなボケと葉や水の質感描写が非常にお気に入り。
一枚目のように開放から安定した描写を得ることができますが、F2~4で解像力と立体感を引き立たせることも可能です。
周辺減光や逆光時のフレア・ゴーストも開放での撮影についてもほとんど目立つことはなく、
限りなく完璧に近い28mmであると感じました。
今回は手持ちでの使用となりましたが、是非とも三脚に据えてじっくりと味わっていただきたい一本です。
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Milvus 50/1.4
試しに彼岸花を撮ったところで本レンズのテーマは「植物をアンダーで」に決まりました。
しっとりとした描写と生々しい色再現、立体感も申し分なくvol.2までの10本で最も気に入ったレンズです。
開放からシャープかつ程よい軟らかさ、質感描写にも優れ機会があれば物撮りに使ってみたいと思います。
カールツァイスの50mmといえば『プラナー』が代表的ですが本レンズは『ディスタゴン』設計を採用しています。
歪曲収差と周辺が流れることを抑えることができる設計と、贅沢な8群10枚のレンズ構成は開放から文句なし。
今後も使い続けていきたい一本。
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Otus 85/1.4
ぎりぎりまでアンダー寄りにして撮影した一枚目は、
シャドー部分のトーンの豊かさと奥行きを感じるボケによって成り立っています。
倒木を撮っても彼岸花を撮っても中判と見間違うような上品さと懐の深さを発揮、5Dsや5DsRといった高画素機でも試してみたくなる情報量の豊富さに驚かされました。
これなら1.2kgという重さも納得、この一本で全てを撮影したいと思わせる逸品です。
それもそのはず本レンズは「Apo Planar」、アポクロマート設計のプラナーなのです。
初めて名前を覚えた音楽家がベートーヴェンであるように、初めて名前を覚えたレンズ設計者がパウル・ルドルフである筆者にとってはまさに夢のようなレンズ。
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Milvus 135/2
Milvus・Otusシリーズ最長焦点距離である135mm
ヤシカコンタックスマウントの『Sonnar T* 135mm F2.8』を使用したことのある筆者ですが、
使い道が分からず河川敷でひたすら亀を撮影していた記憶があります。
景色に溶け込む気配をイメージして撮影した3枚
近づくことのできない被写体をアポクロマートレンズが明確に正確に写し出しています。
ファインダー上でのピントの山も掴みやすく、非常に頼りになる一本です。
※本レンズの撮影は都内の動物園で行いました。
現在多くの動物園で人数制限・事前予約といった感染予防対策が講じられています。
訪れる際は各施設のルールを順守し、撮影を行ってください。
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vol.2はいかがでしたでしょうか。
思い描いていたイメージのその先へレンズが連れていってくれた感のある今回
vol.3が最終回となりますが試すことが楽しみなレンズたちばかり。
夜風と虫の鳴き声が心地よい今日この頃、残る5本と向き合っていきます。
vol.3でまたお会いしましょう。