これはSONY α7RⅢを軽量性だとかAFだとかを無視して古いレンズの母艦機として運用している筆者の日記です。
母艦機とは本来燃料や航空機などを輸送する船のことを指す言葉ですが、カメラボディに対してこの言葉を使う場合は「レンズを使うためのボディ」という少々ややこしい意味を持ちます。
フランジバックの問題でレフ機ではアダプターがなく楽しめなかったあのレンズもこのレンズも、ミラーレスならすべて楽しめるというわけです。
大昔の聞いたことがないレンズから一度は耳にしたことがあるレンズまで、α7RⅢに付けて楽しんでいきたいと思います。
今回使用したPlanarは通称「帝王」とも呼ばれる間違いのない一本です。
AE、MMという前後期や生産国の違い、581,582初期コート等のバリエーションが存在します。
AEはAutoExposure、MMはMultiModeの略語で、後に付く文字がGならGermay(ドイツ生産)、JならJapan(日本生産)を意味します。
MMは、Contax 159MMから新たに追加されたP(プログラムオート)モードとS(シャッター優先)モード、従来のM(マニュアル)モードとA(絞り優先)モードに対応したレンズとして発売されました。
既存のMモードとAモードに対応していたレンズはMM発売後にAEと呼称され、現在に至るという訳です。
さて、この159MMから搭載されたプログラムモードの仕組みが非常に面白く…と続けたいところですが、話の本筋から逸れてしまうのでまた今度にしましょう。
過去にF1.4を手にする機会がありましたが、色の濃さが肌に合わず少し薄めに色が出るF1.7のプラナーを手元に残しているのみでした。
しかしながら、数年ぶりにファインダーを覗くと、これが何故か非常に魅力的に見えてきます。
色ノリもさるところながら、美しいボケ味やピントの立ち方等はまさに帝王と呼ぶにふさわしい一本です。
今回はそんなContax Planar 50mm F1.4とお届けします。
ピント面のシャープネスは非常に高く、現代レンズのそれにも劣らぬほどです。
ボケは非常にスムーズで四隅もうるさくならず、口径食も比較的抑えられている印象があります。
開放とF8で撮り比べ。
開放でハイライトの滲みを伴いながらボケていく所が非常に好みです。F1.7にはない特徴の1つです。
F8での葉脈の立体感はレンズの解像力もさることながら、ボディ側が高画素機ということでより一層解像感が際立ちます。
どれだけ褒め称えられていても結局は50年近く前のレンズ。
フリンジはくっきり出ますし滲みも多い、周辺部は減光します。
しかし、それが良い。それが良いのです。
収差とはレンズ設計者が光学と向き合った歴史であり、当時最先端、現代でも通用するレンズを見ていると胸が熱くなります。
学生の時は多摩に下宿をとっていたため毎年高幡不動へ行っていましたが、人混みを嫌い行くのは雨の日だけでした。
紫陽花を見に来るのに雨が降っていないのは初めてかもしれないな、と思いながら裏山をいったりきたり。
湿度感を伴った艶のある描写はまさに梅雨らしい一枚になってくれました。
今回は帝王と名高いContax Planar 50mm F1.4 AEとお送りしました。
現代レンズにも負けない描写力やT*コーティングがもたらす色乗りの良さを楽しめる一本です。
見かけた際は是非お手に取ってお試しください。