
【Leica】A Piece of PREMIUM COLLECTION -minilux-
MapCameraで取り扱う中古品の中で、流通数や生産数が少ない希少品や限定モデルなどに与えられる名称、「PREMIUM COLLECTION」。
本シリーズでは、A Piece of PREMIUM COLLECTIONと称し、そんな製品たちを一つずつ紹介いたします。
第二弾の今回は、コンパクトフィルムカメラ、Leica miniluxにスポットライトを当てます。
数多くのライバル機種が登場していた1990年代、miniluxはどのような製品だったのでしょうか。
1.高級コンパクトカメラ
フィルムカメラ最盛の時代がいつか。フィルム消費量から鑑みたとき、そのピークは2000年ごろとなります。
当時、代替の写真撮影手段が無い中で、フィルム消費が多かったのは、直接的に写真撮影人口が増え続けていたからということになります。その理由は、1980年代から徐々にカメラの機能は電子化され、それまで多くの作業をマニュアルで行っていた写真撮影が、誰でも簡単に写真撮影ができるようになっていったことが大きいと思います。
フィルムカメラはその爆発的な需要に対し、さながら古生代のカンブリア爆発のような生態的ニッチを埋めるかの如く、様々な形態のものが発売されました。
高級コンパクトフィルムカメラというジャンルは、こういった事情の中で産声を上げました。
その高級コンパクトカメラというものの始まりがどこにあるのか、と尋ねると様々な議論を呼びそうなので、ここでは一旦1984年発売の「CONTAX T」を起点として考えたいと思います。
当時、筐体にプラスチック素材などを使用した安価な価格帯のフィルムカメラが多く登場していた中、写真を撮る道具としての上質さに着目され、発売されたのがCONTAX Tでした。
ボディ筐体にはアルミニウムをはじめとした金属が採用され、描写においても妥協なく設計されたCONTAX Tは、プロの写真家などから実用性が評価され、多くのメーカーが追従するように競合するラインアップを展開していきました。
その後、CONTAX T2 (1990年)、Konica HEXAR(1992年)、CONTAX TVS(1993年)、Nikon 35Ti (1993年)など相次いで高級路線のコンパクトフィルムカメラが発売され、1996年発売のMinolta TC-1や、RICOH GR1、2001年発売のCONTAX T3やRICOH GR1Vなどを以って、成熟を迎えたと考えられます。
いまだ人気の衰えないMinolta TC-1(画像左)とCONTAX T3(画像右)
コンパクトカメラという言葉自体には広い意味が含まれておりますが、慣用的にはレンズ一体型で可搬性に優れたカメラを差すことが多いです。
何を隠そうLeicaの祖たるバルナックや、それに続くM型さえも、当時の市場から見ればコンパクトですし、いまもそういった見方ができます。
しかし、コンパクトフィルムカメラと言ってCONTAXやRICOHの名前がすぐに上がることは多くとも、Leica!と即答されることがあまり多くないのも事実です。
それでは、Leicaの高級コンパクトフィルムカメラたるminiluxとは、どういったカメラだったのでしょうか?
2.Leicaのコンパクトカメラ
1970年代以降、日本メーカーの製品競合が激化し、そんな中Leicaが送り出した一眼レフシリーズのRシステムの販売は低迷。2000年台前半ごろまで、Leicaにとって苦しい時期が続きました。
そんな苦難の只中にある1995年に発売したカメラこそ、「minilux」と「minilux zoom」でした。
Leicaはこれ以前にも、「Leica AF-C1」や「Leica Mini Zoom」といったコンパクト機は発売されていましたが、外装にチタンを採用した「ハイエンド機」としての位置づけは、本機がLeica 初といえるでしょう。
以後、コンパクト機は2000年以降もC1、C2、C3、C11、CM、CM ZOOMなどが発売され、その流れは2005年ごろまで続きます。
minilux には、ズマリット 40mm F2.4 を、minilux zoomはバリオ・エルマー 35-70mm F3.5-6.5が搭載されています。
miniluxに搭載された40mmという焦点距離は、ンパクトフィルムカメラの草分け的存在であるRollei 35を想起する方も多いかもしれません。ライバルにあたるCONTAX T2(38mm)やNikon 35Ti(35mm)と比較的近い部類にあたりますが、単焦点レンズ付きのコンパクトカメラでは28mmなどが多い中ではやや標準寄りになっています。
そして、ズマリットというレンズの名称は、1954年に発売された「ズマリット M50mm F1.5」に端を発します。もともとはズミルックスに先駆けたハイスピードレンズの名称だったのが、2007年にはMマウント向けのラインアップとしてF2.5のズマリットシリーズ、そして後継はさらにF2.4に改められることとなりますが、このminiluxは現代のズマリットとしてM型に先駆けてカメラに搭載されています。
コンパクト機で40mmという焦点距離はやや使い勝手が悪いのでは?と思われるかもしれませんが、この搭載されたズマリット 40mm F2.4というレンズが絶妙で、前述したように、28mmなどにはないようなボケや、そこから発生する立体感が非常に魅力的な一台になっています。
大きすぎず、小さすぎず。小ぢんまりとしたチタン外装に輝く赤いLeicaのバッジ。そして据えられたズマリット 40mmから繰り出される、コンパクトらしからぬ美しい描写。
一度手にしてしまうと、なんだかこれしかないような魅力を感じさせます。
もし、人と違うコンパクトカメラを探していて、眼前にminiluxがあったなら、ぜひ一度手に取ってみることをおすすめします。
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