
そのデビューは記憶に新しく、忘れもしない2025年2月24日。「SIGMA BF」が発表されました。
SIGMAのミラーレスカメラと言えば「SIGMA fp」および「SIGMA fp L」の前モデル2台。“fp”のモデル名は強弱記号の「Fortissimo」と「Pianissimo」を由来とし、まさにアマチュアからプロフェッショナルな撮影まで実現する拡張性を備えたボディとして相応しいネーミングでした。そこで気になるのは“BF”の由来。公式にこれと発表されたわけではなく、由来も複数あるとの話でしたが中でも鮮烈だったのは「beautiful foolishness」日本語では「美しさの愚かさ」とも訳せる言葉でした。いい得て妙。過剰なまでに削ぎ落されたカメラ機能と、その洗練されたボディおよびシステムを表すならこの言葉が驚くほどしっくりきます。
さて、4月の発売後ほどなくしてブラックのSIGMA BFを手にする機会に恵まれてから、およそ半年の歳月が経過しました。
結論から言ってしまえば「大変いいカメラ」です。機能が削ぎ落されたとは言えども、ある側面から見ればこれ以上ないほどに。
先住カメラたちも多い我が家においては当初「美しさの愚かさ」が発する存在感は鮮明で、どこか浮いているような様子も、しかし馴染んでいるような様子も見せた防湿庫。この6か月の間にほぼ毎日触れ、多くの場所に連れ出すにつれて傷も付き生活に溶け込んだ「SIGMA BF」を半年レビューを兼ねてキャンプに持っていきました。
ご覧ください。

目的地は岐阜県高山市、乗鞍岳を一望する高原に位置するキャンプ場。
残念ながら今シーズンでの営業を終えてしまったためもう行くことは叶いませんが、存在の記録を残すためにも滑り込みで予約。
ボディは「SIGMA BF」レンズは「Contemporary 45mm F2.8 DG」で。
写りも大きさもちょうどいい、定番の標準レンズです。

「SIGMA BF」刺さる人にはこれ以上なく刺さるカメラ
「fp」と比較して「BF」は拡張性の少ないカメラです。
ホットシューはおろかストラップ取り付け部分も片側にしかなく、純正では併売されるリストストラップの使用のみが想定されるほど。
ソフト面で言えばSDカードスロットも無く、その削り出しボディゆえに無線通信機能も備えていません。
つまりなにが言えるかというと、ストラップもアクセサリーもメモリーカードも通信手段も全て「悩まなくていい」という事です。
シンプルなカメラが欲しかった私にとってこの特性は大変ありがたく、充電さえされていればいつでもどこへでも何も考えずに持っていけます。
今回も煩わしい用意は何もありません、容量の残りチェックとバッテリーの充電だけ済ませれば本体を車に持ち込んで準備万端。

多彩な「カラーモード」、実は無限種類
対象が何であろうと、またどんな色温度であろうと上手く立ち回れるSIGMAのカラーモードには助けられっぱなし。
特に気に入って使用しているのは「RICH」「CARM」「POWDER BLUE」「SUNSHINE RED」の4種類。
全てのカラーモードにおいて自分好みの微調整が効くため、必ずしもカメラに提示された色だけで我慢する必要もありません。
純粋にカラーの適用を弱くする、強くするだけでも雰囲気は大きく変わるため実質的には指針を示されたうえで自由度は無限であると言えます。





シャッターを押させてくれる「シネマスコープ」
さらに情報を整理してさくっと画にしたいときはアスペクト比を「21:9」にしてシネマスコープの出番。
料理をしながら、火の番をしながらでもいい構図が簡単に見つかります。
キャンプ中なんていうのはじつは近くに写したくないゴミや散らかりエリアがあったりするので助かっています。私だけかもしれませんが…



RAWで撮影しておけばアスペクト比はあとから編集で変更もできるうえ、カラーモードも自在に変更ができます。
つまり、とにかく“撮っておく”ことがBFにおいては正義。そのモチベーションを確保するうえでもこういった気軽な画作りは魅力です。
シネマスコープで撮ったはいいもののあとから全貌も見たくなった、なんてことはいつものこと。
まずはシャッターを押すハードルを下げる。そのためにこれほど理にかなったカメラはありません。
「電子シャッター」であることを忘れるほどの好感触
メカシャッターを搭載しないことを購入当初はやや不安に感じていましたが、いとも簡単に杞憂に終わりました。
フリッカーもローリングシャッター歪みもかなり軽減されており、特に後者に関しては撮っていてほとんど気にならないほど。

高速道路で猛進中、助手席の妻に撮ってもらった写真です。もちろん法定速度。
電子シャッターと聞くと躊躇われるシチュエーションのはずなのに気が付けばもう気にすることもなくなってしまいました。
じつは電子シャッターの気持ち悪さを払しょくする要因として「シャッター音」も一役買っていると思います。
言葉にはしづらいですがレンズシャッターのようなキレのいい軽やかなシャッターを感じられるのでメカで切っている気さえするのです。
意外と持ちやすいボディは縦構図にハマる

以外にもホールド感は良好で、なおかつレンズも含めて660gほどとそんなに重くないので縦構図が捗ります。
とにかくこの見た目ですからホールド感に関しては不安に感じられていた方も多いと思いますが、一度も不満に感じたことはなく、
また角が痛い、というご意見もあったものの個人的には気にならない程度。
私よりも手が小さい妻も色違いでBFを買いましたがお互いにこの手の不満は無さそうです。




以前『【Leica】深堀り!オールドレンズの愉しみ方-縦構図のすゝめ-』というブログ内でも縦構図の良さについて語りました。
「SIGMA Contemporary 45mm F2.8 DG」はいい意味でボケに風合いがあり、縦構図でこれがまた生きるのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
文中でも少し出しましたが色違いで妻と2台体制の我が家。お互いにこれといった不満もなく、しいて言えば望遠レンズが欲しいなと思うくらいでしょうか。
当初、というか世論でも若干懐疑的だった部分として「電子シャッター」「ストラップ」「通信不可」などがありましたがどれも全く気にするほどではないです。あくまで私たちにとっては。
電子シャッターの性能については上記の通り超優秀、ストラップはスタイルがハマれば問題なし、通信に関しても短いタイプCケーブルを持っていればいつでもノーストレスです。
それよりもカラーモードやその見た目、そしてレンズの良い味わいなどいい部分が大々的に感じられるため到底悪い評価はつけられません。
いまなお受注生産のシルバーカラーに関しては品切れになることも多いですが中古も出回るようになってきたのでぜひこの機会にお求めください。
今回は触れなかったもののアダプターを介してマニュアルレンズを使う事にも以前より柔軟に対応されているので、オールドレンズデビューにももってこいの1台。
ではまた1年レビューでお会いしましょう。
▼私の妻は下のセットで購入しました。たまに35mmが羨ましくなります。よくボケるので。▼



