SONY α99II インタビュー【Part 2】
ミラーレス一眼のハイエンドモデルである“α7RII”については、有効約4240万画素・35mmフルサイズ裏面照射型CMOSセンサーを採用し、高画素化にまつわる1画素あたりの集光効率の低下から起こりがちな「高感度画質」の低下をあらゆる方法で防ぎ、実際の高感度撮影時の画質も4240万画素のカメラで撮影したものとは思えないような美しさであったと感動した覚えがあります。 とはいえ、4240万画素という画素数は2017年を迎えた現時点でも“高画素”と呼べる高精細画質です。当然データの容量などからも連写性能にはある程度目をつぶれるようなもので…。実際に“α7RII”では最高5コマ/秒と連写と、今時点でも他社高精細画質モデルの“Nikon D810 (5コマ/秒)”、“PENTAX K-1(4.4コマ/秒)”、“Canon EOS 5Ds/5DsR(5コマ/秒)”と比 較しても同等以上の納得がいくスペックです。(※いずれの機種も最高画質時の最高連写速度による) それなのに…またやってしまいましたね。ソニーさんは(笑) これをある種の“技術的ブレイクスルー”と言うのでしょうが、今までの常識では実現不可能なカメラの性能を達成できた理由について、解説頂けますでしょうか。
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ありがとうございます。手前味噌ながら、かなり抜きん出た性能のカメラとして“α99II”をご提供できたのではないかと思います。高精細な画質と、AF/AE追従の高速連写性能について、それぞれの観点からご説明したいと思います。 まず画質性能ですが、4240万画素のイメージセンサーは、基本的には α7RIIと同じイメージセンサー、「裏面照射型」を採用することで4240万画素という高精細画質と、最高ISO感度102400を両立しています。 |
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「トランスルーセント・ミラーテクノロジー」仕様のカメラでは、常にミラーがイメージセンサー前に存在するため、感度面では若干不利になるというような海外での検証記事を見た記憶があります。この辺りも踏まえて、“α7RII”との画質差についてはいかがでしょうか。 |
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「トランスルーセント・ミラーテクノロジー」という仕組みについては、理論上不利になる可能性もありますが、透過ミラーの材質や厚み、構造に十分な検討を重ねていますし、“α7RII”とセンサー自体は同じものの、その後ろにある電気回路を最適に設計し直しているため、多少ですが画質は改善しているくらいです。 もちろん Aマウント機にはEマウントレンズの装着はできませんので、同じ条件での比較はできませんが、今のご質問の点については全くご心配頂く必要はなく、安心してお使い頂けると思います。 |
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続いては“α99II”に搭載されているAFシステムについてです。ご存じの通り、通常の「光学ファインダー」と「ミラー」を搭載した一眼レフカメラでは、精度の高いAF、そして高速連写時にAFを追従させる上で、難しいポイントが存在します。
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連写時のAF追従については基本的にAFの測距自体はミラーボックス下部にある「AF (専用)センサー」が行っているため、露光中にはAF測距ができない点ですね。 高速連写を行うにはミラーの駆動をかなりの高速で繰り返し行う必要があるものの、AFに必要な位相差の情報はミラーが下りているときにしか取得できない。つまりミラーを早く動かすパワーを持たせながら、短い時間で正確な位相差情報を得るためにミラーを制動させ振動を瞬時に抑える、そして連写が早ければ早いほどAFの演算スピードもより素早く行う必要があり…。
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そういうことです。逆に言えば、そういった機構を持たせつつも、フルサイズセンサー搭載のカメラで12コマ/秒以上の高速連写を実現している現在の一眼レフの技術は、非常に成熟したものであるとも言えます。しかし同時に、そうした性能を与えられている機種は一部のプロカメラマン、または愛好家の方へ向けた、本当に限られた機種しかないということも事実です。それだけ難しいということの現れだと思いますし、もう少し抑えた価格帯では実現が難しいのだと推測しています。 |
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自分で話しながら途方もない技術と性能のせめぎ合いを感じますね…。(心痛) さらに難しいのは光路上ハーフミラーを透過した光を下部にある「AFセンサー」に導いて位相差を検知しているため、実際に像面となるイメージセンサーとの機構上の距離の一致や、測距情報の平面精度にも不安な要素があるということですね。 さらには光学ファインダーの視野率が100%を達成しているモデルが増えてきたため、撮像素子とAFセンサーの光路上一致だけでなく、ファインダー像とイメージセンサーの像面のズレも許されない、かなり組立精度が求められる構造になっている、と。
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はい。一眼レフには、そうした課題が構造的な宿命としてありました。その中で連写時のAF追従性という技術的課題に対し、大きなアドバンテージのある「トランスルーセント・ミラーテクノロジー」を選択した従来のAマウント機の特性に加えて、今回の“α99 II”では「専用位相差AFセンサー」と「像面位相差AFセンサー」を連携させた「ハイブリッド位相差検出AFシステム」を採用しております。 従来機種の“α99”でも「デュアルAFシステム」を採用し、「像面位相差AFセンサー」が「専用位相差AFセンサー」を補助するようなアルゴリズムで動作していましたが、使用できるモードも、対応レンズにおける「AF-D」というコンティニュアスAF(AF-C)を発展させたフォーカスモード時のみに限定されておりました。 一方“α99 II”の「ハイブリッド位相差検出AFシステム」は、対応レンズ使用時も全てのフォーカスモードで「像面位相差AFセンサー」と「専用位相差AFセンサー」を使用することが できます。専用位相差と像面位相差が重なっているエリアでは、被写体やシーンに応じてカメラ が瞬時に判断して一番最適なAFシステムを使用して測距を行いますし、像面位相差AFセンサーしかカバーしていないエリア、主に撮像画面の周辺部においても像面位相差AFセンサーのみで測距することが出来るようにしてあります。 結果、像面位相差AFセンサーを含めたAF測距点のエリアはご覧の通り、非常に広く使えるようになっています。
このAFカバーエリアの広さは、フルサイズセンサー搭載の一眼カメラとしてはトップレベルだと思いますし、光学ファインダー式一眼レフカメラには中々実現できないことの1つだと思います。
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最近の“Nikon D5”“EOS-1D Mark II”などといったAF最高峰と呼べるフルサイズ一眼レフカメラのAFカバーエリアも左右方向に少し広がりを持たせた程度でした。ミラーボックス下部にあるAFセンサーに縦方向の拡がりを持たせることは、AFセンサー側に光を取り込むためのサブミラーの大型化を意味し、ハーフミラー、さらにはミラーボックス自体の肥大化はさけられないため、何らかの技術革新がないと厳しいということなのでしょう。
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では、それぞれのデバイスを見ていきましょう。
AF測距点は“α99 II”用に最適化し専用位相差AFの測距点と重ねて、隙間を埋めるようにレイアウトし、密度感を高めています。 79点専用位相差AFセンサーについては、デバイスとしては“α77II”から採用しており、「トランスルーセント・ミラーテクノロジー」との併用です。ただし、中央は低輝度-4EVに対応しました。
この2つを組み合わせることで得られるメリットが2つあります。 面方向の情報量のアップと、時間軸情報量のアップの2つです。これは「像面位相差センサー」と「トランスルーセントミラー・テクノロジー」を使用しない、通常の一眼レフカメラではどちらも得られないものです。 「像面位相差AFセンサー」は、時間軸情報は「トランスルーセント・ミラー」に一歩譲りますが、面方向の密度では優れています。また、撮像面の光束を使用し測距するため、精度面で優れていることが特長です。 一方「専用位相差AFセンサー」は、ミラー駆動のない「トランスルーセント・ミラー」で使用することで、レリーズ動作に影響を受けることなく常時測距が可能なため、圧倒的な時間軸方向での情報密度を実現します。また、大デフォーカス時の測距能力も高いことが特長です。 これら2つを並列で使用しシーンによって測距情報を活かす配分をダイナミックに変えながら測距しています。 具体的には、例えば、時間軸における移動量の多い被写体(スポーツや動きものなど)には、現時点では専用位相差AFセンサーが適していますし、一方僅かに動く人物撮影にお ける瞳へのフォーカス精度や、風景における遠景の撮影など、面方向の密度、つまり分解能が必要な被写体には像面位相差AFセンサーが優れています。 撮影シーンごとにどちらのAFシステムをどの程度の配分で使用するのが適切か、開発時様々な撮影シーンを検証し、カメラが判断できるようにアルゴリズムとして搭載しています。
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