Steadicam Merlin II(ステディカム マーリン2)の紹介
瞬間を切り取る写真とは違い、記録をし続ける動画撮影においては非常に気になる部分です。
もちろん三脚の搭載して固定ショットにしてしまうなども一つの手ですし、
基本的には画面内はむやみに動かさないというのが仕上がりにおいて重要だとも言われています。
それでも趣味でスナップ撮影をこなしてきた写真派の我々としては、
動画も手持ちでいかに撮るか…というところは捨て切れない部分ではないでしょうか。
今回は手持ちの動画撮影に非常に効果を発揮し、
映像表現としてのクォリティも格段に高めてくれる“ステディカム”について紹介していきます。
TIFFENの“Steadicam(ステディカム)”製品
デジタル一眼やカムコーダーでの使用に最適な「Merlin II(マーリン2)」
手持ちのグリップの上に3軸可動式の“ジンバル”構造を持ち、その上にカメラをマウント。
マウントしたカメラと、弓なりになっている“キャリパー”と呼ばれる部分につけるウェイトで
“やじろべえ”の原理でつり合いを取る構造となります。
実際にはつり合いを取るとカメラとウェイトが水平に傾くので、カメラ側が軽くなるようにウェイトの量と、
弓なりになった“キャリパー”部分の開脚度を調整するとともに、
下部のウェイトが真下に下りてくるまでの時間“ドロップタイム”を適宜追い込んでいきます。
構造やセッティングについては触れて頂かないと難しい部分ではありますが、写真を交えてできる限り解説していきます。
まずはカメラを「Merlin II(以下マーリン)」に乗せるため、こちらの“ダブテイルプレート”をカメラ底部に装着します。
プレートに無数の穴が開いていますが、どこに取り付けてもよいわけではないです。
まず重要なのが基準位置となる“H”の穴がカメラの左右/前後の重心位置にくるように取り付けを行うこと。
上の写真のように平たいものにカメラを乗せ、ウェイトを重ねたものの上で転がしてみると見つかります。
前後/左右それぞれつり合いが取れる位置に目見当をつけてみましょう。
※実際には横に広い本体形状でレンズマウント部が左に寄っている
デジタル一眼レフカメラではジャストの位置は難しいので、調整が容易な前後にズラした形で取り付けます。
プレートへの取り付けが終わったら、ひとまずマーリンに取り付けてみます。
その際、マーリン本体側にあるカメラの前後/左右の位置を微調整するネジが、中央辺りにきていることを確認しましょう。
(端に寄っていると調整幅が狭くなるのでご注意を)
写真に写しているのは前後を調整するネジです。後部にある左右の調整ネジも確認してみましょう。
こちらが取り付けた状態。写真では目盛りが見えるようにズラしていますが、
プレートの前後取り付け位置は目盛りの“0”が示す位置にすると、
今後のセッティング後の位置が目盛りで把握できます。
(EOS6D + EF35mm F2の組み合わせ時は5と1/4目盛り…等)
次回が楽になるので何かしらの形でメモを残しておくのをおすすめします。
このままだとカメラの重みで頭が倒れてしまうので、ウェイトを取り付けていきます。
付属のウェイトには3つの種類があります。
左からスタートウェイト、ミドルウェイト、エンドウェイト
(重さはスタート/エンドウェイトがミドルウェイトの半分)
※調整をする際はミドルウェイトを“1”、スタート/エンドウェイトを“0.5”として0.5刻みで付け外しをしていきましょう。
今回のカメラとレンズの組み合わせでは、手始めにキャリパーの中央部にエンドウェイトを1つ。
下部にミドルウェイトを2つ、エンドウェイトを1つ付けてみます。
ウェイトを付けただけの状態がこちら。ここからさらにカメラの位置の微調整をして水平出しをしていきます。
※大きく前に倒れていますので、微調整の前にカメラの取り付け位置を後ろに大きくズラしています。
左右の傾きを後部のネジで調整し…
前後の傾きを側面のネジで調整した状態がこちら。ここで静止時のバランスが整いました。
ここで一息つきたいところですが、ここからが実際の撮影での使い勝手ので非常に重要な“ドロップタイム”の調整となります。
撮影時にはカメラを腕と身体を使って動かし、さらに風も受けていきますので、動いている際のバランスをとる必要があります。
感覚的にウェイトが重いほど風の影響がなくなり安定しそうですよね。
ところがウェイトが重過ぎると振り子のように慣性が働きますので、一旦バランスを崩すと傾きが収まりません。
さらに根本的に軽いほうが撮影が楽ですよね。
まずは現在のバランスが適正かどうか、キャリパーを真横に傾けた状態から真下に落ちてくるまでの時間を計ってみます。
今の状態で1秒くらいでした。1秒だと下部にバランスが寄りすぎている状態ですね。
以下の順序でドロップタイムを長くするため調整をしていきます。
1.ウェイトを軽くする(下部のウェイトを交換し0.5軽くしました)
2.これ以上ウェイトを軽くできないところまで追い込んだので、キャリパーの開脚度を狭くしてみる。(軽くするのと同じ効果)
3.ジンバル部分にあるガイドリングを回し、緩めてみる。
緩める→重心が高くなる(ドロップタイムが長くなる)
締める→重心が低くなる(ドロップタイムが短くなる)
※上記の調整をした際はカメラが傾くので根気強く水平を再調整します。
ドロップタイムが2秒前後になるよう調整するとはじめは扱い易いようです。
慣れてきたら好みに応じて変えていくとよいでしょう。
※機種毎のセッティングデータが>>こちらに公開されています。
ご紹介をした「Merlin II」を使用して撮影をしたサンプルMOVIEを公開していますのでご覧ください。
父娘で過ごす休日を撮影してみましたがいかがでしょうか?
私も修行中の身でしたので、国内総代理店の銀一(株)さんにご協力頂き撮影を行いました。
通常の手持ち、固定撮影では得られない独特の浮遊感がご覧頂けると思います。
“Steadicam”というと業務用途向けのステディカム機材からiphone、GO Proなどに一般ユーザーに向けたものまで幅広いラインナップを誇るブランドであり、窓口となっている銀一のステディカムカスタマーサポートでは専門のオペレーター技術を学び認定を得た専門の技師のサポートも受けられ安心して使用できる体制を整えてくれています。
また、他社製のステディカム製品には折りたたみの機構がなく収納時/運搬時には分解が必要なものも多いですが、
マーリンのキャリパーの中央部には開脚度を調整するダイヤル付近に収納時に折りたたみをする際のロック機構があります。
可搬性に優れているのは「Merlin II」の優位な点です。
↓商品はこちらからご覧ください。
・Steadicam Merlin II
↓セッティングに必須のブラケットです。
・Steadicam Merlin用ドッキングブラケット