1本に多彩な表現。『Leica SL2-S』で撮る『P.Angenieux アンジェニュー 35mm F2.5 Type R1』
2023年01月24日
今回は『P.Angenieux』のレトロフォーカスタイプ『P.Angenieux アンジェニュー 35mm F2.5 Type R1』をご紹介いたします。レンズ構成は5群6枚。「レトロフォーカス」の「レトロ」を「懐古」と解釈してしまった筆者。焦点を後ろへ移動させた構成で「レトロ = 後ろ」「フォーカス = 焦点」という意味を知ったのは後のことです。レンズに刻まれた「MADE IN FRANCE」銘に所有物でもないのに、なにか誇らしさを感じずにはいられない一本。開放絞りと柔らかな写りと絞ったときの鮮やかな色とコントラストと解像感のギャップに虜になりました。ぜひご覧ください。
順光など条件次第では開放絞りでもとても良い画を見せてくれます。開放絞りには柔らかい描写をするレンズだとばかり思っていたので、現代のレンズにも匹敵する色ノリやコントラストの高さに何より驚きました。これだけピント面はシャープでもそのすぐ後ろのボケは滲んでいるのでモニターで画を見ながら不思議なレンズだなと思いました。
陽が射している環境ではフレアゴーストが出てきて画も全体的に薄いベールがかかったような写りになります。あえてこのローコントラストを楽しむというのもありかなと思います。
F4に絞るとシャキッとした画が出てきます。個人的には一番美味しい絞り値だと思います。
レンズ特有の開放絞りの柔らかさと窓越しで柔らかくなった光の組み合わせ。光量が乏しい環境でも光を取り込むように写すのであればやはりソフトな描写に変わるようです。
やはり順光では濃いめの写りをします。それにしても陰影の付き方がとても色っぽいです。バキッとコントラストを強めにしただけでは出来ない繊細な表現です。
ピントの立ち方から立体感、ガラスの反射、被写体の輪郭や画面下の滲みボケなど好きが詰まった1枚です。
実はこのレンズ、フォーカスを動かすとフレアゴーストも一緒に移動します。その動きが面白かったので好きな位置にゴーストを配置してみました。さらに言うとF2.5よりもさらに絞りリングを開放側に回せました。だからといって露出まで変わることはなかったのですが(厳密に言えば変わっているかもしれない)出てくるフレアゴーストに違いが出たと思います。
F8ではむしろコントラストが落ちるという『P.Angenieux アンジェニュー 35mm F2.5 Type R1』でしたが今回のシチュエーションではそのクセを感じることはなく、F8に絞ると開放絞りの時とはまるで違う木々の枝の先まで非常に鮮鋭感のある1枚になりました。明るい時間帯に使うとそういうクセがあるのかもしれません。使いこなそうと思ったらお付き合いが長くなりそうなレンズです。
スチールとして初めてのレトロフォーカス『P.Angenieux アンジェニュー 35mm F2.5 Type R1』。状態の良い個体に恵まれたからかもしれませんが1日の撮影を通して非常に満足できました。開放付近での味わいのある描写とフレアゴーストの遊び。光を変えることで出てくるハイコントラストな画、絞ることで輪郭がシャープに。撮影者が求める、あるいはこれから撮ってみたくなる表現がすべて入っています。1本に多彩な表現、写真だけでなく映像表現でも使ってみたくなりました。縁があればまた出会いたいレンズです、ぜひ出会えるチャンスをお見逃しなく。