
走る明かりを両眼に納めて。『Leica SL2-S』で撮る『アポマクロエルマリート R100mm F2.8』
2023年01月27日
「近づく」という行為は、その言葉自体に直接的な動きがあるように感じます。行動として近くに寄ってみたり、ある目標に対して心情的な成長や前進を感じたりなど。ポジティブな印象が強く表れている言葉です。カメラにおいて「近づく」と言えば思い浮かぶのがマクロ撮影。最短距離から接写した写真には肉眼では気がつかなかった細部の造形があらわとなり、その美しさに感嘆の声をあげた方も多いことでしょう。今回使用した『アポマクロエルマリート R100mm F2.8』は最短距離0.45mとマクロの名称がついているレンズとしては現代では控え目ですが、その写りは極上。光に対する反応が柔らかにして艶やかでした。勿論、接写だけではなく中望遠レンズとしても美的な描写を見せてくれます。その写り、是非ご覧ください。
鈍色の雲が空を覆い尽くす様な一日でした。少しでも太陽の明かりを探して貨物船が集まる場所へ。巨大な船、コンテナ、重機が揃うこの景色は筆者のお気に入りです。大きな被写体を遠くから撮る時、中望遠レンズの画角はとても納まりが良く、爽快感すら覚えました。
コンクリートの建造物と自然の海。対比が面白かったので思わずシャッターを切りました。折り重なっている雲の切間から僅かばかりの明かりが差し込み、全体的にふんわりと優しく写ります。『Leica アポマクロエルマリート R100mm F2.8』は絞ってもどこまでも自然で柔らかな印象。それが撮影者の心情と重なった時、目の前の被写体全てが素晴らしいものに見えてくる様でした。
別日の夕暮れ時、冬の澄んだ綺麗な光をとらえました。劇的な光の下に照らされた本坪鈴のザラザラとした表面からは、これまで流れてきた時間の歩みがみて取れます。
季節柄、日中の明かりは足が早く気がつけば日の落ちる時間となります。ここは何てことのない雑木林なのですが、逆光の中でシルエットとなった木々がとても印象的に写りました。
街中をスナップ撮影する時には、店先のディスプレイに目が奪われます。コスメ、ファッション、アート。様々な物が考え抜かれたデザインのもと、見られることを意識して配置されています。決して無造作に置かれることのない、ひとつひとつ計算され、整然とした佇まいの状態で設置されている、と考えると物の見かたや考えかたが少し変わってくるようにも思えます。

『Leica SL2-S』と『アポマクロエルマリート R100mm F2.8』。同じLeica同士ながらその組み合わせはどことなく異端、そして唯一無二に見えます。『アポマクロエルマリート R100mm F2.8』が一眼レフ用レンズということもあり、「どのような写りになるのだろう」と撮影前から楽しみにしていました。実際使用してみてその描写力には舌を巻き、撮った写真をその場でじっくりと見つめ返すこともしばしばありました。マクロ域の撮影を楽しむのはもちろん、市街をスナップ撮影するのにも非常に使い勝手が良く感じます。また、100mmという焦点距離は注視している被写体を切り撮るのに最適な画角だと認識しました。そして何よりも「Leicaの一眼レフ用レンズを使っている」という特別感を噛み締めずにはいられません。この写りを是非体感していただきたいと思います。