クラシカルなデザインがカッコいい『Nikon Z f』に似合うレンズを追い求めている筆者。今回はその美しい外観デザインから貴婦人とも呼ばれる『Leica ズミルックス M50mm F1.4 初期型』と合わせてみました。今から約65年前に登場したオールドレンズとの組み合わせではどのような写りを見せてくれるのでしょうか?
早咲きの桜が見頃を迎えたものの撮影に出かけた日は生憎の空模様。満開のオオカンザクラの背景は灰色の空でした。
コントラストの差が少ない上に風に揺れていることでピント合わせに若干苦労しましたが、ピントリングに設けられたローレットの指かかりがとても良く、世代もメーカーも大きく異なる組み合わせでしたが、とても快適な操作感が得られました。
絞り:F1.4 / シャッタースピード:1/200秒 / ISO:100
使用機材:Nikon Z f + Leica ズミルックス M50mm F1.4 初期型 シルバー +SHOTEN マウントアダプター ライカMレンズ/ニコンZボディ用 ヘリコイド付き LM-NZ M EX
『Leica ズミルックス M50mm F1.4 初期型』と言えば、ハイライト部分が滲んでベールを纏ったかのような写りになることで有名なレンズです。
雨宿りのために逃げ込んだいつもの博物館。定番の吹き抜けホール上部のステンドガラスにカメラを向けると、光が強く差し込んでいる部分が滲み早速その片鱗を見せてくれました。
絞り:F1.4 / シャッタースピード:1/320秒 / ISO:100
使用機材:Nikon Z f + Leica ズミルックス M50mm F1.4 初期型 シルバー +SHOTEN マウントアダプター ライカMレンズ/ニコンZボディ用 ヘリコイド付き LM-NZ M EX
見慣れた景色も大きなボケと滲みのおかげで幻想的な世界になりました。
絞り:F1.4 / シャッタースピード:1/125秒 / ISO:100
使用機材:Nikon Z f + Leica ズミルックス M50mm F1.4 初期型 シルバー +SHOTEN マウントアダプター ライカMレンズ/ニコンZボディ用 ヘリコイド付き LM-NZ M EX
暗いホールに置かれたライトスタンド。ハイライト部分の白トビを抑えるべく、露出をアンダー気味に設定しても、暗部の細部までしっかり描いてくれます。『Z f』のセンサーは多くの光と色をより正確に豊かな階調で捉えてくれるので、このようなシーンでもトーンを繊細に表現してくれました。
絞り:F2.8 / シャッタースピード:1/20秒 / ISO:100
使用機材:Nikon Z f + Leica ズミルックス M50mm F1.4 初期型 シルバー +SHOTEN マウントアダプター ライカMレンズ/ニコンZボディ用 ヘリコイド付き LM-NZ M EX
レンズ自体の最短撮影距離は1mですが、ヘリコイド機能付きのアダプターを使用したおかげで約30cmぐらいまで寄ることができました。最新の「ズミルックスM50mm F1.4 ASPH. 11728」 の最短撮影距離が45cmですからそれより寄れたことになります。2箇所のリングでピントを合わせる必要はありますが、近接できるメリットは大きいです。
絞り:F1.4 / シャッタースピード:1/13秒 / ISO:100
使用機材:Nikon Z f + Leica ズミルックス M50mm F1.4 初期型 シルバー +SHOTEN マウントアダプター ライカMレンズ/ニコンZボディ用 ヘリコイド付き LM-NZ M EX
強力なボディ内手ブレ補正でオールドレンズでも暗い室内撮影を快適にこなせるのはとても助かります。
絞り:F5.6 / シャッタースピード:1/15秒 / ISO:100
使用機材:Nikon Z f + Leica ズミルックス M50mm F1.4 初期型 シルバー +SHOTEN マウントアダプター ライカMレンズ/ニコンZボディ用 ヘリコイド付き LM-NZ M EX
少し絞ると幻想的な写りは一変。被写体の質感までしっかり伝えるシャープな写りを見せてくれました。
絞り:F5.6 / シャッタースピード:1/20秒 / ISO:100
使用機材:Nikon Z f + Leica ズミルックス M50mm F1.4 初期型 シルバー +SHOTEN マウントアダプター ライカMレンズ/ニコンZボディ用 ヘリコイド付き LM-NZ M EX
雨が上がったようなので外での撮影を再開します。雨に濡れ艶感を増した牡丹も瑞々しく描いてくれました。
絞り:F4 / シャッタースピード:1/800秒 / ISO:100
使用機材:Nikon Z f + Leica ズミルックス M50mm F1.4 初期型 シルバー +SHOTEN マウントアダプター ライカMレンズ/ニコンZボディ用 ヘリコイド付き LM-NZ M EX
絞り:F5.6 / シャッタースピード:1/100秒 / ISO:100
使用機材:Nikon Z f + Leica ズミルックス M50mm F1.4 初期型 シルバー +SHOTEN マウントアダプター ライカMレンズ/ニコンZボディ用 ヘリコイド付き LM-NZ M EX
クラシカルなデザインのカメラを持つと懐かしい風景を求めてしまう筆者は、静かな参道が残る柴又へ。
山門の細部まで捉えようと、F5.6まで絞ってカメラを構えていると運良く通りかかかった着物姿の方が古き良き風景を演出してくれました。しかし仕上がった写真は想像以上にシャープで現代的な写りに。もう少し開放気味に撮影しておけばより雰囲気が出たと思われるだけに悔しさが残ります。
絞り:F1.4 / シャッタースピード:1/400秒 / ISO:100
使用機材:Nikon Z f + Leica ズミルックス M50mm F1.4 初期型 シルバー +SHOTEN マウントアダプター ライカMレンズ/ニコンZボディ用 ヘリコイド付き LM-NZ M EX
お煎餅屋さんの店頭に置かれた地球瓶も懐かしい風景です。
絞り:F1.4 / シャッタースピード:1/320秒 / ISO:100
使用機材:Nikon Z f + Leica ズミルックス M50mm F1.4 初期型 シルバー +SHOTEN マウントアダプター ライカMレンズ/ニコンZボディ用 ヘリコイド付き LM-NZ M EX
大正末期から昭和初期にかけて増改築されたという邸宅のレトロガラスのゆらぎも綺麗に捉えました。1つ前の地球瓶のカットといい透明感ある被写体の質感描写が実に上手なカメラです。
絞り:F8 / シャッタースピード:1/50秒 / ISO:100
使用機材:Nikon Z f + Leica ズミルックス M50mm F1.4 初期型 シルバー +SHOTEN マウントアダプター ライカMレンズ/ニコンZボディ用 ヘリコイド付き LM-NZ M EX
最新レンズと比べコントラストはやや抑え目。全体的にしっとりとした仕上がりになる一方で細い松の葉までしっかり描いているのですから驚きます。ボケの出方で雰囲気が変わるレンズは多数あるものの、絞っても画が硬くなり過ぎないのはオールドレンズならではです。
絞り:F1.4 / シャッタースピード:1/80秒 / ISO:100
使用機材:Nikon Z f + Leica ズミルックス M50mm F1.4 初期型 シルバー +SHOTEN マウントアダプター ライカMレンズ/ニコンZボディ用 ヘリコイド付き LM-NZ M EX
立派なお庭に加え、玄関脇の応接室を見ていると、かなり裕福な方の家だったことが想像されます。
後で調べてみるとカメラの部品製造をしていた工場の創業者の自宅だったことが分かりました。カメラ好きとしては、カメラで成功した方の功績が見れて嬉しくなりました。
絞り:F1.4 / シャッタースピード:1/50秒 / ISO:100
使用機材:Nikon Z f + Leica ズミルックス M50mm F1.4 初期型 シルバー +SHOTEN マウントアダプター ライカMレンズ/ニコンZボディ用 ヘリコイド付き LM-NZ M EX
レトロガラス越しに差し込む光のハイライトがいい感じのベールとなりました。白昼夢という言葉がピッタリな画です。お抹茶を飲んだら目が覚めてしまいそうですが。
コンパクトなレンジファインダー用レンズですがF1.4の大口径に加え、しっかりとした金属鏡筒のおかげで一眼スタイルのカメラにも良く似合います。『Z f』の独立したダイヤル操作系と扱いやすいマニュアルレンズとの組み合わせはまさに「フィルムマニュアルカメラ」を使っていた当時の感覚で撮影できました。書き出された画像にはフィルム独特の粒子感は無いものの、最新レンズとは違った優しい写りに何処となくなつかしさも感じました。
これまで何本かオールドレンズを試してきましたが、その中でも『Leica ズミルックス M50mm F1.4 初期型』 は、画質の精細感とオールドレンズテイストのバランスが1番良く感じました。昨今の人気が上昇していると聞きましたが、それも納得です。唯一の弱点である近接撮影もヘリコイド付きアダプターがカバーしてくれるので心配ありません。ソフトフィルターとも違ったほんのりとした柔らかさが病みつきになります。
階調に余裕を持つ『Z f』のフルサイズ2450万画素のセンサーとの相性も良かったのでしょう。機会があればぜひお試して頂きたい組み合わせです。