
SONY-E BODY × Leica-M LENS
ボディ:SONY α7II
マウントアダプター:Voigtlander VM-E Close Focus Adapter
レンズ:MS OPTICAL SONNETAR 50mm/F1.1 MC
『大口径』
日頃単焦点レンズを使って、ボケ味を堪能するのが好きな方なら、 何とも心が躍る魅力的なフレーズではなかろうか。 戦後間もない昭和28年に帝国光学が世に出した「Zunow 5cm/f1.1」や、LEICAの歴代の「Noctilux 50mm/f1.2~0.95」、夜想曲・Nocturneの名を冠したNikon「Ai Noct Nikkor 58mm/f1.2」など、一度は手にしたい至高の銘玉が名を連ねている。だが一方で、これらのレンズは非常に高価で、おいそれと楽しめるものでは無いのもまた事実だ。
そんな大口径単焦点の中で、ぜひお試しいただきたいのが、今回のMS-OPTICAL社製の「Sonnetar 50mm/f1.1」というレンズ。こちらはレンズのモデファイやオリジナル光学製品の設計・販売を行っていることで著名な宮﨑氏が、一つ一つ組み上げた逸品で、まず驚くべきはその値段。開放でf1.1の明るさを持ちながら、なんと10万円代で入手することが可能だ。
今回は宮﨑氏の熟達した技術が産んだ文字通りの結晶と、人気のフルサイズセンサー搭載ミラーレス機、ソニー「α7II」の組み合わせで試写を行うこととした。

もちろん描写性能も折り紙つきで、“これぞゾナータイプ”という放射状の独特なボケ味で撮影者を楽しませてくれる。
レンズの産みの親である宮﨑氏は、ゾナータイプのレンズ構成を考案した、ルードヴィッヒ・ベルテレを敬愛し、レンジファインダー用レンズがガウス全盛の今日においてもこのゾナータイプに強いこだわりを持ち続けている。このレンズはその愛情が注がれた一本だ。
開放F1.1の明るさとα7IIの持つフルサイズセンサーがもたらす、特徴ある大きなボケは見るものを唸らせる。

開放にて撮影した1枚、被写界深度が非常に浅く、ピンを合わせることも困難な大口径レンズだが、α7IIはフォーカスピーキングが非常に使い易い為、MF操作に慣れない方でも使いやすい。アダプター撮影が快適なものであるためには、この恩恵は非常に大きい。

こちらはカメラの設定をモノクロにして臨んだ一枚。F1.8まで絞って臨んだのだが、描写性の変化に驚いてしまった。
柔らかい印象があった開放とは打って変わり、コントラストも高くなかなかにシャープな絵を見せてくれた。こうした描写の変化もまた、このレンズの大きな特性といえるだろう。

こちらは再び開放で、 全体的にフレアを帯びたその柔らかさに強く惹きつけられる。収差は顕著にみられるものの、こうしたレトロな被写体との相性は非常に良いのではないだろうか。

ゾナータイプがガウスタイプと比較して影を潜めてしまった要因の一つに、後群のレンズがマウント側にせり出しており、ミラーと干渉してしまうことが挙げられるように思う。その点心配のないミラーレス機においても、一眼レフ機を基とする発展を遂げたために、設計としてはゾナータイプのレンズは決して多くない。
マウントアダプターを介せば、性格の異なるゾナー型レンズが多く使えることは個人的にも非常にうれしいメリットだ。

少々意地の悪い使い方をした一枚、開放で強い光源がある際には、ご覧のとおり、大きなフレアが発生する。このフレアをいかに美しく、趣深く出すかを考えるのもまた楽しい。このレンズの可能性の幅は非常に大きいことを実感させられた。

同じ解放でも、写真によってボケ量が微妙に異なることにお気づきだろうか。実はこの「SONNETAR 50mm/f1.4」には、コマ収差調整機構なる機能がついており、後群をわずかにずらすことでボケの調節が可能なのだ。距離計が連動する本来のMマウントボディにおいては、ピンの位置に微量の誤差が生じるため、扱いには慣れが必要だが、ミラーレス機であればその課題は解消される。まさにマウントアダプターで使うことの明確なメリットといえるだろう。

改めて述べるが、このレンズは大手メーカーが作り、国内で広く流通しているものでは無い。光学機器を愛し、独自に研究を重ねた個人が創り上げた、いわば職人芸の賜物だ。
こうした製品が、国内のミラーレスカメラをけん引する大手の最新鋭ボディを組み合わせて使うことが出来るのだから感動も一入である。
宮﨑氏がベルテレを尊敬し、生まれたこの「SONNETAR」。日本のものづくりの力の結晶は、1本でいくつもの顔を覗かせる大変趣深いレンズであった。アダプターを用いることで、ボディ側にも選択肢の幅が生まれている昨今、あなたの一番の組み合わせを探すのもまた、面白いのかもしれない。

Photo By MAP CAMERA Staff
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