異なるメーカーのボディとレンズの組み合わせから起きる「化学反応」を愉しむマウントアダプター。 『X-Pro3』内蔵のフィルムシミュレーション「ACROS」にすっかり魅せられた筆者が送る、モノクロームスナップ。今回は珍しいレンズをご紹介します。 コンパクトフィルムカメラの中でも、名機の呼び声高い「RICOH GR」シリーズ。そのカメラに搭載されていたレンズを取り出し、レンズ交換式カメラでもその描写を愉しめるように再構築された「RICOH GR(L) 28mm F2.8」は非常に好評を博しました。その成功を受け、よりワイドな画角とシャープネスの高い描写に進化して登場したのが、『RICOH GR (L) 21mm F3.5』です。本レンズはさらに輪をかけて人気を呼び、後に「RICOH GR21」という高級コンパクトカメラに逆輸入のような形で採用されました。この端正で固い描写は、コントラストの高いACROSの画作りと相性が良いだろうと言う予見があり、今回貴重な撮影機会に恵まれたため、この組み合わせで撮影した写真を掲載することが出来ました。是非、ご覧ください。
密やかな光。モノクロームの世界において、ハッキリとした明暗は作品を作品たらしめる大切なエレメントです。自分の画角に、それをどうやって当てはめるのか。パズルゲームのような愉しさを感じる瞬間でもあります。ゆえに、「カチッ」と音を立てて全てがハマった時の達成感と快感は、筆舌に尽くしがたいものがあります。
東京で生活するようになって、大きなビルを見上げることも日を追うごとに少なくなりました。しかし、底知れぬ圧迫感や目を覆いたくなるような美しさは視界に入らずともどこか感じてしまうものです。フレームに収めることで、自分の手に負える物なんだと足搔いているのかもしれません。
ファインダーを覗いたまま待つ時間が、だんだんと心地よくなってきている自分がいます。その間はフレーミングの事はもちろんですが、その他に目に飛び込んでくる本当に沢山の要素や事柄にアンテナを張っています。案外、日常こそが二度とは起きない事の積み重ねで構築された、掛け替えのない時間なんだと思います。
大通りから始まった筆者の歩き撮りは、だんだんと路地へ、小道へと逸れていきます。アンダーグラウンド、とまでは言いませんがこんな場所が好きなのです。奥まった場所を照らす薄弱の光、その尻尾をつかめた時。その写真に命が宿ることを祈りながら歩いていきます。
光と影をどのくらいの割合で画面に注ぎ込むのか。経験の浅い私には、絶対のバランスはまだわかりません。ですが、肌で「納得」出来るタイミングを大切にしながら構図を考えています。足を止めてじっくりと狙う時も、瞬間の稲光を抱きとめる時も、心地よく納得出来る写真を目指しています。納得は、全てに優先するのですから。
マウントアダプターのコンテンツ制作に関わるようになってから、実写の味はもちろんの事、初めて手の中に収めた時のタッチフィーリングを大事にするようになりました。今回の組み合わせは操作感、サイズ感、そして描写、この3点が本当に気持ち良くハマり、終始楽しく撮影を行うことが出来ました。レンジファインダーを覗きながら写真の中身を考えていると、自分とカメラが一体化したような感覚になる時があります。無意識に露出が合い、フォーカスが合い、それを掬い取っていく。そんな不思議な体験を呼び起こすほどに強烈なマッチングを果たした『FUJIFILM X-Pro3』×『RICOH GR (L) 21mm F3.5』。次に同様の体験が出来るのは、いつになるのでしょうか。
Photo by MAP CAMERA Staff