視線の先に光が灯る。『FUJIFILM X-T5』で撮る『Canon EF100mm F2.8Lマクロ IS USM』
2022年12月18日
近距離を撮りたいか、遠距離を撮りたいか。無数に存在する機材の中からどのレンズを選ぶかの一つの指標となります。そして、カメラとレンズの組み合わせには数多くのバリエーションがあり撮影する場面や描写の好みに合わせるとなると千差万別。その様はまるで、ひとつとて同じ形を映しえない万華鏡の中を覗きこんでいるかのようにも見えます。自らが手に取り選んだ機材で撮った写真が想像通り、もしくはそれ以上の出来栄えだった、という経験は誰しもが一度は経験したことがあるでしょう。
今回の撮影にあたって使用した機材は発売開始してからその性能に賞賛が鳴りやまない『FUJIFILM X-T5』と繊細で美しい描写力を持つ『Canon EF100mm F2.8Lマクロ IS USM』。これらをマウントアダプター『Fringer FR-FX2』で組み合わせました。焦点距離は35mm判換算で約150mm。望遠域に達しながらも近距離でのマクロ撮影も可能という堂々たるその佇まいは、さながら自分専用の武器のよう。手に落ちる質量は確かな写りを期待させてくれます。
FUJIFILMのカメラを使うのなら自然や歴史的に奥行きを感じるものを撮りたいと思い、高台にある神社へ向かいました。冬の陽射しは足が速く、暖かくもありそれでいて繊細。刻々と変わる光の中で風情ある姿をとらえることができました。
多彩なフィルムシミュレーションを選べるのもFUJIFILMのカメラの楽しいところ。同じ場所でも使うカラープロファイルによって印象が随分と異なってきます。ここでは「ACROS」にして手水舎を撮りました。光と影だけの世界で厳粛な空間がより強調されます。ですが、どことなく柔らかな描写が張りつめそうな空気を緩和してくれました。
木漏れ日を浴びている植物の葉脈にぐっと迫ります。若干アンダーにすることで反射している箇所との差が生まれ、質感、色彩ともに好みの写りになりました。元より評判の高い『Canon EF100mm F2.8Lマクロ IS USM』でフィルムシミュレーションを当てる。マクロ域の普段は目でとらえるのが難しい細部を好みの色で仕上げる、というのも楽しみ方のひとつです。
大切に育てられたであろう目の前の大根は、引き抜く前からその姿を現します。そこから感じるのは逞しい生命力。すべての食物が命を宿していて、人はそれらを体内に取り入れ糧とします。「いただきます」という言葉がある通り、感謝の気持ちは常に疎かにしてはいけません。深まりゆく冬の食卓を彩る根菜類もこうして見ると力強さを見て取れます。
電子マウントアダプターを使う際に気になるのはAFの合焦がスムーズに合うかどうか。悠然とたゆたう自然の川の流れですが、『Fringer FR-FX2』はAFも迷わずストレスを感じることなく撮影に集中できます。川の透明度と反射する光が合わさりとても綺麗でした。
花はマクロレンズと相性の良い被写体のひとつです。よくよく見てみると花弁のすじも均一ではなかったり、中心部には星形の花弁が並んでいたりと実に多様。マクロの世界を覗き見れば、その都度新たな発見が見えてくるようです。風で揺れるコスモスが一瞬止まった瞬間を逃すことなくとらえてくれました。
『FUJIFILM X-T5』と『Canon EF100mm F2.8Lマクロ IS USM』の組み合わせは、唯一無二の姿で何とも個性的。一見するとボディバランスが良くないように見えますが、実際に手にしてみると程よいバランス感が手に伝わり使いやすい印象でした。35mm判換算で約150mmの焦点距離はレンズ越しに見える被写体が強調され、「何を撮りたいのか」と写真を撮る上で本質的なことを思い起こさせてくれます。それでいてマクロ域まで写真が撮れるのですから表現方法の幅も広がります。ボディとレンズを結びつける『Fringer FR-FX2』AFも反応が良く想像以上に使い勝手は良好でした。これらはマウントアダプターが紡ぐ予想外の嬉しさと楽しさ。是非とも体験していただきたいと思います。