【マップカメラ情報】【マップカメラ写真週間】~1971年 キヤノン F-1誕生 ~
5年の歳月と数十台分の開発費に匹敵する膨大な投資、労力、技術の全てを結集して、
1971年3月キヤノン初となる本格プロ用一眼レフカメラ「F-1」が発売されました。
頑丈なボディに直線で構成された形。手に持った時の重さや操作性も加味された
デザインは、当時を振り返っても他のカメラとは一味違う存在感だったに違いありません。
F-1には「向こう10年間は基本構造は変えない」と名言が付随されていました。
それはカメラとしての基本性能、交換レンズ・アクセサリーとの互換性を踏まえた
トータルバランスの高さが物語っています。
そして、その完成度の高さから世界中のカメラマンに愛用され、
同時に、どんな過酷な条件でも確実に動作すると言う信頼性をも獲得してゆきます。
1972年には8月に開催されたミュンヘンオリンピックに合わせ、モータードライブを搭載し
秒間9コマの連写を可能にした「F-1高速モータードライブカメラ」をプロ・報道カメラマン向けに発売。
さらに4年後の1976年7月にはモントリオールオリンピック、1980年2月にはレイクプラシッド冬季オリンピックの
公式35mm一眼レフカメラに認定されています。
その他にも数々の世界的ビックイベント、極地調査、エベレスト登頂などにも抜擢されました。
そして1976年9月に、数十箇所を変更したF-1Nを発売するものの、基本的な作りは一切変更せずに
1981年までの10年間製造を行いました。
F-1
ではF-1がどの様にして開発され、プロ達の厳しい問いに答えていったのかをご紹介します。
◆耐久性
悪条件下での酷使に耐え抜く信頼性を目標に開発されたF-1が、人力で10万回の作動耐久テストを
行ったのは有名な話。
環境耐久テストではマイナス30度~プラス60度、湿気95%、熱衝撃という急激な温度変化の
テストまでも行われていました。
◆アクセサリーとの完全一本化
F-1は開発当時からアクセサリーとの完全一本化を目指して開発されていました。
工作精度も常に10/1000ミリ以内を維持する事で、多種にわたるアクセサリーが、
どんな場面でも正確に装着でき、スムーズに作動するかも考えられています。
またアクセサリーの種類は、レンズからフィルターを全て含めると約180種類にもなると言われています。
◆FDレンズ
FDレンズは、今後来るであろう露出制御システムを見越して開発されたレンズマウント。
他社に追随されていたシェアを奪還した事でも有名。
35mmカメラ初となる非球面レンズを採用したFD55mm F1.2ALをF-1と共に発売。
当時はコーティング技術が全盛で「S.C(スペクトラコーティング)」
「S.S.C.(スーパースペクトラコーティング)」の違いで値段が数万円も変わる事があり、
多くのカメラマンは「S.S.C.」を持つ事がステータスと言われていました。
FD55mm F1.2 S.S.C.
~1981年 キヤノン NewF-1誕生 ~
NewF-1の開発がはじまった1970年代は、まさにカメラの電子化への移行期にあたります。
その流れの中、「マニュアル式にこだわりつつ、電子式も使えるプロ機に」という
コンセプトのもと、F-1をはるかに凌ぐ新システムが誕生します。
最大の特徴として挙げられるのが、高速側は機械式、低速側は電子式という各利点を
生かしたハイブリッドシャッター。
それは単にAEに対応するのではなく、F-1で培われた耐久性・信頼性、中級機種であったAシリーズの
電子工学・実装技術を継承し、ユーザーからの意見・要望を反映させた進化の形でした。
実現された高度なAEシステムは、F-1から継承された交換式ファインダーによるもの。
撮影者が各ファインダーを選び組み合わせることで、用途に応じた仕様になるという特徴を持っています。
これにより、「マニュアル、絞り優先AE」の3つの撮影モードが使用可能になりました。
さらにモータードライブを装着することで、「絞り優先AE、シャッター優先AE」の両モードを設定することも可能です。
その他、シンクロ接点がペンタ部の上に移動してアクセサリーシューと一体化し、同調速度が高速化。
また、表面に浸積塗装を施したことでシャッター幕(チタン幕)の柔軟性が増し、幕速も速くなっています。
操作面ではF-1を踏襲し、旧ユーザーが違和感なく使えるよう配慮もなされました。
NewF-1
1984年には、「NewF-1ハイスピードモータードライブカメラ」がプロや報道カメラマン向けの限定販売品で登場。
最高速のHモードで、36枚撮りフィルムをわずか2.57秒で撮り終わってしまう、秒間14コマの性能を備えた世界最速のカメラでした。
同年7月にはロサンゼルスオリンピックの公式記録カメラにも認定されるなど、F-1同様にその完成度の高さは世界中のプロカメラマンから高い評価を受けました。
以降、NewF-1は1996年まで生産され、キヤノンのマニュアルカメラの最高峰として多くの
プロや愛好家を魅了し続けました。
◆F-1からNewF-1への主な変更点
・ASA(ISO)感度の変更:F-1は25~2000。F-1Nは25~3200。NewF-1は6~6400に拡大。
・ストロボシンクロ:F-1は1/60だったが、NewF-1では1/90に高速化。
・シンクロ接点の移動:F-1は巻上げクランク部だったが、NewF-1ではペンタ部に標準搭載。
・モータードライブの取り付け:F-1では底蓋を取り外す必要があったが、NewF-1では連結カバーを外すだけで装着。
・測光感度分布:F-1は切り替え不可。NewF-1は3種類に切り替え可能。
◆NewFDマウント
1979年にRマウント~FDマウントで採用されていたスピゴット式が無くなりバヨネット式を
新たに採用したマウント。
FDレンズコーティングで採用されていたS.S.C.(スーパースペクトラコーティング)はNewFDは
全て採用されているので表記はありません。
NewFDになってから「L」レンズ(蛍石)を搭載しているレンズが出始めました。
New FD50mm F1.2L
歴代F-1モデル
・1971年 F-1
・1972年 F-1高速モータードライブカメラ
・1976年 F-1モントリオールオリンピック記念モデル
・1976年 F-1N
・1978年 F-1Nオリーブドラブ
・1980年 F-1Nレイクプラシッド五輪記念モデル
・1981年 NewF-1
・1984年 NewF-1ロサンゼルス五輪記念モデル
・NewF-1キヤノン創業50周年記念モデル
F-1モントリオールオリンピック記念モデル
F-1Nオリーブドラブ
F-1Nレイクプラシッド五輪記念モデル
NewF-1ロサンゼルス五輪記念モデル